第54話【視点別】ミコトは独り占めしたい
「明日はよろしくお願いします」
「矢が刺さってた言うのにピンピンしてるわね。私はマーレ、よろしく」
「僕はサトキチです」
「…」
カイさんは無口みたいだ。
「よし、みんな今日はしっかり休んでおこう。明日から馬車、そして戦いが始まる」
宿はクリスさんが用意してくれた王都で1番の宿らしい。
「しかし、1部屋足りぬ…」
レッドは召喚獣扱いになっていたらしい。
けどレッドは1人で寝たいと思うから…
「姉さん達、誰かの部屋に入れてくれない?」
「「「「え?」」」」
「まさか、カズヤの方から言ってくるなんて…」
「なら、私と…」
「いや、マナは昨日寝たのだろう?ここは、私が…」
結局決まったのは…
~~~~~~~
「カズヤ〜」
「カーシャ、これはじゃんけんで決めたことです。私達は清く諦めましょう」
「そんな〜」
「それじゃあおやすみ。姉さんたち」
わらわ達は部屋にいる。
「ミコト姉さん、先お風呂入る?」
「そうじゃな。先入らせてもらうぞ」
わらわが運良くじゃんけんで勝ってしまった。今日あったことばかりに少々気まづく感じる。
「な、なぁ」
「うん?」
「怪我は大丈夫か?」
「うん!ポーションのおかげで、全然痛くないよ!」
「そうか…」
わらわは一瞬躊躇って、
「一緒に入らぬか?」
「え?」
「いい景色じゃな」
「う、うん。そうだね」
タオルに身を包んではおるが、主様はそういうことに興味のあるお年頃。平然を装うとしておるがあたふたしていてかわいい。
「わらわの膝の上に乗るか?」
「うん、乗る」
「素直じゃな」
と微笑む。さっきの気まづさはもうどこにもない。
「ここからの眺めはいいが、少し風情に欠けるのう」
「ミコト姉さんの故郷には温泉があったりするの?」
「あるぞ。ここの露天風呂とは違って、地下から掘ったお湯を引いておる」
「久しぶりに入ってみたいな〜」
「わらわの国に行った時は入ろうな。じゃあ、わらわは体を洗う。一緒に洗うか?」
「そ、それは…遠慮しておきます!」
「ふふ、分かった」
お風呂を上がって一段落つき、明日の備えをする。
「うーんお父さんの剣を使うか…ミスリルの剣を使うか…」
「ミスリルはしまっておいていいのではないか?」
「いいの?せっかくミコト姉さんからもらったものだから大切に使いたいけど…」
全く優しいやつじゃ。
「ミスリルはいくつもある。それよりお父さんの形見を使った方が喜ぶと思うぞ」
「そうだね。約束したもんね」
他にもいくつか地図や、水、食料はある程度入れてあるがカールが持っていくと言っておった。
「魔導書はどうした?」
「エクシア姉さんとマナ姉さんに貸したよ。もしかしたらできるかもって言ってたから。けど、理解するのも難しいって」
「そうか」
最上級だからな。適性はあると言えど習得するとは別の話。
「ミコト姉さんは何してるの?お札…?」
「ああ、強力な妖術を使う時はこれを媒介にするのじゃよ」
「へぇー」
「妖力をストックする意味でもあるな」
いざとなったら使う。10枚は予備で持っていく。
「そろそろ、寝るか?」
「うん!」
添い寝をするのは1週間ぶりくらいだ。
「抱きしめても良いか?」
「いいよ」
少しいい匂いがする。
「どうした?嫌じゃった?」
「ううん。ただ…ちょっと怖くて」
「何が怖いのじゃ?」
「戦う時に死はつきものだって分かってるけど、今日目の当たりにした時に足がすくんじゃって…本当に僕戦えるのかなって」
まだ15歳。本当なら貴族学校や士官学校に入る歳だ。それが戦争に身を投じようとしている。
「大丈夫じゃ。死は確かに怖い。それでもきちんと向き合おうとしてることはすごいことじゃ」
「そうかな…」
「そうじゃ。誰だって最初は思う。でも、自分が守りたいもののために戦うと考えればわらわは少し気が楽になる」
守りたいものは主様やカーシャ達だな。
そのためにわらわは戦う。
昔もこういう戦争はどこかしらで必ず起きてた。わらわはその時、戦いなど無意味と考えて要請を蹴っておった。
今では守りたいものが出来た。
「じゃあ、姉さん達を守るために頑張るよ」
「それは嬉しいな。けど、わらわ達の近くにいるのじゃぞ?代償魔法も使ってはならぬ。よいな?」
「うん。絶対使わないよ。迷惑かけたくないし」
「偉い子じゃな」
主様は周りを気遣う。そこがわらわの惹かれた所でもある。権力者達はみんな己の利益しか見えておらん。
「手繋いで寝るか?そうすると安心して眠れると我の国で聞いた事がある」
「うん」
と照れながら繋ぐ。
別にそんな話はないのじゃがな。
独り占めしたくなってしまった。
「お休み。ミコト姉さん」
「ああ、お休み」
わらわは主様を絶対守る。何があろうと。
そう心に誓った。
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