第42話お父さんは姉さん達にお怒りです

剣を思い切り抜くとその瞬間何かが光った。

「うわ!」

僕は驚いて尻もちをつく。

すると、光の中から人の姿が見えた。


「おっと、転生者が俺に会いに来たか?一体どこのどいつだ?」

「お父さん…」

見た目もあの頃のままだった。

「お父さん?俺は子供なんてこの世界で…」

「白鳥和也だよ。お父さん」

「はーーーーーーー!?」


すると、お父さんは僕を高く抱きかかえ、

「お前…何でここにいるんだよ…。俺はもう1日しか生きれないんだぞ…」

強く抱きしめられた。

「もう、僕会えないって思ってたから…」

「バカ」

2人して泣いた。


落ち着いた後、お父さんは僕を降ろして、

「レッド、お前がこいつを連れてきてくれたんだな。ありがとう」

「我のおかげではない。たまたまだ」

「そっか。それでそちらにいるお嬢さん方は?」

「えっと…その〜」

「仲間っていうか〜カズヤくんのお姉ちゃんをやってます」


そこから姉さん達が自己紹介をしていく。

「妖狐族にエルフ族もいるのか。お前…一体何をしたんだ?」

「な、何もしてないよ」

「まぁ聞かないで置いてあげるよ。」


お父さんはさっき抜いた剣を拾い、横に軽く振る動作をする。

何をしたのか分からずにいると、そばにあった木が横に倒れた。


「わらわの目では追えんかったぞ。しかも木から少し離れておるのに…」


「ちょっと訛ったかな〜。まぁいいや、それじゃあカズヤ。お前が何でここにいるか、ここまでどこで生きてきたのかお父さんに教えてくれないか?」


みんなで丸太に座り、僕は事故死でこの世界に来たことを話した。

「そっか。母さんには申し訳ないな」

「だからお父さんはお母さんのこと見守っておいて欲しいんだ」

「分かってる。神様にお願いするよ。会えるかどうかも分からないけど」


それから僕はイースト家に生まれ、つい最近までは代償魔法を使って教会にいた所まで話した。最初は笑顔で聞いてくれていたが、

何故かお父さんの表情が曇り始めた。

今思えば正直に話しすぎて暗い話になったかなと思った。


「お父さん?大丈夫?どこか具合が悪いの?」

「いや、大丈夫だ。ただ…」

お父さんは立ち上がったと思ったら一瞬姿を見失った。


「…!」

「おい、お前ら。俺の息子に何をしてくれている。」

剣の先をエクシア姉さんに向ける。

「お、お父さん?どうしたの?」

「おいタクヤ一旦落ち着け」

「いや、こいつらは俺の息子を見殺しにしようとした。おい、お嬢さん方。一体どう考えたら悪環境の家に俺の息子を放置しようっていう考えになるんだ?挙句の果てに代償魔法まで使わせて、そこまで追い込んだのは自分らだって分かってるよな?」


「ちょっと落ち着いてお父さん。代償魔法使ったのは僕自身だし…」

「カズヤ。これはお父さんとお嬢さんの間の話だ」

すると姉さん達が頭を下げる。


「申し訳ありません。全ては私の考えが甘かったことから始まったところです」

「いや1人のせいではない。これはお前ら4人の不徳だ。最強とかほざいてるかもしれないが俺が1回相手してやる」


少し森を抜けたところは開けた草もない大地だけが広がっている。


「4人まとめてかかってこい。レッド、カズヤを爆風から守ってやれ」

「分かった」

「4人ともカズヤのお父さんだからって手加減しなくていいぞ。本気を出して来い」

「分かりました」


姉さん達は覚悟を決めたように見えた。

お父さんがやりすぎないか心配だ。


「大丈夫だカズヤ。タクヤはただこれからカズヤと一緒にいれる力があるかどうか判断するだけだから心配するな」

「うん」

レッドさんの言葉で少し安心した。

姉さん達全員だったらもしかしたら勇者だったお父さんに勝てるかもしれないとそう思った。









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