第3話 変わった噂

 その噂を耳にしたのは、それから一か月も経たなかった。


 中学一年の夏。全くいなかった友達が片手で数えられるくらいになった頃のこと。

 新しくできたばかりの友達に、こう言われた。


「ねえこやりちゃん」

「なあに?」

「最近、教室に残って一人で喋ってるって本当?」


 表情が凍る。


「あー……さあ、なんかの間違い、じゃない……かな」


 ようやく声を絞りだせたものの、震えている。でも友達は「そうだよねー」と私の変化に気づいていないようだった。


 みーちゃんと話す時、私は声に出てしまう。放課後の教室でみーちゃんと話すのが毎日の楽しみだったが、こんなところでボロが出てしまうとは思わなかった。

 それ以来放課後にみーちゃんと話すのをやめた。そして脳内で話す練習をした。どうしても声にでてしまうようでうまくいかず、口に飴やガムなどをいれて練習した。


『そこまでして話そうとしなくていいのに』

(いやだ。みーちゃんと話していたい)


 一年の終わりになる頃には脳内で会話ができるようになり、私が一人で喋っているという噂もぴたりとなくなった。それによってみーちゃんとも会話ができ、友達からも奇異の目で見られることはなくなった。

 これで安心。私の中学生活もこれで安泰だ。そう思っていた。



 だが二年にあがった頃から、私の人生は狂い始めていく――

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