ある家族の朝
「真弥翔ー!朝よー!」
母さんのそんな声で目が覚める。しばらくぼーっとしていたが起きないといけない。今日は学校があるからな。
ベッドから立ち上がりリビングへ向かう。そこには既に俺以外の家族が椅子に座っていた。
「あ、おはようお兄ちゃん」
「起きたのか、真弥翔」
「おはよう、真弥翔」
みんなが挨拶してくる。俺もそれに返す。
「おはよう、みんな」
みんな笑顔だ。そう、みんな。ニコニコとしている。
椅子に座ると、母さんが言葉を発した。
「みんな揃ったことだし、朝ごはんを食べましょうか」
母さんのその一言でみんなが手を合わせる。
「「「「いただきます」」」」
そしてサクサクとトーストを噛む音が響いてくる。
「真弥翔、最近学校はどうなんだ?」
父さんが俺の方を見ながらそう言ってくる。
「学校?まぁ、普通だよ」
「そうか」
普通の会話が繰り広げられる。
「あ、お兄ちゃん、バター取って」
「ほら」
そう言って紗奈にバターを手渡す。仲の良い家族の朝食。そう、俺たちは仲がいいんだ。なんの問題もない至って普通の家族。それが俺たち彩乃家だ。
「真弥翔、最近美奈ちゃんとはどうなの?」
「美奈…母さん、覚えてないの?前に言っただろ?美奈にはもう彼氏がいるんだよ」
「あ…そうだったわね」
そんなことを母さんと言っていると
「ん?美奈ちゃんに彼氏が出来たのか?」
父さんがそう聞いてきた。
「あぁ…父さんには言ってなかったね。そうなんだよ」
「そうか…よし、今日の晩御飯はどこかへ食べに行くか」
「え?なんで?」
「真弥翔の傷心を癒すための会だ」
なんだかそれ聞いたことあるような会だな…そんなことを内心思う。
「じゃあ私お寿司がいいー」
紗奈がそう言う。
「紗奈、今日は真弥翔のための会だ。決めるのは真弥翔だ」
「えー。ねー、お兄ちゃんいいでしょ?」
紗奈がねだるようにこちらを見てくる。
「…まぁいいよ。寿司にしようか」
「やった!」
紗奈が喜びそれを見ている母さんと父さんは微笑ましそうに見ている。あぁ、家族ってこんな感じなんだろうな。
俺は良い家族を持ったな。
「あ、そろそろ時間よ二人とも。準備をして学校へ行かないと」
「あ、ほんとだ」
母さんに言われて紗奈がそう反応する。俺も時計を見る。するとあと五分で家を出ないといけない時間だった。
俺たちは自分の部屋に戻り学校へ行く準備を済ませた。
そして玄関から出る。
「行ってきます」
いつも少しだけ俺の方が家を出る時間が早い。紗奈はいつも通りモタモタしているのだろう。
日常。これがいつもの日々。そうだ。俺はいつもこんな日常を送っていたはずだ。何も辛いことなんてなかった。なかったんだ。なかったはずなんだ。
あぁ、幸せな日々だ。
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