第19話TS物語 ~正彦が幼馴染以外に初めての敗北!?~

 さて、今日も生徒会での仕事が終わって放課後だ。


 帰って早く掃除をしたいところだが、今日はイク男の家に遊びに行く約束がある。

 最近イク男は学校休んでて、会えてなかったから久しぶりに絡んでやらんと寂しがるからなぁ。

 さっさと終わらせて帰って掃除しなきゃ(正彦は誘われると断らないけど、やりたい事が別にあると頭がそれでいっぱい)


 ヒュポ!


 スマホにイク男からメッセージが届く。


『終わった? なんか今日は色々絡まれるから早く来てほしい』


 気の長いあいつが催促してくるのは珍しいな。

 イク男は校門で待ってるみたいだから急いでやるか。


  ーー校門前ーー


 なんだ急いだけど俺の方が先に着いちゃったのかな。

 校門前にはタンクトップにショーパンでボーイッシュなエ◯い女の子しかいない。


 まったく、そうやって健康的に肌を露出すればエ◯くないとでも思ったか?

 ざんねん。

 キチンと君はエ◯いからな。


 イク男を待ちながらしっかりとそのタンクトップ女を横目でしっかりと捉える。


 すると視線に気づいたのか女の方から俺に近づいてくる。

 明らかに俺を凝視しているので視線を逸らす。


(なんだよ。 見られて気分でも害したってのか。 こっちだって突然そんな健康的エ◯見せつけられて感謝してるんだ。 怒られたら素直に謝ろう)


 土下座の覚悟を決めると同時にタンクトップ女は俺に話しかけてくる。


「あ。 やぁ正彦くん。 生徒会終わったんだね」


「……? はい、 まぁ」


 誰だっけ?

 こんなギャル知り合いにいたかな?

 褐色肌に金髪。

 ギャルらしくキワッキワに短いショーパン。

 俺ってタイプの女の子でも幼馴染以外は名前とか顔とか忘れちゃうんだな。


 記憶を探ろうとする俺にギャルは話し続ける。


「とりあえず、 帰ろっか。 ジャンボフランク食べたいし」


 ぽりぽりと頬をかきながら親しげに話しかけてくるギャル。


「……? いやでも俺は、待ち合わせがあるし」


「何言ってんだよ。 いいから帰るぜ!」


 そう言って俺の手を握って歩き始めるギャル。


 こ、これはまさか!?


「ホンロンどこにいる!? 貴様また俺にVRゴーグルつけやがったな!」


 VRは途中まで幸せな分、終わった後がホントに辛い。

 「うおお!? うおおおお!!」みたいな気持ちでどこまでも行ってしまいそうな気持ちの最中にバケツ水で目を覚まさせられるのって俺じゃなかったら気が狂ってしまうんじゃないだろうか。(正彦は元から気が狂ってます)


「何言ってんるんだよ。 まぁ正彦くんはいつも悲惨な目にあってるから疑い深くなるのかな」


 そう言ってギャルはグイグイと俺を引っ張る。

 すまんイク男。

 今はVRかもしれんが、一緒には帰れなそうだ。

 俺は、俺は『童貞に優しいギャル』に弱いんだ。

 特に褐色。

 頼む、自分の事『あーし』って言ってくれ。


「とりあえず、俺ん家行くだろ?」


 あー『俺っ子』タイプかー。

 アリだな。


 そのまま俺はニッコニコでギャルについて行った。


 ーー精肉店前ーー


「あれ? イク男ん家じゃん。 知り合いなの?」


「何言ってんだよ。 ただいまー正彦くん連れてきたよ」


 ちょっと高めで可愛いらしい声で帰宅を家族にアピールするギャル。


 イク男に妹いたのか。

 そうか、何度も家に来たけど気づかなかったのは俺の方だけだったのかな。


 兄貴があんだけエ◯けりゃ妹もこんだけエ◯い格好にもなるか。


「とりあえず部屋に行っててよ。 ジャンボフランク焼いてから持ってくから」


「VRもリアルすぎて、イク男の家まで再現されるんだなぁ」


「正彦くん。 だからVRじゃないってば、ホントひどい目に遭わされすぎて現実すらも信じられなくなっちゃったんだね……」


 そう言って促されるまま誘導された部屋に入る。

 イク男の部屋だ。

 落ち着いた色合いの木製の家具が置いてあって、レザー調のソファーでシックな雰囲気な割りに、突然のサッカーユニフォームが飾ってあったりと統一感がないので落ち着きのないあいつにはぴったりの部屋だ。


 うーん。

 紛う事なきイク男の部屋だ。

 やっぱりあの子はイク男の妹でここは現実なのか?


