第3話 会社に近づくにつれて暗くなる

最寄り駅近くの駐輪場に自転車を置いて改札を通る。

反対側のホームなので階段を上って反対側のホームへ向かう。

電車が来るまで2分。Bluetoothイヤホンを起動してスマホから音楽を流す。

現実から聴覚だけ遮断された状態。こうすると現実から目を逸らすことが出来る。

「うん。悪くない。」

と心の中で呟やく。

そんな心の安らぎは電車の到着と共に打ち砕かれる。

満員電車だ。

早朝この駅で降りる人は全くと言っていない。

だからこそ平日は満員電車になる。ぎゅうぎゅう詰めにされながら電車に乗り。

ただもみくちゃにされながら会社の最寄り駅へ向かう。

この現状に心の安らぎなんてもの無くなり。現実に引き戻される。

駅に止まっては乗車客が増えての繰り返し。徐々に会社に近づいているのがわかる。

僕の心は会社に近づくにつれて暗くなっていった。

営業は未経験で機械通信に入社した。

理由は「未経験歓迎!」と求人票に書いてあったからだ。

あの時僕は、すぐにでも転職したかった。だから求人募集数の多い営業に絞った。

その為、すぐに面接にたどり着くことが出来た。そして内定を貰い入社した。

その企業の口コミも評価も見る事なく。

それぐらい僕は焦っていた。すぐにでもこの会社から離れる事ができるなら。

どんなに理不尽でも耐えられると思ったんだ。

でも、問題があった。

僕は、人間不信に陥っていた。

前職で味わったトラウマと言われるものだろうか。

僕は、人間と関わることに酷くストレスを抱えるようになっていた。

人間不信の人間が営業をする。週に2、3回飲み会がある。

自分で営業職を選んでおいてこの様である。

そんなことを考えていると会社の最寄り駅に到着する。

「降りまーす!降りまーす!」

と言って電車を降車して改札を出る。

横断歩道で信号が青に変わるのを待つ。

周りを見渡すとスーツを「ビシッ」っと決めた社会人だらけだ。

青になると一斉にスーツの大群が歩き出す。

僕も会社へ向けて歩き出す。

「今日は午前中テレアポで午後2時から営業だ。」

今日のスケジュールを確認しながら会社入口に到着する。


さて、今日もお仕事だ。




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