第16話 家賃と食事
穴の周辺もすっかり暗くなっており、俺は家に戻るために瞬間移動と念じる。すると見慣れた貧乏長屋の真ん中に立っている。
必然的に昨日、火属性付与でやらかして、燃えてところどころ黒くなった木製の壁が目に飛び込んでくる。
これ大家に見つかったらマズイよな。金払えっていわれるよなぁ……そういやそろそろ家賃を払う日が近づいてきてる気がしないでもない。
えっとどこだっけ……
先日家に手紙が届いていたはず……少し探すと、床に落ちている紙を見つけ、そこには6日に家賃を受け取りに来ると書かれている。
えっと今日が5日だから6日は明日……
は?明日! 明日はまだフェス中だろうが!! 家賃に割く金なんてあるわけない!
火属性付与! 俺はそう念じてから、紙を指で弾く。するとボワッと紙は燃え上がってただの炭に成り果てる。
よし! これであの紙は俺の家に届いていないということなった。届いてない知らない払う金は無いとシラを切れば1週間ぐらいは伸ばしてくれるだろう。
明後日までは全ての金を穴に突っ込むことは絶対に譲れない。
家賃問題が一段落した頃、グーッと腹の虫が鳴る。
そういや今日昼飯食ってなかったな。ギルドに行ってアリステル家行って、オオトゥの街に行ったんだからなぁ食べる暇がなかった。
それに昼からずっと報酬を貰ってフェスを引くことしか頭に無かったから、今日のフェスを引き終わったから急にお腹が空いたんだろう。
さてと……台所に立つが目ぼしい食材はなにもない。
カビの生えたパンは朝全て食べてしまった。
ポンポンとズボンのポケットに手を突っ込む。当然、硬い物はなく穴からでてきた紙に手が触れる。
そりゃそうだ。金は全て穴の中に入れている。当然食材なんぞ買える金はない。だがしかし、俺には★★★★悪食+がある。いざとなれば土でも食えば腹は膨れる。でもやっぱり不味いから草ぐらいにしときたい。
ほんと悪食様々……土食っても雑草食ってもカビの生えたパンを食べてもお腹壊さないし、食費の削減ができる。あの紙を引く為の能力と言っても過言ではない。
ということで雑草を取りに外に出かける。
夜のおかげで、他人の目を気にせず草を集めることができる。適当にその辺生えてる雑草をおもむろに口の中に突っ込む。
にがぁぁぁぁ……美味くはねぇぇなぁ……食えないことはないけど……馬とかよく草くってるよなぁ……
そうだ!煮たり焼いたりしてみたらちょっとはマシな味になるんじゃないか? ということで適当に雑草を集めて家に持って帰る。
カマドに火を入れて水を入れた鍋に雑草をぶちこむ。
水が沸き立つのを待つ間、ポケットの中に手を入れると紙に触れる。もうなんの役にも立たない48枚の★の紙。
(特)の上がないからな……こんな紙持ってても仕方ない。
目の前は真っ赤に燃えるカマドの中の炭……
いらないか! もういらないよなこの紙! 燃やしちまえ!
48枚の紙をカマドに突っ込むと勢いよく燃え上がってちょうどその頃に茹で雑草が茹で上がる。
「いい感じになったな。銀貨144枚で煮た雑草♪」
鍋から雑草を皿に移して、湯だった雑草を口でフーフーと息を吐いて少し冷ます。冷めてきた頃見計らって一口……
水っぽ……苦みや渋みはないけど……やっぱ水っぽ……まあ生で食うよりマシだからフェスが終わるまでこれで我慢するしか無いか……
採ってきた雑草全て平らげると俺は床に横になって毛布を被って、明日の計画を練る。
ギルドに行っても報酬がいいクエストは実績が云々言われて回してくれないだろうな……アリステル家の事は他言無用って言われてるし、俺が暗黒教団の教祖やっつけたと言っても誰も信じないだろうし。
銀貨1枚とか2枚の安いクエストを千里眼と瞬間移動を駆使してこなせば明日フェス10連を引くぐらい稼げるかもしれん。それに掛けるしかないか……
こうして俺はそのまま眠りに落ちていった。
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