4 異世界にクラスのみんなが馴染んできた

「父上、無事帰還してございます」

「おおー、我が息子よ、よくやった、さあゆっくり休みがよい」


ここは王殿。  

戦いに勝ったことを報告するために、王子とともにここに来ている。まだヒトミは気を失ったままだというのに、まったくのんきなもんだ。 


「ただ父上、今回の勝利、私だけではとても勝てませんでした。」

「そうなのか?」


「はい、異世界から来たものたちの力添えがあってこその勝利です」

「うむ」


「特にアキラ、こっちへ来い」

「こいつがか? たしかステータスがなかった、であったな」


俺は王子に呼ばれて王の前に出る

「たしかにステータスなし、です。 ただ、こいつのおかげで我軍は勝利することができました」

「そうなのか、、、」


「はい、数的には不利な立場であったものの、敵の魔術師に対して的確な属性を当てることで、勝つことができました。」

「ほんとうなのか? おいどう思う」


王様は隣にいたよぼよぼの老人に声をかけた

「もしかしたら過去に書物でみたことのある軍師、のステータスがあるやもしれません。」

「軍師? とな?」


「はい、軍師は戦争において状況を的確に分析し作戦を巡らせ勝利に導くもの、と記憶しております。例の水晶玉では鑑定できません。」


「なるほど、、、分かった。ステータスはゆっくり調べるとして、なにより息子を助けてくれたのは事実なのであろう。 アキラよ今後も頼んだぞ」


「はっ」

俺は、教室でも発したことのないような元気な声で返事をした。王子め、なかなかいいところあるじゃないか。 しかしあの爺さんどこかでみたな。。。まあ王様も、この間まで俺のこと用無しとか言っていたくせにいい気なもんだぜ。


・・・・・・・・・・


その後、俺たちは数々の戦場を経験していく。 タカシをはじめみんなはレベルも上がり、一人で魔族退治に出たりするものもいる。


ヒトミにいたっては、もともと全属性をもつ賢者だったものの、それぞれの属性の魔力が大幅に上がり、文字とおり大賢者の道を歩んでいる。


俺は、というと、相変わらずステータスなし、だ。 よぼよぼの爺さんに軍師かも? とかおだてられたが、結局はスキル鑑定はできず、なしのまま。だが、戦場での場数は多く積んできたつもりだ。


異世界での日々も、慣れたくはなかったが、そこそこ面白いと感じていた頃、タカシが、ふとつぶやいた。

「ねえ、そろそろ元の世界に帰りたくない? 新しいカプモンカードもやりたいしなぁ」


俺とヒトミは目を合わせた。タカシめ、ホームシックってやつにかかったのか。

「そ、う、だな。 いつまでもこっちにいるわけにもいかないしな。な、ヒトミ」

「う、うん。 お母さんも心配していると思うし」


「ただ、どうやれば帰ればいいんだ? ってか帰れるのか? 大賢者さまどうなんだよ」

「わ、私に聞かないでよ」


「それなんだけど、ぼく、ずっと考えてたんだよね、帰り方」

「おう、タカシ、なにかいい案はあったのか?」


「うん、ここに転生させられてきたとき、王様の隣に魔術師がいたの覚えてる?」

「うーん、いたっけ?」


「あ、私覚えてる。 あの白いヒゲの男の人よね? たしか赤い帽子被ってた」

「そう。 僕は彼が僕たちをここに転生させたんじゃないかと思ってるんだよね」


「そうなのか?」

「うん。 みんなのステータス見てて、委員長の賢者とか、アキラのステータスがなし、とか」

「あ〜、あれはショックだったな。。。思い出したくない」


「ああ、ごめん。 まあそのときみんなのステータスが出るたびに王様がその魔術師に耳打ちしてたんだ」

「なるほど」


「話してる内容は聞こえなかったけど、たぶん今回の成果はどうだ、とか話してたんだと思う」

「そういうことか」


「じゃあ、その魔術師を見つけ出して、帰り方を聞き出せば、私たち帰れるかも?」

「うん、分からないけど、少なくとも聞く価値はあると思う」


「ん?ってか待て、それって、あのよぼよぼの爺さんかなぁ 俺、何回かステータスの再鑑定してもったんだけど」


「え? その人かも。 水晶玉使ってた?」

「ああ、使ってた。 だけど何回やっても俺のステータスが出てこないんだよな。」


「ね、アキラ。 そのお爺さん、もう一回お願いできないかな?」

「ん? どういうことだ??」


「アキラがステータスをもう一回確認したい、ってお願いするの。 そうすればそのお爺さん来てくれるでしょう」

「おお、そうか。 おびき寄せるってことだな。 そこで帰り方を聞いてみるか」


「うん、そうしよう。 素直に話してくれるかどうかが分からないけど、とにかくやってみよう」

「わかったタカシ、俺に任せておけ」


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