第19話 1回限りの復活
こうして1日掛けてついに……
「あれがミノタウロスだ」
ノゲイラさんが指を差した先、正方形の部屋の中央に、牛の頭で上半身は人間の下半身は牛の体を持つモンスター、ミノタウロスが居た。鍛え上げられた肉体で人間の3倍ほどの大きさがあり、手には通常の斧の3倍はありそうな斧が握られている。
部屋の奥には石で出来た扉が見え、部屋の入り口にある石碑には、古の文字が刻まれている。
ノゲイラさんがこう言った。
「1対1でミノタウロスに勝利したものにだけその道が開かれんと書かれている」
「俺の出番という訳ですね」
「そういうことだ」
「任せて下さい!」
腕まくりをしながらその部屋の中に入っていく。するとドンという音がして振り返ると鉄格子の扉が入ったきた入り口に落ちて来ており出ることはできない。
3人は俺のことを見ている。
俺は胸を2回叩いて、親指を立てて3人に見せる。
中央に立つミノタウロスの前に立つと斧を振りかぶり、一直線に俺の体めがけて振り下ろしてくる。
俺は絶対防御と念じ、左腕に光の盾を出す。
力自慢のこいつに力勝負で勝つ、今の俺ならできる。★全てを(特)にした俺なら
光の盾で斧を受け止めると、石畳の地面がベキッと音を立て、俺の足が数センチ沈み込む。負けてないこいつと力勝負をしても。
そのままミノタウロスは俺を押しつぶそうとしているのか斧を持つ手に力を込めてくるのが分かる。
「うおりゃぁぁ」
全身の力を左腕に集中させ、斧を弾き上げる。
牛の動揺した顔は知らないが、たぶんそんな顔をしたミノタウロス。
「お前より俺は力が強い。なんせ筋力強化(特)そして力はS+だから」
そう言ってがら空きになった腹に火属性を付与して殴る。ミノタウロスの体は魔力ででも守られているのか、体は一瞬火に包まれたが燃え上がったりすることはない。
属性が効かないなら全力で殴るのみ。
片膝をついたミノウタウロス。俺はそのまま顔を殴るとのけぞるミノタウロス。それを追いかけるように左手で殴り、全力で全身を殴る。
そして前のめり倒れるミノタウロス、もうピクリとも動かない。出入り口の鉄格子の扉がズズズズと上に上がっていく。
ノゲイラさん達が中に入ってきて声をそれぞれ声を掛けてくる。
「流石だな。ミノタウロスに圧勝するとは」
「すっごーーーい」
「本当にお強いですね……」
「まあ運以外Sなので」
ちょっと照れながら答える。
「さあ、扉を開けてくれ。ウェブ、お前しか開けられない、ミノタウロスに勝利したお前しか開けられないんだ」
「ああ、任せてくれ」
部屋の奥にある石できた扉に手を触れる。
ドクン……一瞬、動悸がする。
「え?」
俺は全身の力が抜けていく感覚を覚えそのまま暗闇に包まれていく……
◇◆◇
「死んだか……」
ノゲイラが呟く。ノゲイラの目の前にはウェブ・ステイが前のめりに倒れており、その先の扉は開かれている。
「しかし嫌な仕掛けですよね。これ」
オールがノゲイラに話しかける。
「ああ、ミノタウロスに勝利したものは、その猛き魂を奉納することで扉は開かれん。ミノタウロスに勝った上に命まで取られるという仕組みだからな。騙されてるのも知らずにホイホイついて来るバカで良かった。欲に目がくらんだバカで金しか頭にないクズは騙すのは簡単だ」
「ほんと馬鹿な子、でも私は欲望に正直な子は好きよ」
アルルがノゲイラにそういった。
「ふんっ、アルルのタイプか?」
「あら?妬いてるの?ノゲイラ、あなただって自分の欲望に素直じゃない?」
ノゲイラはニヤッと笑う。
「くっくっくそうだな。俺たちも欲に目がくらんではいるな」
そう言ってノゲイラは倒れているウェブの体を蹴って開いた扉の前からどかし部屋に入って石板を手にした。その時、
「違う! 俺は金のことは考えてない!!」
聞こえるはずのないウェブの死体から声が聞こえた。
◇◆◇
真っ暗でなにも見えない……
あの文字が目の前に浮かび上がってくる。
『1回限りの復活を使用します。使用後このスキルはなくなります』
★★★★一回限りの復活、自身が死んだ時に発動するスキル。使用するとスキル自体が無くなる。
ノゲイラ達が話しているのが聞こえきた……
「……金しか頭のないクズは騙すのが簡単だ」
なんだと……違う!!俺は金しか頭にないクズじゃない!!
反論しようと身体を動かそうとしても動かず、体になにか当たった感じがありそこから一気に完全に体の意識が戻ってくる。
「違う! 俺は金のことは考えてない!!」
俺はそう言って立ち上がった。
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