第69話【視点別】気持ちを伝えたい/

「待って!」

私の声はカズヤくんに届くことなくドアが閉められた。


「はぁ…どうしよう」

これも全て私がちゃんと言ってれば元々解決していた話。

どこかのタイミングで話そう。そう思って何回も引き延ばしていた。


最初助けられた時は本当に命の恩人であり弟のように思っていた。

当時の私は身分差が激しすぎると思った。

事実、お父さんと会った時も追放された少年なんてふさわしくないと反対された。


それでも、どんどん好きになってしまった。

ちょっとドジで守りたくなっちゃう所とか、かと思えばかっこいい所を見せてきたり…

だから私は家族からの手紙を無視してこのまま家族と縁を切るつもりでいた。

カズヤくんとしか結婚しないと言って公爵令嬢という地位が剥奪、Zランクも下ろされることを覚悟していた。


それがカズヤくんがZランクになれるかもという話を聞いて思わず食いついてしまった。

もしかしたら親とも縁を切らず、しかもカズヤくんを認めて貰えるチャンスだと思って。


思えば冷静になれていなかった。

カズヤくんが迷ってることをお構いなしに私はカズヤくんを利用しようとした。


「謝ろう…」

そして好きと伝えよう。今度はちゃんと本当の気持ちを。


もう好きじゃないと言われるかもしれない。

でも恐れずに伝える。


~~~

僕は王都のある通りを歩いていた。

「よぉ!そこのガキ」

裏路地から3人出てきた。

「そんなかっこいい短剣ぶら下げてよぉー。ちょっとおじさん達に見してくれねぇか?」

「嫌です」

何でこんな時に…

こっちはメンタルが結構ダメージ受けてるのに。


「おら!よこ…せ」

シャドウバインドで即座におじさんの背後に入る。思えばこの魔法だいぶ練度が高くなった。

「な!…あ」

首元を思いきりチョップしたら気絶した。


「気絶しただけだから。おじさん達もこれより酷い目になりたくないならどっか行って」

「ひぃ!」

おじさん達はどっか行った。


今はただ1人になりたい。

そう思って歩く。

しばらく歩くと、

「噴水…」

広場に来ていた。

夜、誰もいない。

噴水の前に座り込んだ。


エクシア姉さん…。

背の高いかっこいい人と並んで歩いてるのを想像する。

「お似合いじゃん…」

僕とエクシア姉さんは最初から釣り合ってなかったんだよ。


「バカ…姉さんのバカ…!」

最初から期待なんてさせないでよ…!

「うぅ…」

初恋は上手くいかない。上手くいくのはラブコメだけだ。


「カズヤくん!」

遠くからそんな声が聞こえる。

「いた。探したよ」

と優しく声をかけられる。

「ねぇ?顔を上げて欲しいなー?」

「やだ」

これ以上ドキドキしたくない。


「隣座るね」

と言ってエクシア姉さんは隣に座る。

「そのまま耳だけ傾けてくれたら嬉しい。私ね、カズヤくんのことが大好き。愛してさえもいる」

突然の告白に僕は

「え…!?あ」

エクシア姉さんの方を見てしまう。

「やっと顔を上げてくれた。」

「いやこれは…」

とあたふたしていると、僕の頬を触って

「涙の跡ある。泣いてたの?」

「うん…」

「ごめん。私がちゃんと言ってればこんな思いせずに済んだのにね」


エクシア姉さんも今まで言わなかったのは僕達の関係にヒビが入ると思ったのだと思う。

「僕、エクシア姉さんが誰かに取られちゃうと思って…。えっと…それで…!」

上手く言えない。この気持ちをどう言えばいいのか。

「ゆっくりでいいからね」

と背中をさすられる。


どんだけ泣くんだよ僕。

「落ち着いた?」

「うん…」

「私もね、たまにヤキモチ妬いちゃうことあるんだ」

「そうなの…?」

「そうだよ。ミコトやカーシャと仲良くしてる所とか。まぁ知らない女の人と仲良くされるよりは全然いいと思うけど…。」

僕、エクシア姉さんの気持ちをちゃんと聞かずに外に出ていってしまった。

「私、カズヤくんにZランクの話がきてなかったら親と縁を切るつもりだった」

「え?」

「公爵令嬢という地位もカズヤくんと一緒にいるためなら捨てられる。Zランクも剥奪されるかもしれないけどそれでも構わない。

でもカズヤくんにZランクになれるチャンスがきて、もしかしたら親とも縁を切らずにカズヤくんを認めて貰えると思って…」

「それであんなに張り切っていたんだ」

「カズヤくんが迷ってるはずなのに…無理やり押し付けてしまってごめんなさい」

「僕も勝手に飛び出してごめんなさい」


「私はカズヤくんが今回の話を断ったとして、親から縁をに切られても言うことは変わらない。

大好き」

「僕も…大好き」

と言い合う。

恥ずかしすぎて顔を合わせられない。

「ねぇ?カズヤくん」

「何…?んっ!」

エクシア姉さんに口を塞がれる。

「絶対に何がなんでも、ずっとカズヤくんのそばにいるから安心してね」

「う、うん…」

「帰ろう?」

と手を繋いで戻る。

道中はずっと目を合わせられずただぎゅっと手を握りしめていただけだった。



《最近忙しくて投稿が出来ないことが多いです…。できるだけ投稿するように頑張ります!》

読んでいただきありがとうございましたm(*_ _)m









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