第74話本気でいきます!

「ここだ」

とムキムキの声の大きいおじさんに連れてこられたのはさっき騎士達が練習していた場所。

「ここなら思いきり戦えるぞ。あ、そういえば自己紹介がまだだったな。私はライアン・アクアートだ、よろしく」

「よろしくお願いします」

あれ…?さっきよりテンションが低い…?


「私も常に声を張り上げている訳では無い。娘と喋る時は元気なお父さんを演じているだけだ」

「こっちの方がエクシア姉さんも話しやすいと思いますが…」

「そうなのか…」

分かってなかったパターンなんだ。


「あなた、フラッドも準備出来たしそろそろ準備して」

「了解した」

「カズヤくん、ここの練習場は有能な魔法使いの結界が施されているから《本気》でやってもらって構わないわ」

「本気でいいんですか…?」

正直実力の7割くらいで様子見してから戦おうと思った。

変に暴れて壊しちゃったら申し訳ないし。


「もう、壊しちゃってもいいよ。兄さん、ぶっ倒しても文句言えないから。ね?兄さん」

「あ、ああ。本気でやってもらって構わない」

フラッドさんが襟元を掴まれている。

何があったんだろう?


離されたフラッドさんが僕に近寄る。

「さっきの俺達の話が聞かれていた。あいつ、空間魔法の応用とか言って僕が君にしたこともバレた」

どおりで。


「頑張ってカズヤくん。万が一壁壊しちゃっても大丈夫だから」

「魔剣は使ってもいいかな?」

「いいと思う。斬撃もお父さんにとって有効打になるから使えるなら試してみてもいいかも」

斬撃か…。できるかな、あの時の感覚は覚えてるけど上手くできるか分からない。


「両者!構え!」

1対2。相手が戦闘出来ない状態にするか、降参と言うまで。


「開始!」

「俺から行くぜ!」

フラッドさんがいきなり斬りかかってくる。

「くっ!」

受け止めるけど、この人ちゃんと一撃が重い。


「まだまだ!」

そこからエアーブロックを使って真上から剣を振り下ろす。

僕はシャドウバインドで避ける。

「ちっ!」


「俺のことも忘れてないか?」

「!」

すぐに多重詠唱で再度シャドウバインドを使う。

「ほう。多重詠唱か。久しぶりに見るな」

「アイスバレッド!」

「ぬん!」

ライアンさんは大剣でアイスバレッドを斬り落とした。

氷属性の中級魔法を斬り落とすって…

「大したことないな。カズヤ」


フラッドさん?ちょっと調子に乗ってます?

もう…でやってさっさと勝とう。

「ファイアバースト」

多重詠唱で×3だ。

「な…!ストーンウォール!」

そんなので防げるはずがない。


3つの炎の塊はフラッドさんに直撃する。

フラッドさんの着ている鎧が溶けるくらいにしてあるので死にはしないと思う。


「うわぁぁ!」

防げきれなかったファイアバーストは壁に直撃する。

貫通はしてないからセーフかな?


「あの壁が崩れそうになるほど…」

「だからカズヤくんは強いって言ってるじゃん」

「けど、あの人に勝てるかはまだ分からないわ」


「なかなかやるな」

「ストーンバレッド」 ×3

を出すがこれも大剣で止められる。

多重詠唱でもダメか。


「先祖代々武芸でこの地位まで上り詰めた。それに勝てるか…?」

確かにこの人は強い。エクシア姉さんも負けてないと思うがライアンさんの方が剣術で言えば1枚上手だと思う。


「くっ!」

大剣を受け止めると魔剣が壊れそうだ。

「どうした?これが本気か…?」

ちょっとムカっとした。

斬撃使ってみようかな…?

「足元ががら空きだぞ!」

僕は足元に目掛けて振ってきた大剣に乗る。


「わざとですよ…?」

カーシャ姉さんの回転蹴りを見よう見まねでやってみる。

すると壁まで突き飛ばしてしまった。


「体術まで…!」

「私もこれは初めて見た…いつの間に…」


魔剣に炎属性をこめて斬撃をしたらどうなるかな…?まぁ失敗してもいいからやろう。


あの時は魔剣に光属性をこめたけど炎もかっこいい。

斬撃は振り下ろした時に刃の形となった衝撃波を出す技だとお父さんは言っていた。


お父さんは魔剣に属性をこめずに発動していた。


だから成功するかは怪しい。


集中して…、空気を切り裂くように振り下ろす…。

すると辺り一帯に風を巻き起こし、炎の刃となった衝撃波はライアンさんに向けられる。


そしてその衝撃波は壁を貫通し、一部屋敷までも壊してしまったように見える。


「あなた!」

「やりすぎた…」

やばいムキになって…。これ認めて貰えないよ…。

「どうしよう…」

「大丈夫だよ。条件は達成したから。」

と抱きしめられる。


「本当に強くなったね。すごいかっこよかったよ」

エクシア姉さんは僕にだけ甘いような気がする。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る