第17話 ペナルティ

 ――翌朝


 準備よし! さてギルドに行くぞ。


 昨日の夜作った水っぽい雑草の水煮をもう一度作ってさっき食べてお腹も減ってない。もうそろそろギルドが開いてる時間だ。


 瞬間移動! 冒険者ギルド! と念じる。


 冒険者ギルドの正面玄関が目の前に現れる。昨日と同じように回りの人間がザワザワしている。それを無視してギルドの中に入っていき、受付に向かおうとした時だった。


「お前は昨日の……」

 話しかけられて振り返ると昨日俺がクエストを横取りした髭面のムキムキした人だった。


 ……一応謝っておいた方が良いんだろうか? でも報酬はこの人達に支払われる訳だし……


 そうか! もしかして、俺達の実力でクリアしたクエストじゃないから報酬はお前にやるよ的な何かか? それだったら銀貨30枚10連をゲットできる!!


「もしかして報酬の事ですか? 俺がクリアしたから報酬をくれるとか! 銀貨30枚!!」


「え?」

 その人は唖然とした表情をしている。


「だからぁ昨日自分がクエスト横取りしてクリアしちゃったから、この報酬をお前のものだぜみたいな感じでくれるのかなって」

「いや横取りは駄目だろ……」


「っち……」

 俺が舌打ちをすると一瞬ムッとした表情をみせるもすぐに表情を緩めて話しかけてくる。


「あのオークをお前さんソロでやったと聞いたが本当か?」


 俺は無表情で答える。

「そうですけどなにか?」

「俺はノゲイラ・フォルダム。時間あるか?」

「ありません。それじゃ」

 俺はそう言うとその場を立ち去りクエスト受付に向かう。


 時間なんてあるわけない、俺は今日クエストをこなしまくって金を集めまくらないと行けないんだ。こんなところであのおっさんと話しをしている暇なんてない。


 クエスト受付に立つと、昨日と同じ受付のお姉さんが俺の顔を見ると、その表情を曇らせ事務的に話しかけてくる。

「なんの用事ですか?」

 帰ってくれと言わんばかりに語気を強めて言われた。


 ちょっとイラッとしたが謙虚に話しかける。

「自分が受けられるクエストお願いします」


「ありません」


「な、なんでないんですか!俺には金がいるんです!」

「クエストを横取りしたペナルティとして10日間はクエストを受注できないという規則になってます」


「規則?」

「残念ですが、規則ですので」


 頭が真っ白になりそうになりながらもなんとか声をしぼり出す。


「そ、そんなクエスト回してくださいよぉ……お願いしますぅ……今日明日中にお金が必要なんですよぉぉ」

「規則ですので無理ですね。はい次の方」


「ちょっと! さっきから規則、規則って! 支配人、支配人呼んで下さいよ。あんたじゃ話しにならない!」


 お姉さんはため息をついて

「支配人は諸用でこちらには居ません」

「お願いしますよぉクエストを……」


 お姉さんはキッと俺を睨んで語気を強めてこういった。

「しつこいなぁ! 出入り禁止にしますよ!」

「そ、そんなぁ」


 そんな時、ポンポンと肩を叩かれる。

「うるさいな! 俺はクエストを受注しないと行けないんだよ!」


「お兄さん、お金に困ってるんでしょ?」

 俺が振り返ると俺がクエストを横取りしたおっさんが立っている。


「受付のお姉さん困ってるし、ちょっと時間いいかな?」

「時間はない」


 そういうと俺に耳打ちをしてくる。

「まあまあ落ち着いて。大金が入るいい話があるんだけどどうかな?」


「……どれぐらい?」

 俺がそう聞くとそのおっさんは指5本を見せる。


「銀貨50枚?」

 おっさんは首を横に振る。

「金貨?」

 俺がそう聞くとニコッと笑う。


「ウェブ・ステイだ。時間なら沢山ある話しを聞こう」


 俺はこう言って右手を差し出した。


「ノゲイラ・フォルダムだよろしく」

 ノゲイラと名乗ったおっさんと硬く握手を交わした。

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