第59話本当の目的
「戻った」
「そちらの方々は?」
髭を生やしたおじさんに言われる。この人も鎧を着ていて強そうに見える。
周りにも鎧を着たいかにも騎士という人がいる。
「わしは子供を連れて来いなどと言ってはおらんが?」
怖いなーこの人。
僕は真っ直ぐ背筋を伸ばしたまま、周りの強面のおじさん達に囲まれて何も言えず、動けずいた。
僕はありったけの勇気を振り絞って、
「そうですよね〜。じゃあ僕は…」
と帰ろうとしたのをカールさんに
「私が彼を連れてきたのです。いいお勉強になるかと。聡明な人なのでただの子供ではありません」
と首根っこを掴まられる。
僕は心底帰りたかったが大人しくいることになった。あの時カールさんに誘われたのが嬉しくてついて行ったのがまずかった。姉さんといれば良かった。
そんなことを後悔するなか、
「それでは現状報告を頼む」
と髭を生やしておじさんはそれぞれの騎士達の状況説明を聞く。
「南と西はこのまま防衛。門の開閉はできるだけ素早くすること。また入ってきた敵に対する戦力も用意しておくように」
「「了解」」
「それで問題は北門だな。報告を」
「はい。我々第三部隊は、こちらにいるカール殿達の外側からの奇襲のおかげで敵が3割近く減少。負傷者も運び出すことができ、今手当てを受けている最中です」
3割も減っていたのか…
僕は襲われるばっかりで数なんて数えてなかった。
多分だいたいは姉さん達か、ゴーンさんあたりで減ったと思った。
「おお、そうか。それは朗報だな。勇者の友は我が国の宝だ」
「それは外部には言わないお約束ですよ?」
「それはすまない。」
「この子には言って大丈夫ですよ。信頼があるし、私より強いので」
「え?」
勇者の友っていうのも気になったけど
「この小僧がか?」
「ええ。現段階でこの強さですから、将来はもっと強くなると思いますよ?勇者くらいには」
「ちょ、ちょっと待ってください!僕そんなに強くないですよ!?」
過大評価すぎる。カールさんに勝てるなんて到底思えない。
「そもそもその歳でカール殿と一緒にいるくらいだからな…本来なら士官学校に通うくらいの年齢。あいつらよりは強いとは思うが…」
「まぁ、その話は後で彼としてください」
「ああ、すまない」
え?僕とあのおじさん2人で話すの?
嫌だ!怖い!
と心の中で叫びつつ、東門の報告を聞く。
状況はだいぶ大変なものらしい。
「私達は東門にカール殿達を配備することを騎士長にお願いしたく思います」
「ふぅむ…北門は安定した防衛は可能になったから…。よし、それではカール殿。東門の防衛を頼んでも良いか?」
この人騎士長だったんだ。まぁ、見た感じそんな気がしたけど。
「分かりました。私達は東門の防衛に徹します」
「それで次に…ウエスト家、イースト家の動向なのだが…」
と騎士長が話し始める。
どうやら貴族達はこの都市から北の方に行ったらしい。
何か祠が何とか…らしいけど下っ端が言うことだから詳しくの状況は分からない。
あの人達は一体何をするために…?
「何か強力な古代アイテムを探してる…?」
「うん?カズヤくん。それはどういうことだい?」
とカールさんが言うせいで強面の騎士達が僕の方を向く。
「えっーと、わざわざあの人達が動くのは何かそこに強力な物があると確信があるからなんじゃないかって思って…例えば、それを使えば敵を滅ぼせるようなアイテムとか…」
「ほう、なるほど。でも、北の方に古代アイテムが眠っている情報なんて我々にはないぞ?国が知らないのにあいつらが知っているとは思えん」
「我々は何か見落としてるのではないか?」
ビィンセントさんが言う。
「カール殿、何か分かるか」
「この先にあるものは…」
とカールさんが地図にある山の方をなぞっていく。
「これはもしかして…」
「何か分かったのか?」
「まずいですね…。これは下手したら国が滅びます」
「「「「「!?」」」」」
その場にいる誰もが衝撃を受けた。
「どういうことだ!」
「この山奥にかつて私達が封印した魔王殺しの悪魔が眠っています」
「魔王殺しの悪魔だと!?」
「あの勇者でさえ倒せなかった!?」
「私はてっきりお話の中の人物だと思っていたが…」
「実際いますよ。あれは嘘ではありません。」
「魔王殺しの悪魔って何?」
「魔王を自分の言いなりにしてこの世に混乱をもたらした四天王、元凶でもあるんですよ」
お父さんが言っていた…?
それってやばいんじゃあ…
「今すぐこの山に向かうよう、第5部隊を作る。各部隊から50名。本部にいるのも含めて合計300名出撃の準備を!」
「分かりました!各所連絡してまいります!」
騎士長の隣にいた騎士がテントを出る。
「中央軍をさらに配備する!ガーデン公爵家、ローレル伯爵家等の軍にも要請を出せ!できるだけ人数を集めろ!」
「は!」
お父さんでも倒せなかった相手と戦えるのか。それでも敵は待ってはくれないのだと思った。
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