変化
「…」
朝、ネットカフェで目を覚ました俺は酷い気分だった。何もしたくない。
また俺は逃げた。嫌なことから顔を背けた。でも仕方ないじゃないか。もう俺にはどうすればいいか分からないんだよ。俺はどうすればいい?
自問自答しても答えは出てこない。
そのまま機械的に学校へ行く準備をしてネットカフェから出た。なんで学校行ってるんだっけ。なんでもいいか。
「あ、真弥翔!おはよ」
「…おはよ」
声をかけてきた美奈に何とかそう返した。今の俺にはこれが限界だ。美奈は何も悪くない。あの家族に受けた仕打ちを考えればなんともない。そもそも俺が美奈に怒るのはお門違いなんだ。
「どうしたの?なんか元気ないよ?」
「…別になんでもねぇよ」
ぶっきらぼうにそう言う。美奈に当たったって仕方ないだろ。頭ではそう分かっているのに自分の感情をコントロールしにくい。
「ふーん…、ま、いいや。行こ」
そうして俺たちは学校へ向かった。
校舎の前まで来るとそこには見知った顔がいた。
「島百合…」
島百合が立っていた。まるで誰かを待っているような…
「あ、真弥翔」
「まや、と?」
島百合が俺の事を名前で呼んできた。どういうことだ?
「真弥翔、知り合い?」
「あ、あぁ。ともだ…」
友達?俺と島百合は友達なのか?…いや、違う。俺と島百合の関係はそんないいもんじゃない。もっと醜くて気持ち悪い…
「真弥翔の幼馴染の下宮 美奈さんですか?」
「え?あ、うん。そうだけど…」
島百合が美奈に話しかけた。それに対して美奈は困惑していた。
「噂であなたが誰かとお付き合いしていると聞いたんですが」
いきなりそんなことを聞いた。いつもの島百合ならそんなこと聞かないはずだ。本当にどうしたんだ?
「っ!た、確かに告白はされたけど付き合っては居ないよ」
美奈がバツの悪そうな顔で答える。
「…やっぱりそういうこと」
島百合が何かを呟いた。それは小さくてとても聞き取れるような声ではなかった。
次の瞬間、俺の腕に島百合が飛びついてきた。
「し、島百合?!ど、どうしたんだ!?」
俺は島百合のいきなりな行動にたじろいだ。
「は?あ、あんた何してんのよ!」
それを見た美奈が声を荒らげてそう言った。
「真弥翔は私の彼氏なんだからどうしたって私の勝手でしょ?」
「お、おい何言って…」
訂正しようとして口を開こうとすると
「いっ!」
抱きしめられた腕で隠すようにして脇腹をつねられた。何も言うなってことか?
「うそ…だよね?」
美奈が泣きそうな顔でそう言ってくる。それを見て胸がキュッと締め付けられるような感覚に陥る。そう、これは罪悪感。なんでそんな顔してるんだよ…
「ほら、早く行こ真弥翔。一緒に行くためにここで待ってたんだから」
島百合はそう言って俺の腕を引っ張って行った。
「あ、お、おい!」
美奈はその場で呆然としていた。
【あとがき】
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