2人を守る


買い物を大量にする事30分、ようやく3人はお墓に向かった。


お墓と言ってもお店にお金を払って作ってもらったのではなく、


シェリーが心を込めて作ったものだったので、とても簡易的なお墓であった。


この場所にお墓をつくった理由はよく分からないが


とてもお花が綺麗で景色も良い所だ。


アラスカ町の景色がここから見えて、なんとなく自分達の家も


見守ってくれるような気がした。


周りの大きな花、小さな花は、このお墓に忠誠を尽くしているかのように


花びらや葉をお墓に向けている。



シェリーは目をつぶり長い間お祈りをし終えると、


2人をそっと抱きしめながらお墓に、



「あなた、私達は大丈夫。何があっても、2人を守るからね。

だけどずっと2人の側にいてあげてね。」



シェリーの夫、そしてティアレとレオに誓いながらそして


最後は語りかけるように言った。



その言葉に嬉しくなったティアレとレオは、シェリーを強く抱きしめた。



レオは偶然見つけた四つ葉のクローバーをお墓のてっぺんにおき、


ティアレはグラジオラスの花束をおいた。


3人はそこにしばらくいた後、



「また来るからね。」



と言って、3人はお墓に背を向けた。



最後にティアレは何かに惹きつけられるようにお父さんのお墓を見た。


すると、お供えしたグラジオラスの花束に

一瞬光輝くものが見えた気がして、


何だろうと目を細めたが分からず、なんとなく



「ちょっと待ってて。」



と言い、お墓まで小走りをした。


光輝くものの正体はブレスレットであった。


ティアレは見た瞬間よく分からないが感覚的に


今まで見た景色、花、物よりも1番美しいと感じた。


一見そこら辺にいる人はただの綺麗なブレスレットと


何も変わらないがティアレはそうは思わなかった。


ティアレはゆっくりとブレスレットを触わろうとした時、妙に緊張して手が震えた。



しかし手にとってみると気持ちがぽかっと温かくなるものだった。


ティアレはしばらくそのブレスレットを手に取り握りしめていた。


その頃、レオは探しているわけでもないのにふっと下をみるとまた四つ葉のクローバーを見つけて、



「お母さん見て見て!四つ葉のクローバーこれはあ母さんにあげるね。」



と可愛い言葉を言っていた。


シェリーは「なんて良い子なの」と我が子を絶賛し、嬉しそうだった。


その時、ティアレは



「男の人とぶつかったとき?でもそんなはずは、」



という独り言を言い終え、一人で首を傾げた。


そしてその後もう一回



「でもきっとそうだ。返さなきゃ。」



と何の確証もない独り言をまた言った。



シェリーがティアレのそばにやってきたと同時に



「シェリー」



と3人にぎりぎり聞こえる声の大きさで


声を掛けてきた人がいた。その声は歳をとった


おばあさんの声だった。



3人が振り返ると、顔色が悪い

よぼよぼのあばあさんが


杖を持って立っていた。


杖を持っている手はがたがた震えていた。


そして、今にも倒れそうになりながら

1歩5秒くらいかけて


近づいてきた。



命がけの3歩をした所でシェリーは




「分かりましたから、2人で話しましょう。」




と神妙な面持ちで言った。



しかし、おばあさんはシェリーの顔みた後、


ゆっくり視線をティアレに逸らし、




「お嬢さんそのブレスレットを持ち主に。」



「ブレスレット?何の事ですか?」




シェリーはすかさず聞いたが


おばあさんはその言葉には目もくれず




「走ればまだ間に合う。」




とティアレの目だけを見て言った。




「待ってください、2人で話をしてから。」




シェリーは咄嗟にティアレがどこかに行かないよう腕を掴んだ。


腕を掴んだ手にはブレスレットがあり、


ティアレはそのブレスレットをみた後、


もう一度おばあさんを見た。


おばあさんは



「シェリーや、ブレスレットを持ち主に返さなければ。」



と頼み込むように言うと


シェリーはティアレの腕をすっと緩めてそして離した。


シェリーは先程と顔付きを変え



「それはこの子が1人で行かないとダメという事ですね?」



とはっきりした口調で言った。


おばあさんは目を瞑りながら頷き、


ティアレの目をみて



「さっき、ぶつかったお花屋の前、そこに

まだ彼らはいる。何としても見つけだして

2人は出会うんだ、いいね。」



と先ほどの3倍の速さで言葉にした。



「うん!元々こんな素敵なブレスレット返さなきゃ、と思っていたんです。じゃあお母さんちょっと行ってくる!」



ティアレは全部を理解できていなかったが


気づけば全力で走っていた。



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ルピナス una @unasmile

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