第65話【視点別】サトキチの奮闘

「サトキチ!お前はポーションもってこい!」

え…?

目の前には敵である悪魔。そして岩崖には倒れている仲間。

そして今から僕達はこいつと戦おうとしているのにゴーンは僕を逃げろと言うかのように言ってくる。

ゴーンはパーティーに誘ってくれた時からずっと兄貴として尊敬している。


だけど今の状況でこのようなことを言うのは正直意味が分からなかった。

「私達だけであいつを倒せるとは思えないわ。カイも動けないし」

「いえ、その方が後で有利になるかもしれません」

ギルドマスターも何を言っているんだ…?


僕はゴーンよりは弱いけど戦力にはなると自負している。

「いいから、早く行け!」

「いいのか?仲間を1人逃がして」

「お前ごとき俺らで十分だ」

「さぁ、サトキチ早く!」


ギルドマスターも強く言ってくるので僕は仕方なくブラックタイガーを召喚する。

「死なないでよ!」

「おう!」

僕はただ1人、城壁に向かって駆け抜ける。

周りには敵、騎士、倒れている者、矢が刺さっている者までいる。


これが戦場…と思ってしまう。

遠くではカズヤくん達が戦っている。

「え…?」

僕はカーシャさんが吹き飛ばされているところを見る。

あのドラゴンさんもだ。


一気に不安になった。

そしてなぜゴーンが僕にポーションを取りに行かせたのか分かったような気がする。

と思ったのだろう。

自分も、カズヤくん達も。

だから誰か復活させるのを手助けする人がいると考えたのだろう。


「はは、そこまで考えてるんか。すげぇや」

やっぱり僕の尊敬する人は変わらない。

僕を殺そうとしてくる人が何人かいたけど魔法やブラックタイガーで何とかした。

ここでいつもの僕なら休憩しているだろう。


城の中に入って僕はそのまま本部に行った。

「お前!何をしている!」

「ポーションを取りにきたのです」

「それは私の品だ!」

どうやらこの人は行商人らしい。

戦場で商売はどうかしているが、それも商人。己の利益のためなら恐れもしない。


「なら、本部の応急室に…」

とテントの中に入るが、棚の中身は空っぽ。

「もう、私達が使い切ってしまって…」

「どうだ?私の品を買うしかないんじゃないのか?」

「何レアですか?」

「1つ10万レアだ。これはどんな傷でも治せるからな」

上級ポーションは確かに高いが…破格すぎる。普通は5000だぞ?


「お?買えんのか?いいんだぞ?」

とニヤニヤしている。


僕はアイテムボックスからへそくりを出す。

100万レア。古代アイテムを買うためにコツコツ貯金していたが

「はい」

「本当にいいのか!?100万だぞ!?」

「僕は待っている人がいるんだ!その人達の命に比べたらこんなの安い!」

商人にやられたが問題ない。


これで助かる命があるんだと思えば何とも思わない。


僕は城壁を出る。

「へへへ、どこに行くんだ?」

「俺らと遊ばねぇか?」

まずい。騎士がやられてきているせいで敵が勢いを増している。

ブラックタイガーでもここをくぐり抜けるのは無理だ。


「そこをどけ!」

僕はファイアアローを放つ。

倒しても倒しても敵は前に立ちはだかる。


「早く行かないと…行けないんだ!」

待っている人がいる。

僕はもう一体召喚する。

「ゴーレム!」

「うわ!なんだこれ!?」

ゴーレムに注目が浴びているあいだに颯爽と駆け抜ける。

ゴーレムはどんどん倒しているみたい。


「はぁ…」

魔力を困窮している。

その瞬間、矢が僕の方に向かって放たれる。

僕は魔力切れしたため守れなかった。

「痛ったぁ!」

肩に突き刺さる。


ブラックタイガーが心配そうにしている。

「大丈夫。早く行こう」

帰ってくるとそこは酷い状況だった。

立っているのはカズヤくんだけ。

今も悪魔と戦っている。

しかも互角みたいだ。


本当に彼はすごい。

早すぎて何をしているのか分からない。

僕は近くで倒れているエクシアさんに目が言った。

「エクシアさん!」

見ると、心臓に穴が空いている。

でも辛うじて息はしている。

触れるとすごい量の魔力を感じる。


この人、全身に魔力を回して耐えているのか…

この人も異常なことをする。

「すぐ楽になりますからね」

上級ポーションを流し込む。

すると、目が開いた。


「エクシアさん!」

「うん…。サトキチくん」

でも心臓の穴は治らない。なのに立ち上がる。すると光が眩しくて目を瞑る。

「これでよし」

心臓の穴が塞がっている。

「え?なんで…?」

「これは光属性のヒールを範囲を一点に応用させてみたの。体力がなかったみたいだね」

意味が分からない。

ものすごい音が響く。


「あれ…!」

見ると巨大な何かが、カズヤくんの前に立ちはだかっていた。

「ちょ、エクシアさん!?」

エクシアさんは直ぐに落ちていた大剣を拾って走り出した。

「ありがとう。他の人も回復してあげて」

「無茶ですよ!1人で行くのは」

「カズヤくんが1人で頑張ってたんだから私はあの人を守るなら無茶でも何でもする」

ついて行くとカズヤくんが倒れている。エクシアさんに上級ポーションを渡す。


その後僕は直ぐにブラックタイガーに乗り、

他の人を回復させに行く。

ミコトさん、マナさん、カーシャさん、ドラゴンさんと順当に回復させに行く。

すると、皆

「ありがとう。行くよ」

とだけ言い残して走り出す。


倒れているカズヤくんを一瞬で移動させ、その後上級魔法をいくつも放つ人もいれば

僕が契約しているよりも遥かに強そうな魔物を3体も召喚している人もいる。

この人達は強い。


悪魔とあの時のカズヤくんは強すぎたけどこの人達も全く劣っていない。

何しろ、カズヤくんを殺そうとしたあの巨人を粉々にしようとする殺意さえも見えてくる。


その後カイにも飲ませると元気そうになる。

良かった…みんな手遅れになる前に助けれている。

「ゴーン!」

「お…やっと来たか」

「今すぐ回復するね」

上級ポーションを飲ませる。

「ふぅ…これは俺の戦略勝ちか?」

「そうかもしれませんね…」

「ギルドマスターも…!」

この人もボロボロになっている。

それとマーレにも上級ポーションを飲ませる。


「あんた…遅すぎるわよ!」

「ごめん、頑張ってブラックタイガーを走らせたんだけど…」

「ちょ、あんた!」

とマーレが僕の背中を見て驚く。

「肩に矢が刺さっているじゃない!」

「これは…その…」

「本当だ!」

「…」コクリ

「あなたも相当頑張りましたね」


「はい。まぁゴーン達と比べると楽な仕事だったかもしれませんが」

「早く!手当てするわよ!」

と言って急に矢を引っこ抜く。

ものすごく痛い。

「急に抜かないでよ」

「う、うるさい!早くポーション飲みなさい!」

見ると、少し泣いてるように見えるのは…疲れているからか。


「どう?穴塞がった?」

「血は止まったけど塞がってないわね…手当てしないといけないわ」

「そうか。でもそれもすぐ出来そうだぞ」

「え?」

「うわぁぁぁ!」

と言ってあの巨人は炎に包まれた。


「あの人達も容赦ないですね」

とカールさんは少し笑う。



《マーレは誰が好きなのか…?察しのいい人は分かるはず…。次回はエクシア視点があって途中からカズヤ視点に戻ります!

今後としては戦闘場面は書きづらいのもあって減ると思います。それでも主人公はしっかり成り上がらせるので安心してください!》


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