第7話 銀貨30枚
――翌朝
起きてカビの生えたパンを食べる。カビ臭い……悪食のおかげでお腹は壊さないはず。カビが生えていても土や雑草よりは美味い。
さすが食物。腐っても鯛。食べる為に作られたものはやっぱり美味い。
ぱっと窓の外を見ると太陽が登りそろそろギルドの開業時間の頃となっている。
そろそろ行くか! ということで俺は冒険者ギルドの出入り口を思い出し瞬間移動! と念じる。すると一瞬で目の前に両手を広げても通れるような大きな観音開きの扉があらわれる。
そこが冒険者ギルドの出入り口である。その後ろに木造で150人ぐらいは入れるような大きさの建物がある。ここで冒険者向けのクエストを斡旋してくれる。冒険者なら誰でも来たことのある場所それが冒険者ギルド。
さてと、高額クエストあるかなーっとギルドの中に入っていこうとすると。
「え?」
「さっきまでそこ人いなかったよね?」
「まさか……モンスターか?」
「どこからどうみても人間だろ……」
出入り口にいた人たちがザワザワとし始め、俺のことを指差している。聴覚も強化されている所為か俺に聞こえないつもりで言っているのだろうが丸聞こえ。
ちょっと照れて頭を掻きながらギルドの中に入っていき、クエスト受付に並ぶ。先客は3人で15分程で順番が回ってくる。
受付のお姉さんが事務的な感じで声を掛けてくる。
「こちらはクエスト受付です。ソロですか?パーティですか」
「ソロです。ちょっと早くお金が欲しくて……ここで一番報酬のいいクエストってなんですか?それやります」
「実績証明書の提示をお願いします」
あ……そいうや俺、学校卒業してからずっとガルフのパーティに入ってたからソロの実績証明書なんてもってない……
「す、すいません。ないです……でもガルフのパーティで剣士をしてました!」
俺がそう言うとお姉さんは眉間に皺を寄せフーっとため息をつく。
「え? ない……実績なし? 実績のないあなたに一番報酬のいいクエストは依頼できません」
「え? 俺、これでもガルフのパーティで剣士してました……今はソロだけど」
「ガルフさんのパーティは存じてますが、ソロとしての実績がない以上あなたにクエストを依頼することはできません。はい次の方」
そう言って受付のお姉さんはプイッとあっちを向く。
「え? 俺強いんです! めっちゃ強いんです」
「……次の方」
俺の後ろから野太い男の怒鳴り声で「どけよ!! 」と言われて肩を掴まれる。
「……すいません」
謝って掴まれた手を持って肩から外すとその男は俺のことを青い顔をして見ている。
「ノゲイラさん?」
その男は受付の人に名前を言われてハッとして受付と話を始めた。
実績とか……そんなことチマチマやってたら3日経っちまう……どうしよう……もう一つ上にランクアップできるチャンスなのに……
「銀貨30枚のクエストがありますがどうですか?」
!! 10連!!
さっきの男が勧められてるクエスト!!
そうだ! そいつより早く行って終わらせれば、10連できる上に俺の実績になるんじゃないか? クエスト横取りはどうかと思わるかもしんないけど、俺には時間がない。背に腹は代えられない!!
ということで聞き耳を立てる。
「クルシャの村の洞窟にオークが居着たようでして……ただのオークであればこれほどの報酬は用意しません。どうも亜種のようで普通のオークの一回りも二回りもの体の大きさに力も……ノゲイラさんのパーティぐらいのレベルじゃないと攻略できないと思われます」
「分かった。受けよう。ところでさっきの青年は?」
「すいません……ご迷惑をお掛けして……」
「い、いや……俺が全力で押してもビクとも……」
俺はその話の途中で瞬間移動をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます