第49話バイバイ、お父さん

「うぅ…」

僕は言葉に表せれない感情をどうすればいいのか分からず泣いてしまっていた。


流石にもう遅いからみんな寝ているだろう。

この部屋はベッドが5つ置けて、それと残りのスペースも広い。客人用らしい。水道まである。


早く寝よう。こんなところ見られたら…

「お帰りなさい」

「マナ姉さん…」

「おやおや、どうしました?涙出てるじゃないですか」

と僕の頬を触る。


「何で起きてるの…?」

「それはカズヤを待つためですよ。エクシアも途中まで起きてましたが、私がカズヤがくるまで起きてると言うと、任せたと言って寝てしまいました」

「そうなんだ…」

「何か嫌なことがありましたか?それともカズヤのお父さんに何か言われたり…」

「いや違う。ただ…」


僕はマナ姉さんを抱きしめてしまう。

身長差なんて今は気にしない。

「お父さんから任せられて不安しかないんだ」

僕は早速マナ姉さんに相談する。お父さんに言われたことをちゃんと守る。

1人で抱え込まない。


「大丈夫です。私達がいます。カズヤは自分らしくいてください。元気でいてくれたら私達も嬉しいですから」

「自分らしく…」

「無理に頑張ろうとしなくていいんですよ」

「うん、分かった」

「よしよし、それじゃあ寝ましょう。何かあったら呼んでくだ…」


僕はマナ姉さんの服の裾を掴む。

「一緒に寝て欲しいな…」

自分で恥ずかしいことを言ってるのは分かってる。でも、今は誰か隣にいて欲しい。

「わ、分かりました。私で良ければ。私の隣来てください」


僕は言われた通り隣に行く。

「洞窟は涼しいですからね。ちゃんと布団を被りましょう」

「うん」

「じゃあ、ぎゅ、ギューしてあげますね」

「え?」

途端抱きしめられる。

「さっきの仕返しです」

と言ってるマナ姉さんの心臓の鼓動は2つのお山を通り越して僕のところまで聞こえる。


「マナ姉さんちょっと心臓の鼓動早いよ?」

「そ、そんなわけありません!」

「ふふ、嘘だよ」

「もう…びっくりさせないでください。寝ますよ」


マナ姉さんありがとう。直接言うのは恥ずかしいからやめておくね。


翌日、

「そろそろ時間か」

僕達は昨日のお墓まで来ていた。

「最後にお前ら」

「私達ですか?」

「お、お父さん!?」

急にお父さんが姉さん達に頭を下げる。


「どうかこいつをお願いします」


僕を1人にするのは心配なのだろう。

「分かりました。任せてください」

「後、お前らはカズヤだけじゃなくてその強さを他の人のためにも使って欲しい。俺からの最後のお願いだ」

「ほう。承知した」

「私もあなたのおかげで気がつけました。力は何のためにあるのかこれから考えていこうと思います」

とエクシア姉さんは言う。

「ああ」

「まぁ私達にはレッドもいるから大丈夫だよ」

「レッド。こいつらを頼む」

「言われなくても分かっている。安心しろ」

「頼もしいな」


お父さんは僕の方を向く。

これが本当のお別れだ。

「おいおい、泣くな」

「だって…!」

もう会えない。せっかく会えたのに…


「もう剣も魔導書もあげた。俺がお前に何かしてやれただけで嬉しい。カスミは俺が空から見守っておく。もちろんお前もな。だから胸を張って生きろ」

「うん…!」

「それは俺が大事にしていた剣だ。大切にしてくれ。後、そばにいてやれなくてごめんな…!」

お互い顔が涙でぐちゃぐちゃだ。それを隠すように抱きしめ合う。


「僕は大丈夫だよお父さん。だから空から見守ってて」

「ああ、絶対だ」

すると、お父さんの体が少しずつ光に変わっていく。


「それじゃあ元気でな」

「お父さん!僕!勇者のようにはなれないかもしれないけど立派な人になるから!剣も大事にする!だから安心してね!」


するといつものくしゃっとして笑顔で

「ああ」

と言って光が空に向かっていった。


「バイバイ、お父さん」


この思い出は一生忘れない。

またいつか会える日まで。僕はこの世界での土産話をたくさん持っていくよ。




《次回タクヤ視点ともう1人の視点があります。お楽しみに(*^^*)》

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