羇愁
@toudoumoshiko
第1話
朝、目が覚めてすぐに服を捲り脇腹をまじまじと確認する。
あぁ、やはり昨日の夜見たものは私の見間違いなどではなかったのかと酷く落胆した。
昨夜は仕事納めと言うことで同僚たちと飲みに行った。
年末ということもあり多少羽目を外していたのかもしれない、思い出そうとしても記憶が朧気だ。
ただ、とりあえず楽しく呑んで食べたことだけは何となく覚えている。
縁もたけなわということでそこそこで解散し帰宅後、お風呂に入り身体を洗っているとザリッと何か変な感触がして音の出処へと目を向ける。
そこには……。
私の脇腹には、青い鱗のようなものが浮き出ていた。
昨日は酔っているせいでまともに理解出来ず、遂に幻覚でも見ているのかと思い何事も無かったかのように寝たが、朝になりあれは夢だったのかと確認するとそれは元々あったかのようにそこへ鎮座していた。
青く暗い光を反射している。
人目から見れば大層美しく映るかもしれない。
これはなにかの病気なのだろうか。
おもむろに検索サイトで調べ始める。
「身体」「鱗」「病気」
魚鱗癬という病気がヒットした。
どうやら乾燥や、先天性のものにより皮膚が固くなり剥がれる病気のようだ。
私のこの症状とは関係無いな。
皮膚であればこんな青くならないだろう。
これは皮膚というより、本物の魚の鱗のように見える。
病院へ行くべきか、いやしかしこれが病気でなかった場合珍しい症状で研究所に送られたりしないか。
なんて有り得ないだろうが不安のせいか頭が正常に働いていないのか変な想像をしてしまう。
ピロン
スマホが音を立て、メッセージが来たことを知らせてくれる。
ベッドの上に投げ出されていたスマホを手に取り確認する。
「沢城から…」
沢城とは大学の時の後輩でサークルが同じだったため仲良くなった好青年だ。
甘え上手というか、懐に入るのが上手いタイプの人で人に甘えるのが苦手な私からしてみたら尊敬できる人物だった。
『秋穂先輩、仕事納め終わってたら呑み行きましょう!』
一度この鱗の事は忘れて呑んでしまおう。
現実逃避をするべく私はすぐに沢城に返信するのであった。
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