第4話 信憑性と不安

「信じてもらえたし、説明は終わりだな」

「ちょい」

「で、ここからが本題なんだけど」

「ちょっと」

「君には、、」

「無視してんじゃないわよ!」


 輝へ向けて怒号が届く。傷が治ったことに驚いていた優也が体をビクッとさせる。


「なんだよ瑞稀。うるさいぞ」


 対して怒鳴られた輝本人は心底鬱陶しそうに反応する。そんなことお構いなしに瑞稀と呼ばれた少女はテーブルの上を指差す。

 そこには血のついた料理や食器の数々があった。先ほど雄也を刺した際に飛び散ったらしく瑞稀以外の5人も言葉にはしないが『何してくれてんだ』的な視線を向けている。


「いや、、、あの、、ほんとマジすいません」


 先ほどの態度はどこはやら弱々しく謝罪する輝。


「予測できるよね?血がテーブルの上に飛ぶことくらいね。それにさ、テーブルだけじゃなくて床も血だらけなのどうするのこれ」

「すいません。テーブルの上の物はすぐに片付けますし、床はその後すぐ掃除します」

「だったらすぐやら!」

「あのー、、優也君にこの後お話ししなければいけないことがありまして、、、まずそれを話してからでもいいでしょうか?」

「それは私たちでやっとくからあんたはさっさと片付けを始める!」

「承知しました!」


 テーブルの上の料理を洗い場持っていく輝。自業自得ではあるが元気のないその後ろ姿を見て優也は不憫に思う。


「あのー、手伝ったほうがいいですかね、、」

「やらせとけばいいのよ。あいつがいけないんだし。それよりも優也君には話さなきゃいけないことがあるんだけど、、、まずお風呂入ろっか」


 そこで優也はあることに気づく。目の前にいるのは自分と同じくらいの年代の女の子それなのに。


「なんかえらく落ち着いてますね。目の前で刺されたり、こんなに血が付いてたらもっと怖がるのものだと思うんですけど」

「んー。見慣れてるからね。まぁ、その辺も含めて後でお話しするからさ。まずはその血だらけの体をキレイにしてきなよ。案内してあげるね」

(見慣れてるってなんだよ!怖ぇよ!)


 内心では恐怖しながらもそれを悟られぬよう

必死で平静を装いながら風呂場へと案内された。

 自分はこれからどうなるのか。先ほどの話の信憑性は確かにあるがそれでこの人たちを信用していいのだろうか。そんなことを思考していると瑞稀の足が止まる。それに気づき数秒遅れて優也も足を止めた。


「ここがお風呂場。着替えは後で持ってくきとくから、今着てる服は脱衣所にある緑のカゴに入れといてね。ボディタオルとかも気にせず使っていいから。あ、でも血とかついたらここのゴミ箱に捨てといてね。血って落とすのに手こずるかもしれないけど慌てずゆっくりでいいから。それじゃ、ごゆっくりー」


 説明し終わり引き返す瑞稀を眺めながら優也は呟く。


「・・・だからなんで血が落ちにくいとか知ってんだよ」


 不安を募らせながら彼は脱衣所へと続く扉を開けた。

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能力者たちの日常 中町直樹 @NN0707

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