第2話
「秋穂先輩!」
夕方になり集合場所に指定された駅前に行くと沢城はもうとっくに着いていたようで私の姿を見るやいなやすっ飛んできた。
「おー、沢城久々」
「お久しぶりです、って言っても先月も呑みに行ってますけどね。」
そうなのだ、なんだかんだ大学を卒業してからも沢城とは何度も呑みに行っている。
お互い気を使わない相手だから自由に呑みたい時に丁度良いのだろう。
それにサークルを卒業した今趣味について話せる人なんて身内にしかいないのだ。
とりあえず呑もうということでいつもの居酒屋に来ていた。
安くて上手くて速い。そして店員さんとも少し仲がいい。
「秋穂ちゃん、沢城くんいつもありがとうね〜
アジフライサービスしとくから!」
「え、ありがとうございます!こちらこそいつもお世話になってます。」
うわーい、ここのアジフライ美味しいんだよ。
身がふっくらしてて食べ応えもあって。
毎回来ると必ず頼む一品だ。
とりあえず何品かとお酒を注文した。
私が緑ハイ、沢城はファジーネーブル。
沢城め、可愛い酒を呑みよって……。
他愛もない話をしながら呑んでいるとそこそこ出来上がってきたのかサークルにいた頃話していたような会話に変わっていく。
そう、オカルト的話に。
「先輩、昨日海岸で人魚の鱗が見つかったって話知ってます?」
「え、なにそれ、詳しく。鱗だけだったら他の魚もいるし人魚かなんて分からないでしょ?」
「そうなんですよ、それが魚にしては大きめな鱗で、なんと言っても美しい青色の鱗だったんですって。普通の青なら他の魚でもいるかもしれませんがあの透き通った鮮やかな色の魚は居ないだろうって。」
青い鱗か、最近身に覚えがあるような……
あ……
「ねぇ、その鱗どんなのか見た?」
「ネットに上がってるやつでしたけど見ましたよ!」
「じゃあ」
おもむろに服をたくしあげる。
「えっ、ちょ、先輩??」
「鱗ってこんなだった??」
「へ?」
何故か動揺している沢城に私の脇腹を見せると動きが止まる。
「え、そう。こんな感じの鱗…ってえぇ?!」
沢城の反応が面白すぎてケラケラと笑ってしまう。
「いや、先輩笑ってる場合じゃないですよ。なんですかその鱗!」
「いや、昨日帰ってきたらついてた。」
「どういうことですか!!」
どういうことと言われても私が知りたい。
でもそっか、人魚か〜。
「沢城、私人魚かもしれん」
「もしかして先輩酔ってます?」
「失敬な、まだまだここからじゃい。だってこんな鱗出来て、同じような鱗が海岸で見つかるなんてさ……」
信じられないことが起こってるのかもとか思っちゃうじゃん。
「まぁ、先輩の言いたいことも分かりますけど。」
「でしょ?ねぇ、沢城この後時間ある?」
「え、はい。今日から長期休暇なので全然時間ありますけど」
「よし、じゃあ確認がてら海にでも行くか!」
カバンから財布を取り出しそのまま会計へと向かう。
「って、今からですか?!」
慌てる沢城を尻目に店を出て足早に間もなく終電になるであろう電車へと乗り込んだ。
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