第2話

夫が私に最初にくれたプレゼントは

指輪だった。シルバーの指輪。


遡ること8年前


最初にそれをくれるものだから

「まだ気が早いんじゃないの?」

なんて言ってしまった。

彼はすかさず

「この指輪、大人っぽい君に似合うと思って、一目惚れして買ったんだ!」

この人は話を聞いているのだろうか。

しかし、

私はこういう所に惚れ込んだのである。

そして、惚れ込んだ以上彼を支えて

あげなければいけないのである。


私は夫のくれた指輪を見る。

なんどもなんども、

嬉しくて見ていたこの指輪。

夫はあの時から結婚する事を分かっていたのだろうか。指輪はキッチンの蛍光灯の光を浴びながら鈍く光る。

あの時から外した事の無い指輪。

「風呂、先に入るぞ」

夫の声で呼び覚まされた私は曖昧な返事で

応える。

夫は廊下の奥の方へと消えていった。

携帯が置きっぱなしだ。

私はキッチンから出て、

夫の携帯の前にゆっくりと移動する。

まるで、この空間に私しかいないようだ。

まぁ、当たり前なのだけれど。

恐る恐る夫の携帯に手を伸ばす......

「トゥルルトゥルルトゥ、トゥルルトゥルルトゥ」いきなりなった着信音に

私は手をテーブルにぶつける。

暫くして鳴り止んだ携帯を見つめる。

一体誰からの着信だったのか気になる。

絶対にやめた方がいいのに、

わかってるのに、もう遅いんだ。

私は夫の携帯を手に取る。

ゆりか?全く知らない名前が表示される。

パスワードは知っている、

私達の結婚記念日だ。

パスワードを入力し、既読がつかないように携帯をいじる。

メッセージを見た瞬間、思わず息が止まる。

私は携帯を閉じる、少し、眠ろうかな。

これが全て夢である事を願って。

おやすみ。

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