第7話 モブの逆襲撃①
「今日は来るの早いな。」
そう言いながらも、もっと前に学校に着いていた前川がそう喋ってくる。
「あのさ、前川。紹介したい友達いるんだけどいい
?」
「は?なんだよ急に。誰?」
前川は、少々切れ気味で答えた。多分だが、前川もあまり友達がいない方なので新たな友達が増えることに少なからず緊張感があるのだろう。
正直俺も、新しい友達を前川が連れてきたら少し不安に感じる。
「一ノ瀬さんって知ってる?」
「一ノ瀬さんってあの一ノ瀬さん?」
「2-bの一ノ瀬さん。」
「どう言うことだ?もしかして、健人。お前一ノ瀬さんにまで手を出したのか⁉︎」
(またってなんだ。またって。妹には嫌われていることを説明しただろ。)
「違う、違う。手なんか出してない。ただ、成り行き上友達になっただけ。」
「は?どんな成り行きだよ。」
「いいだろ、そんなこと。それよりも、昼休み一ノ瀬さんと一緒に昼ごはん食いに行くぞ‼︎」
「えぇ…」
無事、前川にも納得?してもらった。
今朝あんなことがあったから俺は、一ノ瀬さんが一人でいるのは不安だろうと考え、一ノ瀬さんに一緒に昼食を食べようと言ったんだ。
誘っている最中、断られた時のことばっか考えていたのは内緒です。
♢
「よし、前川。一緒に食べに行くぞ。」
「マジで一ノ瀬さんいるの?」
まだ、前川は疑った目で俺を見ている。毎休み時間、この疑問を投げかけられる俺の身にもなって欲しい。
どんだけ、俺の信頼はないんだよ。
「マジでいるよ。」
「あの…如月くんはいますか?」
教室が、ザワザワしてきたと思ったら一ノ瀬さんが自ら俺のクラスまで来てくれたみたいだ。
来てくれたのは嬉しいのだが、少しは自分の影響力を考えてほしい。
「え?如月は、あそこだけど…」
『なんで如月と』
『あんな怖いやつとどうして関わったんだ?』
『脅してるに決まってんだろ』
(散々な言われようだな。)
案の定、みんなから注目を受ける。嫉妬や混乱、疑問などの感情が俺に向く。
「えっと、教室まで来てくれたんだ。」
「…暇だったから。」
「あっ。そっか。じゃあ食べに行こう。…あ、後こいつが俺の友達の前川。」
「…ついてくるの?」
「そうだよ。一緒に食べて仲良くなろ‼︎」
「…」
気のせいかもしれないが、一ノ瀬が前川の方を睨む。前川はずっと下を向いたままだ。
少しして、前川が上を向き、
「なぁ、健人。俺、用事思い出したわ。今日は一緒に食えんわ」
それだけ言って走って逃げていった。
「は?おい。ちょっと待てよ。」
「…行っちゃった。」
「ごめんな。今日は、なんか用事があるらしい。」
「大丈夫。気にしてない。…それより、早く昼ごはん食べに行こ。いい場所知ってる。」
「そうなの?じゃあ行こうか。」
そう言って、俺たちはちょうど廃部となっていたハンドボール部の部室で昼食を食べることにした。
♢
俺たちは、誰もいない教室で昼ごはんを食べている。今までと違い、一ノ瀬さんが反応してくれるから会話がよく続く。
「あ、そうだ。今日、あの後あいつになんかされた?」
「ううん。何もされてない。」
一ノ瀬さんは、一緒に首も振りながら反応してくれた。
少し小動物のように見えて可愛いと思ったことは内緒だ。
「良かった。」
「…け、健人は、なんかあった?」
少し、上擦った声で一ノ瀬さんは俺に喋った。
「け、健人?…俺のことか⁉︎」
「勘違いしないで。前川くんだってあなたのことを下の名前で呼んでいたじゃない。仲良くなるために当たり前のことをしただけよ。」
一ノ瀬さんは、滅茶苦茶早口で捲し立てた。内容は理解できたが、それなら前川も下の名前で呼んでやったらいいのに…
俺もあいつのこと名前で読んでないから知らないのかな?
「なるほど…」
「だから、あなたも私のことを名前で呼ぶべきよ。」
??突然、とてつもないことを言われた。
一ノ瀬さんのことを名前呼びは、俺が嫉妬で殺されるかもしれない。
でも、一ノ瀬さんは今までにないほどの赤い顔で俺に言ってきたので断るに断れなくて…
「ゆ、雪?」
言ってしまった。
どちらも、恥ずかしくなったのか下を向いて黙ってしまう。
「ごめん。恥ずかしいから呼び捨てで我慢して。」
「…まぁ、今は許してあげるわ。」
一ノ瀬も恥ずかしかったからか、すぐに名前呼びを解除することを許してくれた。
これで一件落着だ。
♢
『放送です。2-aの、如月健人くん。至急、職員室まで来てください。』
学校内に、放送が響き渡る。
「……は?俺?」
———————————————————————
1話更新の間に、星200が見えてきました。
本当に見てくれた方々ありがとうございます。
追記:すみません。少しの間下書きに誤って戻してしまいました。
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