笑顔

「あ、おはよう美奈」


俺が登校していると前に見慣れた顔の少女が居た。幼馴染の美奈だ。


「あ、お、おはよう真弥翔。…えと、その」

「ん?どうしたんだ?ほら、早く行こうぜ」

「え、あっ、待ってよ!」


歩き出した俺に置いていかれないように美奈が走って追いかけてくる。


「それでさぁ━━」

「ええ?そうなの?」


なんの変哲もない普通の会話。それを広げながら歩く。あぁ普通だ。そうだよ。俺は普通なんだ。なんの問題もない。


それからも普通の会話を広げながら歩く。数分歩くと校舎が見えてきた。


「お、ついたな」

「あ、そうだね…もうついちゃった…」


美奈が横でしょぼんとしている。


「何落ち込んでるんだよ」


そう聞くと美奈は少し慌てた。


「えっ!?あ、えっと…まだ真弥翔と話していたかったなー、なんて…」

「ん?帰りも一緒に帰ったらいいんじゃないのか?」


俺がそう言うと美奈は顔を明るくした。


「っ!うん!一緒に帰る!」


そんな会話をしながら学校の正門をくぐるとそこにはまた見知った顔があった。


「ん?宮下?」


そこに居たのは後輩の宮川 鈴里だった。


「あ、先輩…」

「どうしたんだ?こんなところで」


そう聞くと宮川はたじろいだ。


「え、…彩乃先輩、怒ってないんですか?」

「何にだ?」

「…私が彩乃先輩に…嘘コクしたことです…」


宮川が肩を落としながらそう言ってくる。


「あぁ、なんだそんなことか。もう気にしてないから大丈夫だぞ」

「気にしてないって…それに横の人…」

「あぁ、幼馴染の下宮 美奈だ」

「そ、それって彼氏が出来た人なんじゃ…」


宮川がそこまで言うと美奈が宮川の言葉を遮って話し出した。


「私、付き合ってないよ」


美奈がきっぱりとそう言った。


「じゃあ…彩乃先輩は下宮先輩と付き合ってるんですか?」

「何言ってるんだ?そんなわけないだろ?」

「…」


そう言うと宮川が安堵したような表情になった。


「そ、そうなんですね…」

「あぁ、と。そろそろ時間だな。またな宮川」

「え?あ、はい」

「美奈も後でな」

「…うん」


そして一日が終わり放課後になる。


「…ねぇ、真弥翔」


おずおずと美奈が声をかけてきた。


「美奈?帰るか?」


そう言うと美奈は首を横に振った。


「…違うの」

「ん?じゃあなんだ?」


そう聞くと美奈が口を開く。


「どうして今日一日ずっと笑ってるの…?」

「え?」

「愛斗、今日ずっと笑ってる。朝登校する時も、授業受けてる時も、ご飯を食べる時も、今も…」


そう言われて自分の顔を触ってみる。そうすると異様に口の両端がつり上がっていることに気がついた。


「…ほんとだな。なんでだろう?」

「わ、分からないよ」


困惑しながら美奈がそう言う。


「まぁいいだろ。特に何も無かったんだから」

「…」


笑顔なのはいいことだよな。



【あとがき】


面白い、もっと読みたいと感じた人は評価お願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る