大丈夫
「…なんで俺学校になんて来てんだろ」
一人でそう呟いた。何もしたくないはずなのに。何も考えたくないはずなのに。それなのに変わらず学校へ来ている。それになんだかあの人たちのことを考えても気分が悪くならなくなっていた。
俺なんかおかしくなってるのかな。
そんなことを考えながら屋上へ向かう。今は昼休みに入ったばかりでみんなそれぞれ昼ごはんを食べようとしていた。
誰とも話す気になれなかった俺は屋上へ向かっている。…俺元々話す人なんていなかったわ。
「はぁー…」
屋上には誰もいなかった。だから俺は大きなため息を一つ吐いた。
この数日で色んなことが起きた。まぁ全部悪いことだったんだけどな。
「俺はこれからどうしたらいいんだろうな」
そんなことを呟いてみるがその呟きに答えを返してくれる人は誰もいなかった。
それから何分そうしていただろうか?いつの間にか予鈴が鳴り響いた。
「…戻るか」
そして一日が終わった。今日は島百合とも朝しか話していない。まぁもういいだろ。島百合も変な同情心なんてかけられないで済むんだからな。
「ま、真弥翔…」
帰ろうとした時、後ろから声をかけられた。
「…どうしたんだ?美奈」
そこには不安げな表情をした美奈が立っていた。
「…その、本当なの?」
「なにがだ?」
「…島百合さんと付き合ってるって言うの」
あぁ、なんだ。そんなこと信じてるか。
「そんなわけないだろ」
「ぁ、そ、そうなんだ」
俺がそう言うと美奈は目に見えて安心したような表情になった。
「…話はそれだけか?じゃあ俺は帰るぞ」
「あ、ま、待って!一緒に帰ろ」
そう言って美奈が俺の隣に並んだ。
「…あのクソ女ッ!調子乗りやがって!」
その光景を見ていた一人の少女は自分の爪を力ずよく何度も噛みながら細いフレームの丸ぶち眼鏡の奥に見える目を血走らせていた。
「…いつまでもいい気になれると思うなよ。私が…私が…」
その少女の視線に気づかなかった真弥翔と美奈は無言で教室から出ていった。
「…」
「…」
隣に歩いている美奈は気まずそうにするだけで何も言葉を発しない。なら俺からも話すことは無い。
「あ、あのさ」
そう思っていたのだが美奈が俺の方を見ながら口を開いた。
「なんだ?」
「ひ、久しぶりにどこかに遊びに行かない?」
「行かない。俺はもう帰る」
「あ、そ、そっか…」
そしてまた沈黙が訪れた。なんだか考えて人と接するのが面倒くさくなってしまった。できることなら誰にも関わりたくない。
俺たちの下校は終始無言だった。
「…ま、また明日ね。それじゃ」
そう言って俺たちは分かれ道で別れた。
そして歩く。家を目指して。
数分もすれば見慣れた家が見えてきた。何十年と住んでいた家だ。
扉を開けて玄関で靴を脱ぐ。そしてリビングに向かう。
「ただいま」
そこで挨拶をすると家族全員が俺に駆け寄ってきた。
「真弥翔!どこ行ってたの!」
一人は俺の動向を伺う者。
「急に走っていなくなったから心配したんだぞ」
一人は俺の事を心配する者。
「お兄ちゃん!帰ってきて良かった…」
一人は俺が帰ってきたことで安堵する者。
ひとりひとり思うことがあるのだろう。どうでもいいが。
「ただいま。ちょっとネットカフェに泊まってたんだよ」
「…そう。気持ちの整理はついた?」
あんたが言うのかよ。そう思ったがいちいち言う必要もないため適当に流す。
「まぁ、うん」
「そうか。ならまた家族として初めからやり直そう」
「うん」
これでいい。こうすれば何も考えなくて済む。流れに身を任せればそれでいい。
大丈夫。俺は大丈夫。
大じョう夫。
【あとがき】
面白い、もっと読みたいと感じた人は評価お願いします!
すみません!間違えて同じ話を投稿してしまったので片方を削除致しました。
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