 とりあえず、ソファーに座ってスマホでもいじろうかと思ったら視線に聖遺物のようなものが入る。


「こ、これは!?」


 俺はそれを思わず手に取ってしまう。

 それは間違いなく紐だった。

 だが紐だけでは構成されておらず、中央部分には淫靡な紫色の布でつながれていいる。

 こんなものを履いたとしてもヒップラインっていうかヒップはエ◯く輝きを増すばかり、つまり『紐パン』だ。


「イク男の奴……ここに女の子を入れたのか?」


 この部屋に入ったとして、その女の子はなぜ紐パンを脱がねばならなかったのか。

 謎は深まるばかりの俺が紐パンを神妙な顔で握りしめていると部屋に明るく高い声が鳴り響く。


「ジャンボフランク焼けたよー!……わわ! な、何握ってるんだよ!?」

 

 けたたましく笑顔で部屋に入ってきたと思ったらイク子(?)が、突然顔を赤らめる。


「イク子……いいか。 世の中には見ちゃいけない物もあるんだ……忘れろ」


 さすがに兄が連れ込んだ女性の下着なんか見たくないだろう。

 俺はそっとポケットに紐パンをしまう。


「ええ!? なんでしれっと人の下着を自分のものみたいにしまうの!?」


「まるで状況がつかめてないようだから言ってやる……お前のためなんだ……」


 まったくイク男の奴、イク子のトラウマにでもなったらどうするんだ。

 この反応を見るにイク子は格好が元気っ子ギャルなだけで、そっち関係は純情ぽいな。

 俺がしっかり守ってやらねばな。


「とりあえず……これは洗濯してから持ち主に返しておく」


「ええ!? 恥ずかしいから別に今返して大丈夫だよ!」


「ダメだ。 洗濯されてないものを返したら持ち主が嫌な気持ちになるかもしれない」


「なんない!なんないよ!」


 そう言ってイク子は俺のポケットから無理やり紐パンを取り出す。


「あ、 こら! それは大事なもの(女性にとって)なんだから返しなさい!」


「なんで正彦くんの大事なものになってるんだよ!」


 そう言ってイク子はショーパンのポケットに紐パンを突っ込む。

 まぁイク男の相手に返すなら女の子同士の方がいいか。


「ちゃんと洗濯して返せよ?」


「余計なお世話だよ! もういいからジャンボフランク食べるよ!」


 イク子はけたたましいな。

 とりあえず二人でソファにかけてジャンボフランクをありがたく頂こうとと思った時だった。


 ヒュポ!


 スマホにメッセージが届く。


 腹は減っているが、通知が届くと神経質な俺はメッセージ未確認を0にしないと気が済まない。

 確認するとリンカだった。


『マサ。 数日前にお婆様がお酒に酔っ払って男女逆転TSの術式を誰かにかけちゃったかもしれないって急に言い始めたんだけど変わった事ない?』


 全く心当たりはないな。

 とりあえず思った通りに返信する。


 ヒュポ!


『なんか知り合いの妹っぽかったりする人が急に話しかけてきたりしてない? その人の記憶までいじっちゃってるから、男女逆転しちゃった人は元から自分が女の子だと思ってるみたいよ」


 ここにいるのはイク男の妹しかいないし、心当たりはないな。

 とりあえずまた思った通り返信する。


 ヒュポ!


 またメッセージが届く。


『イク男って妹いたの? しかも最近学校休んでなかった? ねぇ今どこ? イク男は一緒なの?』


 文面が全て?で埋まってるじゃないか。

 イク男の家なんだから妹くらいいるだろ。

 今までそんな話おくびにも聞いたことないし、イク男の事は今日はまるで見ていない。

 そんな事今まで全くなかったけど、リンちゃんは一体何が言いたいんだ?

 

 とりあず思ったまま返信する。


 ヒュポ!


