私は受け入れた
「すみません」
深夜、私の夫が酔いつぶれて誰かに肩を貸してもらいながら帰宅した。
「はーい。あら…ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
玄関に向かった私は直ぐに状況を理解した。そして直ぐにそう言うと、目の前の優しそうな男性は笑顔でこう言った。
「いえいえ、先輩にはいつもお世話になっているのでこれくらい気にしないでください」
それがあの人、静月さんとの出会いだった。
そこからあの人を寝室で寝かせて静月さんを見送った。きっともう会うことはないんだと思っていた。
だがそんな考えは数週間後に否定された。その時にはあの人はもう海外へ行っていた。
「奥さん、こんにちは」
買い物帰りにカフェで休憩していると静月さんが話しかけてきた。相変わらず優しそうな笑顔を浮かべながら。
「あら静月さん。こんにちは」
せっかくだからということで私と静月さんは少し話すことにした。するとなんともまぁよく馬が合う。
「そしたらあいつが━━」
「あらあら」
久しぶりにこんなに楽しい会話をした。あの人のことは愛している。だがあの人は物静かでどこか会話に華がない。静月さんは違った。話していて純粋に楽しい。こんな会話が続けばいいなという程度に思っていた。
「あら、もうこんな時間」
スマホの画面を見ると軽く1時間は話し込んでしまった。
「もう帰らないといけないので、失礼します」
私はそう言って立ち上がった。だがそこで呼び止められる。
「奥さん」
「どうかしましたか?」
私はなぜ呼び止められたのか分からなかった。
「いや、今日話してとても楽しいと感じたので連絡先交換しませんか?」
私は悩んだ。自分には夫がいるのに他の男性と連絡先を交換してしまってもいいのかと。
「…分かりました」
悩んだ挙句、私は連絡先を交換した。どうせ話すだけだ。それ以上の関係になることなんてない。そう思ったから。
連絡先を交換してから1週間後、静月さんから連絡があった。内容はあのカフェでまた話さないかという内容だった。
私は承諾した。素直に静月さんと話すのは楽しいのだ。
「奥さん、こっちですよ」
カフェについて静月さんを探しているとそう声をかけてきた。私は呼ばれるまま静月さんに近づく。
そしてまた時間を忘れて話し込んだ。そして気づいたことがある。静月さんにはあの人にない魅力がある。このままではいけない。絶対に良くないことになる。そう分かっているのに私は何度も何度も静月さんと会った。
そして気づけば私はホテルの中に静月さんと一緒にいた。いけない。頭では分かっているのに体が言うことを聞かない。
「奥さん…」
「あっ…」
静月さんの顔が近づいてくる。私はそれを…拒絶せず受け入れた。そして私はもう引き返せなくなった。
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