2人の天使さん
2階の部屋のドアには大きく
「ティアレとレオの部屋」と
カラフルな文字で落書きされていて、
ミディアムヘアの女の子と短髪の男の子がドア1面に描かれていた。
そして、ドアを開けたその部屋の中は
先ほどの部屋とはまた雰囲気が違い「The 子供部屋」という感じだった。
「おるすばんできるかな」
「リラのぼうけん」
などの絵本や、
カラフルな積み木、くまさんのぬいぐるみ、お絵かきノートなど、
沢山の物が散らばっていた。
そして勉強机が2つ横並びに並んでいた。
ティアレの勉強机の引き出しには5歳の時から
日記を書くのが癖になっているようで、
太い日記帳が5冊整頓されていた。
だだ最初の1冊目の日記帳にはほとんど字は書いておらず、
家族の似顔絵や、お花の絵が描かれていた。
もう少し違う日記の内容を見てみると、
お母さんのシェリーと弟のレオとの楽しい日常が書かれていた。
しかしティアレは学校に行っていない日がよくあるようで
その時のことを時々日記に綴っていた。
7歳の日記のあるページ
私はこの前友達とけんかをした。友達が年下の子をいじめていたからだ。
私は友達にやめなよ、と言ったらけんかになった。
そして次の日から無視をされるようになり、
周りの友達も無視をするようになった。
私は、お母さんに学校行きたくないと言った。
怒られると思ったけど、
「無理して行かなくていいんだよ。」
と言って学校に休みの電話をしてくれた。
それから、レオと絵本を読んでいたら隣の家の森林おじさんが、野菜をくれた。
アラスカ町の人は森林おじさんが無愛想で嫌みったらしい人だと言うけれど、
お母さんは
「野菜にも愛情を持ってこんなにも美味しく育てられるのだから、優しい人よ。」
と言っていた。だけど、どうやら野菜をくれるのは私達の家だけらしく、
近所の人はますます森林おじさんの悪口を言っているそうだ。
それからレオがお昼寝した時、私とお母さんは屋根にのぼって寝転んでみた。
空は大きくて、そしてとっても綺麗だった。
8歳のある日
今日も学校に行けなった。だけど5時に起きてお母さんの手伝いをしたり、
レオを送りに行ったりした。
そして、今日もばぁやが来てくれた。
ばぁやは私にとって本当のおばあちゃんのような人で大好きだ。
そしていつものばぁや特製のチーズケーキを持ってきてくれた。
レオは保育園に通っていて沢山の友達と遊んできたと言って泥まみれになっていた。その後レオと泥遊びをしていたら私の服も汚れた。
お母さんはその間、ばぁやとコーヒーを飲みながら話していて、
とっても嬉しそうに笑っていた。
今書いた内容は学校について書いてある日を抜粋したが、
最終的には周りの人との小さな幸せが毎日、毎日丁寧に書かれていて、
ほっこりする日記となっていた。
またお母さんの影響で花屋さんになるのが夢らしく、
机の上には花の図鑑の36ページがたまたま開かれていた。
そこにはマメ科、開花時期5~6月と花に関する情報の上に大きく、
「ルピナス」
と書かれていた。
そしてこの「ルピナス」は後々、ティアレの人生を変える大きな言葉となる。
一方レオの勉強机は5歳の幼稚園児なので、
勉強机はまだ使ってないようだった。
なので勉強机は綺麗だが、散らかっているものはほぼレオのものだった。
そんな部屋でまだベッドに寝ているティアレとレオの2人は、
アーチ型の窓から差し込む太陽をスポットライトのように浴び、
1つのお布団を仲良く使いながら気持ち良さそうに寝ていた。
ティアレは、少し太陽に当たっているからなのか
頬紅をしていないのに頬がピンク色になっていた。
ティアレがお母さんと似ている所は肌と髪の毛が綺麗な事で、
顔の1つ1つのパーツはお父さん似らしい。
特に眉毛が平行で整っている所はお父さんとそっくりで、
チャームポイントとはどこかと聞かれると、
ティアレは自信をもって眉毛だと答えていた。
また、物事に真剣になると自然に少し顎がでてしまうのもお父さんの遺伝だとか。
一方レオは、キリッとした目が特徴的である。
そして顔がシュッとしているので、顔が細長く見えた。
幼稚園の先生からは、息子さんは「小さい白馬の王子様です」と
大絶賛される事が多く、
バレンタインデーの時には先生からチョコレートを
もらうという謎の現象がおきたこともあった。
その小さい白馬の王子様と言われたことのあるレオは、
寝言で「お姉ちゃん、この本も読んで〜。」と甘えていた。
この光景をみると、この世の中は平和だ、と誰もが思う事だろう。
シェリーももちろんその1人で、
2人の姿に癒やされたのか、
はたまたは親ばかなのか、
起こそうとはせず2人を撫でては微笑んだ。
数分後、時計を見てようやく起こす気になったのか
「2人の天使さ〜ん!今日はお父さんのお墓参りの日よ、
朝食も作ったから早く食べて、ほら、こんなに良い天気。」
アーチ型の窓をぱっと開けたシェリーは髪をなびかせ、
花の甘い香り、森からでる独特な匂い、
そして森からでるマイナスイオンを口から大きく吸った。
すると、自然のハーモニーが体中に入り、シェリーを穏やかな気持ちにした。
ティアレは目を覚まし、眠いのと光の眩しさで目をこすりながら、
シェリーの背中を見ていた。
シェリーは外を見ながら右耳を触り、目を静かに閉じた。
その間、シェリーは何を考えていたのだろうか、そして何を思っていたのだろうか、
シェリーの1滴の涙にティアレは気づくはずがなかった。
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