カードゲーム好きの小5男子が異世界で軍師になっちゃった!?

青木タンジ

1 クラスまるごと異世界に転移

「ってか、ちっくしょう、全然わかんねえなぁ」


俺の名前はアキラ。 区立テラカド小学校の5年生だ。

ここは異世界。 わけあって、いまその異世界の戦場にいる。


「せめて上から眺められたらなぁ」


俺たち5年2組、20名。全員異世界に転移した。させられて、っているのが正しいかな。で、みんなステータスを確認され、いきなり戦場へ。


「私、わかるかも」

幼馴染でうちのクラスの委員長のヒトミの声だ。彼女は賢者と判定された。 最近、教室でもあまりうまく喋れなかったけど、ここではそんなことは言ってられない。


「ほんとうか?」

「うん。私、賢者の目ってスキルがあるの」


ヒトミが賢者で賢者の目?? うう、語呂合わせに吹き出しそうになるが、からかったときの結果になるのが目に見えているので、堪えた。


「頼む。 敵の右と左、それぞれ何人くらいいるのか知りたい」

「分かった。 やってみる」


「おーい、アキラ。 僕たちはこのまま突進でいいの?」

親友のタカシの声だ。 あいつはのステータスは兵士長。まあ体が大きいから納得だが母ちゃん思いで優しいやつなので務まるか心配だ。


元々この国にいた部隊と合流して、真ん中の敵と向き合っていた。

「突進はまだだ、そのまま待ってろ!」


「なにを言っているんだ、早く進まねば日が暮れてしまうぞ」

敵にも聞こえそうな大声でいらだちながら叫んでいる。 声の主はこの国の王子エドワード、この軍の指揮官だ。 


この戦場での戦いは2回目。 前回はエドワード王子が指揮をとったが、大敗。タカシはじめクラスの大半が怪我をして帰ってきた。聞くところによると彼はなんの戦略もなく、ただみんなを敵に突っ込ませただけ。 それじゃ負けるはな。


「敵の情報もなく、やみくもに突っ込んだって勝てない。 もうみんなを怪我させたくないだ」

「ふん、まったく異世界から転移させたのに、無条件に強いのではなかったのか」


エドワードのイラつく声が聞こえてくる。 そりゃ小説なんかじゃチート能力があるらしいけど、俺たちまだ小学生だぜ? 連れてくる人間、間違ってるだろう。


「だいたい、お前、本当に大丈夫なんだろうな。ステータスなし、の小僧が」

「大丈夫だ。 俺に任せておけ」

とはいったものの。そう、俺のステータスはみんなと違って、というか「なし」だ。 


ヒトミは賢者、タカシは兵士長、ほかのクラスのみんなもなにかしらのステータスがあるのに、俺は「なし」。


「お父様が言うから、渋々連れてきただけなのに。 これでまた負けたらお前ら全員死刑だからな」

「わかっている。 だからこそ俺に任せろ」


まったく、勝手に連れてきて、勝手に戦わせて、お前のせいで負けて、死刑って、どんだけワガママなんだ、お前らは。


ヒトミが顔を上げて俺に声をかけてきた

「アキラ、わかったわ」

「おう。どうだ」


「右の敵は約30、後ろには山。 左はぬかるみになっているからこっちに来るまでに時間がかかりそう。数は倍の60ってところね。 真ん中は横に広がっているだけなので10もないわ。」

「そっか。ありがとう。」


「あと、魔法使いっぽいのが右にいるわ。数人だけど。 その前に大きなテントみたいのがあった。 指揮官はそこかもね」


「そうか。魔法使いはやっかいだな。 何系の魔法を使うんだろうな。王子、何かわかりますか?」


「どうだろうな、奴らが好きそうなのは火属性だが。 賢者はあらゆる属性が使えるが、向こうに賢者がいるとは思えんな」


「なぜです?」

「賢者は転生者からしか生まれない、と聞いたことがある」


「そうなんだ。ヒトミは全属性使えるのか?」

「まだ使いこなせてるかどうかは疑問だけど、一応使えるわ。」


「そうか、何属性の魔法を使う連中なのか、それがわかればな」


ヒトミがさらに口を挟む

「多分だけど、水魔法だと思うわ。」


「おお? そうなのか?」

「何だか水がめみたいなものに一生懸命呪文をかけてた。」


「なるほど。確かにあれだけ兵士がいれば常に水は必要だな」


「王子、こちらの部隊は俺たちをいれて30くらいでしょうか」

「ああ、まあお前らの大半は怪我してるけどな」


まったく誰のせいだよ。 

さて、数的にはこっちが不利。しかも負傷者も多い。早めに決着をつけたい。 となると、指揮官がいそうな右に集中するか。

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