第6話 元・婚約者は、考える
「ティアさん、今回の、外交パーティーの面々だ」
学園のある一室にて、ずらりと、上級生たちが並ぶ。きっと、名のあるメンツなのだが、当然、知っている人はいない。
「ティアと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします」
決まったお辞儀をする。すると、拍手で向かい入れてもらった。
「諸君らに、先に言っておくが、彼女の噂に関して、自分で判断できないような者はここにいないと思っている」
「もちろん」
黒髪で、碧眼の男子生徒が、頭の後ろに手を回しながら、気さくに答える。
「こんにちは、ティア嬢、俺はアロイヴ・モンブロー。よろしく。フレデリクのことは分かっているつもりだよ」
(いいのかしら、こんなに良くしてもらえて)
(……モンブロー……公爵家にいらっしゃったわ。殿下に、友達口調なのも納得。きっと、爵位が男爵なのも、この中ではわたしだけね……)
「ありがとうございます、期待に沿えるように、尽力しますわ」
「そんなことしなくても、ティアさんなら、大丈夫なのに」
アロイヴはにこりと笑う。
(いいのかな)
「外交パーティー自体の企画は、学園が行うが、参加者のわれわれは、ゾーリュックの学園の生徒たちにも、誠実さを示し、潤滑油となること、将来の国の為政者として、経験をすることが求められる。よろしく頼む」
アリスのこれまでに見たことのない、堂々とした姿だった。
(あれから、頑張ったんだね)
私は、やはり、彼は尊敬の対象だと思った。
◇◇
「ティアさんが、王太子殿下に推薦されて、外交パーティーに一年生なのに、参加するらしいですわ」
フレデリクとカロリーヌの耳に入るのには、時間はかからなかった。
「フレデリク様あ!わたし、あんな思いをしたのに、ティアさんが、誠実な振りをしているのが、悲しいですわ……!」
「そ、そうだね」
カロリーヌは、不満をたれ続けるだけだった。フレデリクは、面食らっていた。婚約破棄が成立し、フレデリクとの、婚約の話が持ち上がろうとし始めてから、カロリーヌの様子が変わり始めたのだ。
元は、ティアに愛嬌を感じないと思っていたことを、偶然、話しかけてきたカロリーヌにこぼしたのがきっかけだった。ティアは、整いすぎて、……つまらなかった。カロリーヌとは会話が弾む。そんな中で、ティアはそれを妬んで、彼女に嫌がらせをするようになった。みんなが言っている。だから、自分が守らねばと思った。
「こんなにつらい目にあったのに……!」
「そうだね」
でも、ティアはどうしてあんなにあっさりと婚約破棄を……
(いいや)
迷いなんて、ないんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます