第4話 テレアポの基礎は「以前お電話させ(ry」
会社が入っているビルに入りエレベーター前に行く。
すると前に同じ課の佐々木さんが並んでいた。
佐々木さんは28歳の先輩だ。性別は女性。テレアポが強く。1日で3件はアポを成立させる凄腕だ。ちなみに、営業会社のテレアポは1日で200件以上テレアポをしないと怒られる。それぞれにどこで入手したかわからないリストがあり関東圏やそれぞれの区市町村で分かれている。決められた場所へのアプローチは無くバッティングすることも多々ある。テレアポは100件リストを回して1件取れれば良いと言われている。だから、200件回して3件取れるのは凄いことなのだ。
ここで、テレアポの流れを紹介しよう。
まずリストから電話する企業の電話番号を入力する。
電話に誰か出たら、
「お世話になっております。【以前】お電話させていただきました。機械通信の服部です。」
ここで、以前電話したと強く強調する。
テレアポでのファーストコンタクトは事務員なのだ。
テレアポしてくる会社の電話なんて営業だとわかっているので大抵のテレアポはここで事務員の壁を突破できない。
ガチャ切りという言葉があるように速攻ガチャ切りされる。
そこで唯一の希望として以前から電話している関係ですよと錯覚できれば儲けものなのだ。
「●●社長はお手すきでしょうか?」
ここで社長いますか?と聞いてはならない。
理由は、以前お電話しているのに社長の名前知らないの?となるからだ。
社長の名前はネットで検索すれば出てくる可能性があるので情報収集は欠かせない。
この場合、事務員の行動は3択だ。
1つ目は、社長に繋ぐ。
これは、事務員突破完了だ。これは1割はこうなる確率がある。
2つ目は、社長に確認だ。これは5割に当たる。
負け確の演出で緑保留並みの確率だ。期待してはいけない。
3つ目は、内容を聞いてくる。
これは、期待値などほとんどない負け確の演出だ。4割がこの演出だ。
内容を聞いて商品営業の電話ですなんて言った瞬間ガチャ切りの流れになる。
それぐらい、事務員は営業電話の対応をしているのだ。
半年もなれば申し訳ないという気持ちも薄らいでしまっていることに驚いてしまう。
そんな事を考えていると佐々木さんと目が合う。
「おはようございます。」
ニュートラルなトーンで朝の挨拶をする。
すると
「おはようございます。寝不足ですか?」
と聞いてくる。逆に聞きたいのだが昨日飲み会があってなんで佐々木さんは普通でいられるのだろうか。
「昨日の飲み会であまり眠れず…」
なんて答えると
「営業会社では飲み会は基本ですからね。服部さんも慣れなきゃダメですよ。」
なんて、週2、3回開かれる飲み会に慣れる様に促される。
『なんで僕が飲み会に慣れていないことを突かれるのだろう。』
と心の中で呟いた。理不尽だなと思いながら
「すいません。」
とニュートラルに答える。
なぜか謝罪をするとエレベーターがやってきたので佐々木さんと乗り込む。
目当ての5階のボタンを押してドアが閉まる。
満員電車よりはきつくはないが人と接触してしまうほどの距離しか自分には与えられていない環境の中でただ5階に着くのを待つ。
3階、4階とエレベーターが止まりバラバラと人が降りていく。
ある程度感覚が取れるようになったタイミングで5階に着く。
僕と佐々木さんはエレベーターから出てセキュリティロックされた扉にICカードを機械に当ててロックを解除して扉を開ける。
現在時刻7時55分。
就業開始時間1時間5分前である。
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