2 同級生を囮(おとり)にして異世界で戦う

「よし、タカシを呼んできくれ」


タカシとエドワード王子、ヒトミに俺の作戦を伝える

「右を叩く、狙いはテント。そこに指揮官がいると思う。ここを一気に叩く。」


タカシが口をはさむ

「だけど、右には魔法使いがいるんだろう? 」

「あ、水属性だ。やっぱり水に強い魔法って言ったら、タカシ、雷だろうな」 


「ああ、アキラ、水には雷。 それは定番だよ」

「よし、ヒトミ、雷魔法で行こう」


「分かったわ、ただ威力が弱いかも。 あっちは4〜5人はいたわ」

「なるほど、なんとか少人数を相手にしたいな、、」


「あと、ほかにも魔法使いがいるかもしれん。 水属性だけって連れてきてるとは思えん」


こっちには賢者のヒトミがいる。 相性の問題はなんとかなりそうだが、問題は威力。いくら相性が良くても、相手の数が多いとそれはそれで不利だ。


「アキラ、1対1の対戦に持っていけないかな? ほらカプモンカードだってバトルフィールドに置けるカードは一体だけだろう」

「そうか。 おびき出してチートキャラのヒトミと戦わせるのか」


「なによ、チートキャラって」

「ごめんヒトミ、褒め言葉だよ、褒め言葉」


「だとすると、右の手前にある岩場あたりがいいかな。 そこなら向こうも縦に並んで進むしかないからな」

「よし、そうしよう。 問題はどうやって進ませるかだね。 おびき出してるって分かっちゃったら駄目だもんね」


さて、ここで頭を抱える。 ちょっとまとめると

・俺たちの軍勢は約30人

・魔法をなんでも使えるチートキャラもとい、賢者のヒトミが切り札

・向こうは、全体では100人

・右に指揮官と魔法使いで30人、真ん中は10人、左は遅れて来るけど60人


う〜ん、どう考えても不利。なので、作戦は

・指揮官狙い。左の60人が来る前に勝負を決めたい

・とはいえ左も30人はいる。まともにいっったら負ける。しかも魔法使いあり

・指揮官に届くためには右を削りたい

・右の30人と1対1で勝負するため、おびき出す


「そのためには、敵を油断させて叩くしかないか」

「油断させる?」


「ああ、そうだ。 向こうだって水の問題だってあるから勝負は早く決めたいはず。」

「そうだね」


「だから、今右にいる30+真ん中の10だけでも勝てると思わせ、進軍させる」

「なるほど、左の60が来なくても数的には有利だからね」


「そうだ。 向こうだってこっちがボロボロのは知っているから必死になられる前に叩きたいと思うと思うんだ」

「それはそうだけど、問題はどうやって油断させるかだよね。」


エドワード王子が口を挟んできた

「簡単なことだ。 真ん中の部隊を突っ込ませて囮(おとり)にすればいいのさ」


「それはだめだ。 もうみんなをこれ以上怪我はさせたくない」

「しかし、そのくらいしないと向こうは油断せんぞ」

うう、王子の言うのももっともだが、、、それはできない


タカシが俺を見ながら、提案してくる。

「うん、王子の言うとおりだと思う。 僕たちが囮(おとり)になるよ、アキラ」

「おい、タカシ。 それはだめだ。 それじゃなくても怪我が完全にまだ治ってないのに」


「でも、このまま待っていたら、左からこっちの倍の兵士がやってくるよ。 そうなったらどっちにしても勝ち目は薄い」

「しかし、、、」


「アキラ、大丈夫だよ、委員長だってきっと向こうの魔法使いをやっつけてくれる。 ほらカプモンだって、わざと勝てないキャラにぶつけるときもあるでだろう」

「いや、それはカードだから。」


「大丈夫。 僕らだって簡単にはやられないよ。 」

「タカシ、、、」


「私もそれしかないと思う」

「ヒトミ、お前まで・・・」


「じゃあ決まりだな。 そうと決まればささっと配置につけ。ぐずぐずしてると本当に日が暮れてしまうぞ」


王子の一声で、みんなが一斉に配置についた。 ここまで来たら腹をくくるしかない。


「指揮官というのは辛いものなのだよ」

「なに、わかったような口を・・・」


俺は、真ん中の敵に対峙する部隊に戻っていくタカシに声をかける

「ぜったい無理するなよ。 死ぬなよ」

「ああ〜、だいじょうぶ、だいじょうぶ!」


まさか、この間まで教室でみんなで勉強して、カプモンカードで遊んでいた親友に、こんな声をかけるなんて思ってもみなかった。


よし、ぜったい勝つぞ! 俺は心に誓った。

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