第8話 ASD
私には知的障害の姉がいたため、障害にはそこそこ詳しかった。だからASDという診断名を聞かされてもすぐに理解できたし納得はした。
ASDとは発達障害の一つ。空気が読めなかったり、言葉を辞書通りの意味で捉えてしまい、そこにあるネガティブな印象をイメージできなかったりする、主にコミュニケーション上での障害。
例えば「これやっといて」と上司から仕事を頼まれたとしよう。そこで私は「何のためにやるんですか?」と問う。ここで多くの人は「そんな仕事に意味なんかない」というニュアンスを感じ取るそう。
だが当の本人、私からしたら「正確に行いたいため指示の目的を理解しておきたい」という意味で、つまるところ単純に疑問に思っているだけ、ということになる。
こういう言葉のすれ違い、捉え違いが続くと関係が悪化し、トラブルに繋がるのだ。
この障害を受け入れながら、私は再び歩き出すことを決めた。といってもすぐに何か行動できるわけではなかった。高校での出来事をきっかけに鬱障害を発症し、服薬治療を開始。少し回復した頃から某ハンバーガーチェーン店でアルバイトも始めた。
障害を理解しているからといって治せるものでもない。自分にはこういう特性があると周りに伝え、配慮を貰わなければ仕事することは出来なかった。
幸いなことにその店舗では私を受け入れてくれた。障害者としてではなく、一人の少し変わった女の子として、接してくれたのだ。
失敗も多かった。コミュニケーションがうまくとれず、たくさんの苦労をした。それでも挫けることなく過ごせたのは、みーちゃんが声をかけてくれたからだ。
『大丈夫』
その言葉は私の励みとなった。
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