第13話 転生した雀、ついに最終審査へ


二次審査を通過したのは全部で5人だった。

グループダンス対決で私たちのチームは審査員から高評価を貰った。けれど、メンバー全員が勝ち上がれたわけではなく、2人が脱落してしまった。

合格者の中に私とナナちゃんは名前があった。全力で挑んで自信はあったけど、いざ結果が出るまでは本当に誰が残るかわからなかった。少しでも気を抜けば脱落したのは自分たちだったかもしれない。

それぐらいみんなの気迫と熱意は本物で、まさに野生の肉食獣のように貪欲だった。


「次でいよいよラストだね」

「これで決まるのかぁ。あぁずっとドキドキしっぱなしだよぉ」

極限まで削ぎ落とされたかに見えたけど、企画はまだ進行する。

最後に今一度ふるいにかける。この最終審査を通ればアイドルデビューが確約される。

合格者の人数は決まっていない。つまり、全員が受かる可能性もある。

裏を返せば、最後の最後で全員が落第になる可能性もあるという。

「そんなーここまで頑張ってきたのにぃ……」

「落ちなきゃいいだけだよ!ポジティブに考えようよ!」

「5人でデビューしようよ!絶対に!誰も欠けちゃだめだよ!」

ここまでくると連帯感が生まれてきて、私たちアイドルの卵たちは一蓮托生になった。

まさに戦友と呼んで差し支えない関係性を築いた。



「みんなぁ!お疲れちゃ〜ん⭐︎それじゃ私から最終審査の内容を発表するわよ

〜〜〜!」

会場に入ってくるなり、今日も派手なメイクと髪型の麗子社長が挨拶もそこそこに本題に入ろうとする。

いきなり過ぎて心の準備ができない。

それは他の4人も一緒で、さっきまでの笑顔が消し飛んでしまった。

「ちょちょちょ!社長!社長!」

あとから遅れてやってきた、黒い背広の三郎さんが慌てふためいて麗子社長と押し問答する。

「ダ・ン・ド・リ!段取りを弁えてください!というか本当にソレやるんすか!?ウチの社員まだ誰も知らないんですけどぉ!?」

「あーたりまえだのクラッカーよ⭐︎それに関係各所には私から話通してセッティングは終わってるし。なんにも問題ナッシィングよ」

魔法の呪文のような不可解な組み合わせ。なぜに前田さんがクラッカーなのだろうか。

私たち5人は互いに顔を見合わせて首を捻る。

「あぁ、ごめんなさいね。不安にさせちゃったわよね。たしかに当初の予定にないオーディション形式でイレギュラーになるけれど、正真正銘これが最後の審査よ。貴女たちを推し量るのに、これ以上勝るものはないと思うわ」

丁重に前置きして、社長は宣言する。


「如何に努力を重ねようと、如何に容姿端麗であろうと、最後にもの言うのはファンの存在。つまりは、信仰を集めた人気取りほど上に上がれる神話体系。偶像。それがアイドルの本質。ならば、最終審査の内容はおのずと決まる!そう、貴女たちにはアイドルデビューをかけて票を奪い合ってもらうわ!」

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