第82話 思わぬサプライズ

あの人たちはまとめて縛って騎士団に突き出した。

「君は…?」

仮面をつけて。

僕は暗殺者が着けていた仮面を使って自分だと思われないようにした。


仮面は

「もう私は必要としない。使うなら持っていけ。これはただのお面じゃない。どんな衝撃を与えても割れたりしない」

と言われ渡された。


敵だった人から貰うのは気が進まなかったがその人は僕を暖かい目で見ていた。

僕は大人しく受け取ることにした。


新聞にも僕の顔が公爵家との一件以降、大々的知られているため今回は仮面をつけて隠すことが出来た。

「では」

「待ってください!名前を…」

そんな言葉を遮って屋敷に戻った。


早朝5時あたり、僕は玄関で正座させられている。

無事に妹さんを救出し、親子共家に送り届けたのだが…

「何で起こしてくれなかったの?」

「そうだよ〜私も戦いたかったのに」

「カーシャ、そういうことではありません」

「もしものすごく強い相手だったらどうするつもりなんじゃ?」

「す、すみませんでした…」

怖い。


姉さん達は基本僕に対して強く叱ったりはしない。

その代わりに詰められる。


「夜中に見知らぬ人に起こされて驚いたよ」

「すみません」

「もし強い人だったらどうするつもりだったんじゃ?」

「すみません」

こんな感じで僕はただ謝ることしか出来なかった。


すみませんしか発さなくなった僕を見て、いたたまれなくなったのか

「今度からはちゃんと言うんだよ?」

と言われこの件は終わった。


後日、何故か騎士長さんがやって来た。

「本当にありがとう」

「頭を上げてください騎士長さん、僕はまだ何も状況が掴めていないのですが」


マナ姉さんとカーシャ姉さんと僕でこれから旅をする国の候補を決めている最中にいきなり騎士長さんが来た。


「実はカズヤ殿が助けてくれた家族は私の親戚の家族で。詰所では仮面を着けていたので誰か分からないと部下に言われたが、話を聞けばこの屋敷の人、つまりカズヤ殿が助けてくれたということになる。お間違いないな?」


「あまり公にしたくはなかったので仮面を着けてあの人たちを連れてきました」

「心より感謝する。それで困っていることがあれば私に助けようかと思うが…」

「困っていること…あ!それじゃあ僕の推薦人になってくれませんか?」


推薦人がアクアート家、メナスタシア国、カールさんであと1人必要だ。姉さん達も掛け合ってはくれているが中々いない。


「騎士長になると騎士爵の位が与えられるんですよね?」

「そうだな」

「なら引き受けて貰えませんか?」

騎士爵は唯一どこの派閥にも属さない。

これならアクアート寄りとも言われないから迷惑をかけずに済む。


「分かった。引き受けよう」

「ありがとうございます!」


思わぬサプライズに姉さん達も驚いてくれるかな?

姉さん達に頼りきりだったから最後の一人くらいは自分が掴んだ縁で達成させられた。




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