第10話 浮気と本気と束の間の魔女
昨日から、私の幼馴染にして交際相手、立花悠斗の様子がおかしい。
以前から……具体的には高校入学してからお互い妙にギクシャクすることもあった けど、昨日は私の誘いにも乗ってこなかった。
折角お気に入りの下着を持ってきたのに……。
今日も、私の誘いを断ってどこかに行ってしまった。
亮介君の誘いすら断ってたって事は本当になにか用事でもあるのかな……?
「おい、はやく舐めろよ」
目の前にいる大男――竜胆史郎が下着姿で話しかけて来る。
放課後の授業準備室、ゆー君と一緒に帰らないときはいつもこいつとシてから帰るのがすっかり日常になってる。
まあ、アソコだけは許す気ないけど……。
やりすぎると汚くなるって言うし、それにこいつのはゆー君より……というか平均よりも明らかに大きいからゆるくなったら困るし。
「えー、シャワー浴びてないのに舐めると臭いからやだ」
「お前のも舐めてやるから、な?」
「んー、ならまあいいけど……。ちゃんと気持ちよくしてね?」
「ああ、もちろん」
元々はこいつに脅されて始まったこの関係も、今では良い息抜きになってる。
正直滅茶苦茶上手いし、顔もかっこよくて体力もある。
私の知らなかったプレイもたくさんできて、最高に気持ちいい。
ゆー君にだけはバレないようにしないと……。
「ほら、はやく」
「はいはい……え?」
机の上に座る竜胆君に近づく時にスマホが震えたのに気づいて確認すると、友達からメッセージが入っていた。
『なんか、立花君が女と帰ってるよ?』
……女って、なに?
どういうこと?
心臓の鼓動がどんどん早くなる、まさかゆー君が浮気?
そんな、冗談でしょ??
「どうした?」
竜胆君が怪訝な声を出す。
けど正直、構ってる場合じゃない。
こいつはあくまでおもちゃみたいなもの、大事なのはゆー君だけだから。
「ごめん、今日は帰る」
「はぁ? ふざけんなよ!」
「だって、ゆー君が……」
「知らねえよ、帰るにしても口でしてからにしろ」
くそっ……。
融通の利かない筋肉ゴリラめ……。
仕方ないから、ぱっぱと終わらせて急いで追いかけよ。
「わかった、早く終わらせたいから下脱いで」
「お前が口で脱がせろよ」
「……はぁ、わかった」
本っ当にうざい。
ムカつくゴリラの股の間に座り、顔を近づける。
待っててゆー君、すぐ終わらせるからね。
―
――
―――
――――
「早く終わらせたい、とか言ってた割には気持ちよさそうだったな?」
「……うるさい」
……結局、一時間近くシてしまった。
私は悪くない。
竜胆君が上手すぎるのが悪い。
「なあ、今日うちこいよ」
「やだ」
「なんでだよ、本番やろうぜ」
「……それだけはだめ、絶対無理だから」
「物欲しそうな顔してるくせに」
「……うるさいっ」
毎回こうだ、正直、すごく揺れる。
だってすっごい気持ちいいし、興奮する。
今だって背徳感と快感で頭がおかしくなりそうなのに、もっとすごいことをしたら 私はどうなるんだろう。
けど一度だって受け入れたことはない。
ゆー君の事を、愛してるから。
最後の一線を越えたら、きっとゆー君に振られちゃう。
一時間も気持ち良くさせられた後に断れるんだから、やっぱり私はゆー君のことが 世界で一番大好きなんだと思う。
竜胆君の誘いを断っている時間が一番ゆー君への愛を実感できる。
「ま、気が向いたらいつでも声かけろよ? 俺は先帰るから片付けよろしくな」
乱れた制服と髪を直している間に竜胆君は帰っていった。
きっとゆー君なら私の髪を梳かしてくれてくれたりするんだろうな。
片付けだって、私任せになんて絶対しないよ。
快感の余韻に浸りながらゆー君を思い浮かべる。
大丈夫、ゆー君は私を裏切ってるはずがない。
きっと誰かの見間違いだよね……。
床についた液体を雑巾で拭きながら、私は祈った。
―
――
―――
――――
……全然返信が来ない。
ゆー君の家に行こうと思ってメッセージを送ったのに返事も既読もつかない。
いつもなら、絶対にすぐ返事をくれるのに……。
仕方ないからゆー君の家に歩いて向かってる。
だって、心配だし……。
『これ、写真。やっぱ誰かと帰ってたみたいだよ』
ゆー君からは返事が来ないのに、友達からいやなメッセージだけは送られてくる。
見ると、ゆー君と黒髪の女がどこかの道を歩いている。
……こいつ、見たことある。
確か転校生、だったはず。
何度かゆー君に話しかけようとしてたから邪魔してやったんだよね。
あの女、ゆー君の事を色ぼけた目で見てやがった。
もしかして、こいつがゆー君に何か吹き込んだ……?
だとしたら許さない……!
『ごめん、気づいてなかった。今日は亮介に所に泊まるから会えないや』
ゆー君から返信が来た!
そっか! 亮介君の家に泊まるだけか、なら仕方ないよね!
『そっかー、分かった。じゃあ今日は帰るね~』
友達と遊ぶならそっちを優先しないとね。
ゆー君には物分かりの良いいい子だって思ってほしいもん。
……でも、おかしいな。
亮介君の誘い、断ってたよね。
『夜遅くにごめんね、ゆー君には何も言わずに返信して欲しいんだけど……今ゆー君って亮介君の家にいるかな?』
“一応”確認のメッセージを送ってみる。
信じてないわけじゃないからね?
『悠斗? あー、来てるよ』
『そっか、わかった、ありがと~』
『ういういー』
亮介君の確認も取れた。
本当によかった、ゆー君が裏切ってなくて。
知らない女と二人きりでこんな夜遅くまでいるなんて、そんなの浮気だもん。
もしそんなことしてたら絶対許せないよ。
けど……一緒に帰ってたのは事実だよね。
もしかしたら余計な事吹き込まれてるかもしれないよね……。
そうだ、お弁当作ってあげよ!
ゆー君の好きな物いっぱい用意して、お昼に一緒に食べるの。
そしたらきっと、機嫌直してくれるよね?
ふふっ、明日が楽しみだなぁ。
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