第13話 修羅場②

「まだそのこと言ってのんか」


「行かないっていうまで毎休み時間ここに行くからね。」


 茜は、真っ直ぐな目でこちらを見る。意思を変えるつもりはないらしい。


 それじゃあ、大いに困ってしまうんだが...どうにか茜に納得してもらわないと


「何したら茜は行くの許してくれる?」


「...一緒に寝......行かなかったら良い。」


 何か言おうとしてたな...


 茜も何かしてもらいたいことがあるということなら、勝機もある。


「なんかはあるだろ?ないの?」


「あるにはあるけど...」


「出来る限り叶えるからさ。」



「...出来る限り...じゃあ、... 一緒に寝たい


 茜は、下を向きながら小さい声でつぶやいた。俺には『一緒に寝たい』と聞こえたのだが...




「は?...........え?どういうこと?」


「だから!!一緒に!!同じ部屋で!!寝ふぐ...」


 あぶねぇ、危機一髪茜の口を抑えたから助かった。あのままだったら、クラスメートの前でトンデモ発言を言われるところだった。


『ヤバない?同棲までしてんの?』


『同じ部屋って...そういうこと?』


『羨ましい...』


 意味なかったわ。


そりゃ『一緒に同じ部屋で』まで言われてしまったらどうしようもないわな。


 でも、俺もあいつらと同じくらい混乱してるんだけど...何で急にデレてきてんの?最近嫌われてるようにしか思えなかったんだけど...



「わかったから、家でそのことについてはやってやるから。」


 実際には何もわかってはいないがこれ以上噂が広がらないように茜と和解を試みる。...が、どれも失敗に終わり...


『家で?ってことは本当に...』


『やってやるってそういう意味だよね!?』


『羨ましい...』


 と、クラス中が小声話ではなく皆普通の声で会話し始めた。


 余計噂が酷くなってるのは気のせいだろうか...


  みんなの想像力に一周回って呆れ果てていると...


「家でやるって言質とったからね。」


 そこにあかねが追撃を入れる。これでみんなの予想が確信へと変わる。噂話がまたも加熱する。他のクラスのやつもいることから、学年に広まってしまっているんだろう。


「じゃあ、今日は一緒に帰るからね!!」


 それだけ言って茜は教室を出てしまった。茜がいなくなっただけでは噂は収まるわけもなくより一層大きな声で話し始める。前の前川も心配そうにこちらを見てくる。


 流石に前川は、俺たちが兄妹ということを知ってるから勘違いはしてないようだ。


「あれ...どういう意味?まさか、本当にやるの?」


 違うわ。違う心配してただけだ。


こいつに期待する方が、バカだった。


「するわけないだろ。正直俺もイマイチわかってない。」


「…妹とは犯罪だからな」


「知っとるわ。」


 









〜昼休み〜



俺は予定通り、一ノ瀬と待ち合わせしていた教室に向かう。この約束のせいで、飛んだ災難にあってしまった。


 一ミリも、一ノ瀬さんが悪くないので何も言えないんだけど...


 指定されていた教室に入ると一ノ瀬さんが本を読みながら待っていた。


「ごめん。遅かった?」


「...」


 無言!?


「えっと、そんなに待たせちゃったかな?5分ぐらいしか授業終わってから経ってないと思うんだけど...」


「...」


 またも無言。


「何か怒らせるようなことしちゃったっけ?怖いからちょっとはしゃべってよ。お願いだから。」


 このまま無言居られるのは、居心地が悪すぎる。ここまで怒らせるようなことを何かしてしまっただろうか?



 一ノ瀬さんの機嫌を伺うようにチラチラと見ながら思い当たる節を考える。

だが、一ノ瀬さんは基本的に無表情だからどれが起こってるのかも分からず原因が分からずじまいになってしまう。





「あの噂どういうことなの?」


 一ノ瀬さんは、ゆっくりと口を開けて喋る。



 そういうことか!!


「妹との件は、全部誤解だから。妹とは、多分何もない...」


「多分って?」


「いや、俺もあんまりわかってない部分があるから。俺目線だと、『一緒に寝る』的なことは言ってたんだがそんなことは普段言わないし...」


「ふーん、そういうこと。...聞き間違いでしょ。」


「俺も流石にそう思ってる。でも、聞き間違いだとしたら何と聞き間違いしたのか分からない。」


「一緒にご飯食べたいとか言ってたんじゃない。」


なるほど、一緒にご飯を食べたいって言ったのか...あの時、茜が小声で言っていたから聞き間違えたのかもしれない。


そう言えば昨日、一人で食べてたもんな。俺は寂しかったぞ。


「そういうことか。色々と合点がついた。ありがとな。」


「...うん。」


 一ノ瀬は、どこか申し訳なさそうに顔を下に向けながら答えた。そんなに俺の顔が怖いのかな?何回も他の人にされてるから慣れてるっちゃ慣れてるんだけど、一ノ瀬にされるのは少々堪える。



「まぁ、オレの件はいいとして一ノ瀬は何をあの時言いたかったんだ。」



 一ノ瀬の機嫌もおさまったことでオレはようやく本題に写ろうとする。










 








 


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