第7話
文化祭1ヶ月後…校内コンクールの、結果発表。私は、なんだかんだと考えながらも、なんとか花の絵を描き終えた。私が描いたのはレンゲソウ。お姉ちゃんと最後に見た花だから。私の描いたレンゲソウは、お世辞にも上手いとは言えなかったけれど、提出はした。
「それでは、第52回、月野牧高校文化作品コンクール、結果発表を始めます。」
始まった。始まってしまった。次々と賞、作品、作者が読み上げられていく中、とうとう絵画部門がきた。
「まず、抽象画部門です。最優秀賞…“海中の舞”空凪青羅さん。」
その瞬間、私のクラスは歓喜の悲鳴に包まれた。手を取り合う人、青羅に笑いかける人。みんな様々だけど、喜んでる。もちろん、青羅も。いつもは見せない笑顔で笑っている。
「…静粛に。続いて、風景画部門です。」
来た。私、大丈夫かな。選ばれてるのかな。大丈夫。きっと、大丈夫。
「最優秀賞は…」
お願い。お姉ちゃんとの、思い出まで、否定しないで。
「“花と秋”夏野日麻さん。」
「…あ…。」
だめだった。お姉ちゃんとの思い出を、汚してしまった。お姉ちゃん、ごめんなさい…。
「何やってるの?星崎さん。」
「てか、何あの絵、上手だから選んだのに、めっちゃ下手じゃん。」
「誰かに描いてもらったとか?」
「あ、空凪君に描いてもらったんでしょ。よく一緒にいたのって、そういうことか〜。」
みんなが、私の思い出を、お姉ちゃんを、バカにする。やめてよ。もう、やめてよ。そう思っているのに…。
「…ごめんなさい、みんな。調子、出なくて。ごめんね。」
笑って、謝っている。「しょうがない。花は、どうしても、無理だから…。」そう思っているのに、言えない。嫌われるかも、言い訳だって思われて、みんなが嫌な気持ちになるかも。そんなことを考えてしまう。ごめんなさい、ごめんなさい…。
「おい、星崎。ちょっと来い。」
また、青羅が呼びに来て、今度は美術室に連れて行かれた。みんな今日は結果発表しかないから、授業はなく、2人きりの空間。青羅が、話し始めた。
「なあ、お前、どうしたんだ?あんな絵、描いたことなかったのに。」
ああ、青羅も、私を責めるんだ。ごめんなさい、ごめんなさい…。
「うん、ちょっと下手になっちゃったみたい。へへっ、相談のってくれたのに、ごめんね。忘れられなかった。前も、向けなかった。」
「…そんな悲しそうに笑うやつ、初めて見た。泣かないのか?」
「…うん、泣かない。クラスメイトの、前だもん。私は、優等生だから。」
その瞬間、青羅は怒ったように話し始めた。
「なあ、お前は、優等生しかできないのか?全部ほどほどで、純粋に毎日を楽しむ、普通の高校生には、なれないのか?」
「…たぶん、なれない。私は、優等生で、いなきゃいけないから。」
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