第9話 モブの逆襲撃③
まず、状況を整理しよう。
俺は一ノ瀬が佐川からお金を取られそうになったのを取り返した。そしたら佐川が逆ギレして先生に自分がお金を取られたことにした。そして、俺は先生の好感度がなく信じてもらえない。
結局、クラスでの人気投票になって俺vs佐川。
(あれ?詰んでね。)
これが、ラノベの主人公とかなら超絶頭良い方法で解決できるんだろうけどいくら考えても凡人の俺の頭からはアイデアが出ない。
所詮、俺には人を惹きつける魅力も機転を利かす頭脳もないただのモブだ。
♢
「今日は、すまんが時間をとってもらう。じゃあ、何があったか説明する。」
そう言って、先生は佐川の意見に寄った説明をする。
「なにか、心当たりがあるものはいないか?」
俺にとってベストはここで、誰かが真実を話してくれることだ。
「…はい。」
一人の女の子が立った。彼女は、佐川の方をチラチラと見ながら口を開く。
「何か知ってるのか?安井。」
「私は2-bの一ノ瀬さんに金を取られたことがあります。」
(そんなことだろうと思ったよ。)
クラスがどんどん騒がしくなる。佐川と目線でやりとりしていることから事前に打ち合わせがあったのだろう。
佐川の魂胆としては、嫌いな奴らを全員まとめて不幸にさせたかったのだろう。
状況が徐々に悪くなってくる。
「どう言うことだ?いつそんなことが起きたんだ?」
先生は、慌てて話を聞く。好かれている生徒にとっては話をちゃんと聞いてくれる良い先生なのだろう。
安井と呼ばれる人物が、ゆっくりと喋り出す。
「美化委員になった後すぐの放課後です。その時は、如月さんもいて、私怖くて…」
そう言って、安井は泣き出しそうになる。
正直、普通に見ていたら嘘だって丸わかりの演技だ。だが、空気がそれを補強する。空気が三文芝居を本物に変える。
みんな、俺を非難するような目で見てくる。誰も真偽については考えずに…
早く白状してこの時間を終わらせろ、と。
(茜に迷惑かけちゃうな…後で謝らないと。)
俺には、なんの才能もない。
ここで、機転の利いたことを言ったり嘘を証明したりできるような器ではない。
そんなことは俺自身が1番分かっている。
だが、モブならモブらしく不器用かもしれないし無様かもしれないが少しくらい足掻いてみたい。
「…うるせぇな、あぁ、俺がやったよ。一之瀬の件も俺が一ノ瀬に命令したんだよ。なんか悪いか?」
クラスが、静まり返る。
「如月‼︎何言ってるのか分かってるのか。」
当然、先生が怒り出す。
こんなの何も根本的な解決になっていない。そんなの俺でも分かっている。
一ノ瀬の罪を全て被れたわけでもない。
だが、モブの俺にしてはなかなかの出来だろう。
「うるさいなぁ…もう俺は帰る。」
俺は、そう言って逃げるように学校を出て行った。
♢
〜佐川視点〜
「うるせぇな…もう俺は帰る。」
如月が、そう言って教室を出る。
ざまぁみろ。私に逆らうからそうなるんだよ。
一ノ瀬についてはあいつが罪を被ったせいで少々不発に終わってしまった。でも、それでもあいつを貶めただけで十分だ。
教室は騒がしくなり先生もどう収拾しようか迷っている。
「あの‼︎」
皆が、騒いでる中一人が声を上げた。多分前川とか言う名前だったと思う。よく、如月とつるんでいた奴。
「どうした前川。」
「佐川さんはいつ如月に脅されたんですか?」
急に質問が飛んできてパニックになる。おそらく友達である如月を助けようとしてるのだろう。面倒臭い…
ここは、無難に私が一ノ瀬からお金を盗んだ日で良いだろう。
「今日の朝。体育館裏で」
「僕、早くからいたから分かるけど、最初佐川さんが一ノ瀬さんを呼び出しに行ってたよね。後から、如月は来て一ノ瀬さんを探しに行っていた。」
「どう言うことだ。佐川。一ノ瀬はいないんだろ。」
「一ノ瀬さんとなんて話してません。」
前川一人なら無理やり押し通せる。そう思い、私は先生に嘘をつく。
「…私、一ノ瀬さんを連れて行ったのを見ました。」
すると、後ろの名前も知らない女の子が急に立ち上がって話し出す。
(なんだこいつ?黙っとけ。陰キャがしゃしゃり出んな。)
声になりそうだった怒りを抑え、どう言い訳しようか考える。
クラスが騒がしくなってくる。考察をしようと友達同士で話し合っている奴も出てくる始末だ。
「…情報が錯綜しすぎている。一旦この件は保留にする。それぞれの処置に関しては今後言うから今日は帰って良いぞ。」
先生は、そう言い終礼をして教室を出て行った。
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コメントで佐川のことをボロカスに書いていた方には申し訳ないのですが、佐川に関してのざまぁはもう少し先になります。
(ストーリーの関係上、ここで如月くんを皆から距離を置かれる人物にしときたいんですよね…)
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