第12話

かぶと虫



やけに大荷物の妻が仕事から帰ってきた。



夫 おかえり


妻 ただいま〜


いつもと違う声のトーン


妻 今日娘夫婦来るから、しゃぶしゃぶね。


仕事で疲れているはずなのに、今日はやけに元気だ。よほど嬉しいのだろう。


私も楽しみだ。


夫 久しぶりだね


妻 何が、どっちの意味?


どっち?妻の言葉の意味がよくわからない。


夫 しゃぶしゃぶ


妻 へぇー鍋のことね。


妻は途端に少し不機嫌そうに私を見つめていた。



準備が整った頃、娘達が訪れた。


なにやら私にプレゼントがあるらしい……



娘 お邪魔しまーす!

  いつもありがとう!はい、これ……



プレゼント?誕生日でもないのに、一体何だろう。


カレンダーの前で暫く思案していると、赤マル印の付いた十八日、父の日。



少し目頭が熱くなった



妻 早く席に着いて。



楽しい食事の時間が始まる。


私の大好きなしゃぶしゃぶ!


鍋はいつも私が面倒をみる。


なぜなら、妻はなんでも一気に掘り込んでしまうから。


しゃぶしゃぶも、季節の鍋も、なんでも闇鍋にしてしまう。


私はそんな大雑把なのは嫌だ、譲れない。


鍋奉行、参上。



妻 早くおじやを食べたいのに……!



そう言った妻が、突然具材を一気に放り込む。



本当に品がない鍋だ


イライラする



いつも揉めながらの鍋。


私と妻の大きな声が飛び交う



娘 変わらんね昔から、仲良くしてよ。

  

思わず妻も私も誤魔化すように苦笑い。


いつもこうなる、楽しくない鍋。

























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