第18話 ミノタウロス

 ノゲイラさんと一緒にギルドを後にする、近くに馬車を用意しているということなのでそこまで一緒に歩く。


 歩きながらノゲイラさんに話し掛け、単刀直入に聞く。

「金貨5枚の仕事ってなんですか?」


 特に表情も変えずにノゲイラさんは話し始める、

「俺たちはとある好事家に頼まれて、金貨10枚の報酬で古い石板を探してたんだが、その石板の在処が見つかった」

「その場所はどこなんです?」

「場所自体はすぐ近くなんだが、迷宮になっていてな。最深部までは迷わなくても1日は掛かる。一応最深部までは行っているから1日で着くことはできるが……」


 行ったことがある場所しか瞬間移動は使えない……げ……丸1日とかフェス引けないじゃん……

「フェスが……」

 思わず口走ってしまった……


 怪訝そうな顔で俺のことを見るノゲイラさん。

「フェス?」


 このままここに居ても金無くてどうせフェス引けないし……どうせなら最後の1日に金貨5枚でフェスに掛けた方が正解か……


「都合悪いの? 都合悪いなら日を変えてもいいけど」


「いえ!! 今日が良いです!! 今日でお願います」

 食い気味に答えたためノゲイラさんは少し驚いた表情を見せる。


「続きだが、その石板があるとされる扉の前にミノタウロスが門番として立っていてな。ミノタウロスと1対1で戦って勝利を収めたものだけがその扉を開くことができるとされているんだ。あのオークの亜種にソロで勝てるほどの者ならミノタウロスにも勝てるはずだよな?」


「任して下さい! ステータスは運以外Sランクですし殆ど(特)の強化を持ってる俺は負けません」


 少し困惑様の表情をで口を開くノゲイラさん。

「そ、そうかそれは心強いな……」


 俺は胸を張って、手でどんどんと胸を叩いてこう言った。

「ええ。大船に乗ったつもりでいて下さい」


 15分程歩くと馬車が見えてくる。

「あの馬車だ」


 馬車の側に二人の男女が立っていている。

 ノゲイラさんが俺に紹介するように話す。


「うちのパーティメンバーだ。女で僧侶のアルル。男の方が魔術師のオールだ」

「ウェブ・ステイです……」


 アルルさんは妖艶な感じで胸にスイカがくっついてる。そんな彼女に俺は目を見て話すことはできない。オールさんのほうが神経質そうな感じで眼鏡を掛けてる。


「私はアルル・シエルでーすよろしくー」

「俺は魔術師のオール・ブエナイよろしく」


 オールがノゲイラさんに話しかける。

「この人が俺たちのクエスト横取りしてソロでオークを倒した人?」

 ノゲイラさんが頷く。


「すっごーーい! そんな風に見えないのにウェブくんすっごーーい」

 そういってアルルさんは俺の腕に絡みついてきてスイカが腕に当たる。


 顔が火照って耳まで熱くなってくる。


「そ、それほどでも……当たってます……」 


 俺は小声で言うのが精一杯それをからかうようにぐりぐりとスイカを押し付けてくる。

「え? なんて? なんて?」


「そんなにからかうな。ウェブが困ってるだろ?」

 ノゲイラさんがそう言うと「は~い」と返事をして俺の腕から手を離した。


 馬車に乗り込むとオールさんが手綱を握って俺とノゲイラさんとアルルさんは後ろに座る。


「1時間ほどで迷宮の入り口に着く。迷宮内はモンスターもでるが俺たちなら楽勝で勝てるレベルだから安心してくれ。ウェブはミノタウロスと戦うことだけを考えてくれていい」

「はい」


 1時間ほど馬車に揺られられると馬車が止まった。


 馬車から降りると石畳が地下に通じている道がみえる。

「あれが迷宮の入り口だ」

 ノゲイラさんが呟く。


「それじゃ行くぞ」

 ノゲイラさんの合図で迷宮の中に入っていく。


「オール頼む」

「ああ」

 魔術師のオールさんが杖を出す。何か呟く、すると杖が浮かび上がって行き先を示すかのように先が揺れる。

 迷宮探索様魔術マッピング。前にいたパーティでも魔術師が使っていた。確か一度通った道を杖が覚えていて行く先を示してくれるという奴だ。


 魔術師が使える高度な魔法らしい……


 数十分ほど歩くと「あーうー」という声が聞こえてくる。


 アルルさんがスイカを揺らして「私の出番ね!」と言って俺たちの前に立つ。


 目の前には腐った死体が歩いている。こんな迷宮などで死んでいったものは魂が迷宮が抜け出す事ができずにアンデットになることがある。


 アンデッドを消し去るには浄化するしかないから僧侶や神官の出番となる。


 アルルさんはスイカの前で手を組んで祈る。

「聖なる光よ。この者を浄化したまえ……」


 するとアンデッド達は恍惚の表情を浮かべて消え去っていく。


「ウェブくんも私に浄化されたい?」


 俺は心のなかで首を横に振り、穴にお金を入れるイメージを作り出して★★★★★を引くイメージをする。


 うおおおおおお★★★★★が引けた!! やっほーーーーい!!!


 そうすると、すーっと邪念が祓われ気持ちが落ち着く。

「先を急ぎましょう。先を俺は明日には報酬貰って帰らないと行けないので」


 俺がそう言うとちぇっと言って歩きだす。


 数時間歩くと休憩を取ることとなり、ノゲイラさんが俺に話しかけてくる。

「ウェブはなんで金が必要なんだ?」

「自分への投資ですよ」


「金を掛けると強くなるのか?」


「金を掛けると強くなるというか紙を引けば強くなるというか……とにかく強くなるために金が掛かるんですよ」


「じゃあ……今までいくら掛けたんだ?」

「えっと……金貨7枚分ぐらいですかね」


「7枚!! そんだけ掛けたら強くもなるわ」


「はい。おかげで★が全部(特)になりました!」

「き、金貨5枚で更に強くなるんだな」

「はい! 166連ですからね!」


「そ、そうか……」

 そう言うとノゲイラさんは俺から離れてオールさんの横に行き耳打ちをしている。聴覚強化(特)の俺はその話の断片だけ聞こえてきた。


「扉……供物……」


 扉? 供物なんのことだろう?


 こうして休憩が終わるとまた歩き出した。

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