ルピナス

una

ファータブリース

町の外れのお花屋さん



皆が生きているこの世界で、


多くの鮮やかな花に囲まれている1軒の家があった。


その家から一番近いのは、


今年で79歳になる森林さんと言う男性が住んでいる家だ。


庭で採れた野菜を


「はいよ。」


と不器用ながらもわたしてくれる。



その家から次に近いのは


アラスカ町で2番目に大きいと言われている


創業59年の丸山スーパーだ。


家からは歩いて3分の距離あった。


丸山スーパーは一見とても古く感じるが、


店の中は5年前にリニューアルしたため比較的新しくなっていた。


トイレも1つから2つに増え、


壊れかけていた棚も綺麗に直っていた。



そんな花に囲まれている1軒の家の壁は、


呼吸する壁とも言われている漆喰を使用しており、


家の湿度を調整してくれるようだ。



また、漆喰は太陽や雨を吸収するため最初は真っ白な壁であったが、


いつの間にか、くすんだベージュ色に変化していた。


人間は太陽にあたり日焼けをするとこんがりした茶色になる事が多いが、


どうやら壁は人間と違うらしい。



暖かみのあるくすんだ赤色の瓦屋根は、焼き物のため耐久性がある。



しかし、この家の住人達はどうやってか


瓦屋根に時々のぼっているため所々瓦が傷ついていた。



玄関はアンティーク感が際立ち、


表札にはおしゃれなのかよく分からない字で、



「町の外れにあるお花屋さん」



と書かれていた。



そして、この家には驚くべき事が1つあった。


それは家を建てたのがこの住人であり、二児の母親でもある



シェリーという人物がほぼ1人で建てたということだ。



5年前に夫を失い、2児の母親として子育てをしながら


この家を1から設計し、


1から建てたというのだから驚いたものだ。



そのシェリーは、


紫のロングワンピースのパジャマ姿で


ベッドから起きると


手を上にぐっと伸ばし長めの背伸びをした。


そして顔にかかっている長い髪の毛をかきあげた。


そのおかげで、広いおでこが見えると同時に、


幅広い二重やカールのきいている長いまつげ、


優しそうな瞳、


筋が通っている鼻、


綺麗な肌など、


人の外見を褒めるときに使う言葉がずらりと並び、


誰が見ても美人と言わざるを得ない顔立ちだった。




また右耳だけにあるピアスがキラリと光り


一層輝きを増しているようにも見える。




またこの部屋自体はそんなに広くはないが、


真っ白なふかふかのベットは、


どこかのお嬢様が住んでいるかのような


清潔感溢れる部屋であった。




シェリーはせかせかと髪の毛を適当にまとめ、顔も洗わず外に出ると、


半径10メートルほどある花に


「おはよう。」


と声をかけながら水やりをしていた。



シェリーは花屋を経営しているが、


シェリーの育てる花は美しいと


アラスカ町でかなりの人気があった。



シェリーはその秘訣を聞かれると、




花も生きているからしっかりと


「花と会話することが大切なの。」


と自信満々に答えていた。




それを聞いたお客さんは、地元の人だと


そうかそうか流石だな、と微笑ましく笑いながら帰っていくが、


遠くから来た人には


「あっそうなのですね。」


と苦笑いをする人も多かった。




またこの花屋では植木鉢に花が咲いているわけではなく、


大地に咲き誇っている花を見て、


そこから気に入った花を買う事ができた。


大地に咲いている花の近くには、


花の名前とその説明、


また花言葉まで丁寧に情報が書かれていた所が


人気の秘訣でもあった。



しかし、1番の人気の秘訣は




シェリーが親身になって一緒に花を選んでくれることや、

人柄の良さだと地元の人は口を揃えて言った。




水やりが終わるとすぐキッチンに行き、


鼻歌を歌いながら人参ジュースと


1枚5㎝ほどあるふわふわの食パンを用意した。


このキッチンは先ほどのシェリーの寝室とは異なり木を基調としていて、


鍋もまな板もスプーンも木の物を使用していた。


また、冷蔵庫も生活感をださないようにリメイクされていて、


シェリー自慢の部屋になっているようだ。



他にも朝食には、


大きなボールにレタス、アボカド、トマト、エビ、豚肉と


さらに細かくカットしたバナナにエディブルフラワーであるババロアまで


トッピングした栄養満点のサラダが食卓のど真ん中に堂々と置かれていた。



シェリーは朝食を作り終えると毎朝どの家庭でもよく聞こえる




「起きなさーい」



という大きな声で、2人の子供を呼んだ。




しかし2人の子供はまだ夢の中のためいつものごとく返事はなかった。


シェリーは返事が返ってこない事に慣れているようで、


2人が寝ている子供部屋へと階段をのぼった。

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