 またメッセージが届く。


『ていうかさっきタンクトップ着たギャルと歩いてたから……』


「……ねぇ……冷めちゃうよ?」

 

 メッセージを読むのを遮られる。

 スマホばかり見ていた俺にイク子が寂しそうにこちらを伺う。


「あぁ。 悪かった。 返信があるとついな」

 

 基本的に人前でスマホをいじるのは好きじゃない。

 メッセージだと相手が俺の返信を待っているのではとソワソワしてしまうんだ。


 だがせっかくイク子が作ってくれたのを熱いうちに食べないわけにもいくまい。

 俺はジャンボフランクに手を伸ばす。


「?」


 そこで気づく(もっと早く気づけ)。

 イク子はなんでソファで俺の隣に座っているんだ。

 近くないか?


 ショーパンからはみ出る健康的な太ももがレザーソファーに張り付いている。

 そろそろ、暖かいというより暑さを感じる時期だ。

 汗ばんでいるのが余計艶めかしい。


 ゴクリ


(俺が幼馴染以外のリアル女性に……緊張している?)

 

 バカな。

 今までそんなことあったことないのに。(それを望んでいたのでは?)

 

「イク子……そのジャンボフランク……いや何でもない。 いただきます」

 

 「ぶっといな」と言いかけてやめる。

 俺はコンプライアンスはわきまえている。

 女性が嫌がることは決してしない。(正彦は本気でそうおもってます。根本的に無礼)


「ん。 ぶっといだろ? 俺が作ったんだ」


「なん……だと……?」


「俺が作ったんだ」


「その前だ!」


「? ぶっといだろ?」


 ゴクリ


 なんだ? 

 刹那的には劣情がイバラを超えている瞬間がある。


「俺こんくらいぶっといのが大好物なんだよねー」


「!!……‼!」

 

 こいつ……

 間違いない。

 劣情に置いての天才タイプだ。


 俺が油断ならぬ目線を送っていると、気にせずイク子はジャンボフランクを口に運ぶ。

 ほおばる寸前、イク子の快活そうなのに小さな唇を大きくひらいてフランクを待ち構えている。

 時間がスローモーションのように流れる。


 フランクをほお張るか否やの瞬間、俺はイク子の手を掴んで止める。


「そんなに……そんなに大きく口をひらいたら全部見えちゃうでしょ!(?)」


「なんだよ正彦くん! 俺はアツアツのぶっといのが好きなんだよ! 食わせろよ!」

 

「ダメだ! イク子は無防備すぎる! そんなんじゃフランクに屈することになるぞ!(?)」


「何言ってんだよ! 俺がフランクなんかに負けるわけないだろ!」


 ダメだ。

 完璧にフラグを立てているのにまるで気づいちゃいない。


 俺は慌ててイク子のフランクを引っ張ると、離すまいとしたイク子も引っ張られて俺の上に覆いかぶさるように倒れこむ。

  

「何すんだよ! まさ……ひこ……く、ん」


 覆いかぶさった先で俺と視線が合うとイク子が顔を赤らめている。

 俺はその褐色が赤色に染まっている表情から目がそらせない。

 

「正彦くん……食べたいのは……フランクじゃない、 のか?」


 瞬間、俺のスマホのバイブ音が鳴り響く。

 しかし俺は目線をそらせない

 タンクトップでは隠し切れない下着に隠された部分が汗ばんでいる。

 チラリズムっていうか全部見えちゃってても結局すこしだけ隠してればそれはチラリズムと同義。

 十分劣情を催す。


「スマホ……でないのか?」


 イク子がささやく。

 多分リンちゃんだ。

 

 俺にとっては愛情的にも劣情的にも最上位の相手からの電話のはずなのに、イク子から視線を外せない。


 俺が視線を外さないでいると、イク子がなにかをあきらめたかのような表情で俺に顔を近づけてくる。

 そしてーー


「電話でなさいよ!」


「!!?……」


 そこで突然現れるリンカとイバラ。

 俺の上に覆いかぶさるイク子をみてイバラが絶句したような表情を浮かべている。

 突然の来訪だが俺は確信した。


「俺を尾けていたのか?」


「なんでそういうのは悟るのよ!」


 とりあえず、俺にまたがってハワハワとあわてているイク子が可愛かった。

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