第31話【視点別】マナの誓い
お別れする時、いつもと変わらずニコニコしていたカズヤが
「行かないでよ!」
と泣きながら馬車に乗ろうとするエクシアに言っていた。
それでもカズヤを置いて私達は去ってしまった。
馬車からカズヤを見た時、泣き崩れていた。
今すぐにでも降りて抱きしめてあげたいと思った気持ちは正しかった。
あの時がカズヤの人生をまた別のものにできた最後のチャンスだったのだと思うと胸が苦しくなる。
私は王国に戻ってからは色んな事に挑戦した。
父には「より良い国にできたらまた旅をさせて欲しい。私には忠誠を誓った主がいる」
と話した。
最初驚いていたが今までのことを話したら母は納得してくれた。
「その主は1人にして本当に大丈夫なの?」
と聞かれた。
「多分大丈夫」何も知らない私はそう言った。
私はより良い国にするためにまず学校というものを作った。
カズヤは教える人が居る施設があればいいなとボヤいていた。
他国の学園を参考に貴族ももちろんいるが平民でも十分に受け入れられるようにした。
エルフは産まれてくる数も少ないので子供は大切にしないといけない。
すると、貴族の子が威張っていたのが剣技で平民の子にボコボコにされて大人しくなったとか身分関係なく交流していると聞いて嬉しかった。
もちろん計算、読み書き、後様々な魔法も教えているため優秀な子が多く生まれた。
次に税の整理を行った。国に渡す税金も自分の懐にいれている愚か者は即刻地位を下げ、財産も一部没収した。
その分不要だと感じた税をなくすことは難しかったけど減税はできた。
すると市民から大いに崇められる結果となってしまった。
兄には「やりすぎだ」
姉には「変わったわね」
と言われた。
姉の言葉を聞いた時、これならカズヤにも成長した姿を見せられると思った。
他にも外交とかお兄さん達の活動の補助を行った。
そしてそろそろカズヤに会いに行こうと考えてた時、
光の鳥が来た。内容はエクシアがダンジョンでボロボロになったカズヤくんを助けたことだった。光の鳥がここに来るのに1ヶ月はかかるので1ヶ月前のことだろう。
私は誰のせいでそんなことに、と思っていたのも束の間、夜になると大きな光の鳥が来た。
大きいのは速く飛べるが使う魔力が膨大だから滅多に使うことはないとされている。
巻き付けてあった手紙を読む。
緊急
カズヤくんが代償魔法を使って倒れた。早く来て!
と書いてあった。私は慌てて荷物の準備をした。
明日出ていく予定だったけど急いで父の部屋に行く。
「お父さん!」
父は書斎で作業をしていた。
「どうしたんだ?こんな夜中に」
「カズヤが!死んじゃう!」
取り乱していた私を父は落ち着かせてくれた。 私は状況を伝えると
「直ぐに行ってあげなさい」
と言われた。
「私、この国をより良くできたかな?」
旅立つ前にこれだけは聞いておきたかった。
「当たり前だ。お前の活躍は色んなところから聞いている。十分だ。」
嬉しかった。父に初めて認めて貰えたような気がした。
「お前の忠誠を誓った相手は人間か?」
と聞かれた。はいと答えると
「人間が代償魔法なんて使うとどうなるかわからん。もし回復して、お前が彼の一生を添い遂げる気でいるのなら80年やる。彼の支えになってあげなさい。エルフと人間が結ばれるのはもう何百年も前のことだから…」
「え!?結ばれるって…まだそういう関係では…」
と言うと笑われた。
「まぁ良い。でも何年後かまでにはそのカズヤという人に会わせてくれ」
と言われた。
これが父と最後の会話だった。
私はありったけ魔力を空間魔法の最上位魔法、転移に使った。
「え!?マナ!?」
「お久しぶりですエクシア」
驚かれはしたが直ぐに状況を説明してくれた。倒れたから1日、まだ目が覚めていないらしい。
ギルドマスターという人は
「原因は君達にあるよ」
と言われた。
「1つは彼の家庭環境だ。君たちは彼をあの辺境伯夫妻から離れさせずに見捨てたこと。誰かが彼を外に出してあげればあそこまでの精神状態にはならなかった」
「精神状態なんて何を根拠に…?」
ギルドマスターは生まれつきの特殊魔法で人の心が分かるらしい。
「2つ目は彼を1人にさせたことだ。家族も敵なのに味方は誰1人居なくなった。その後久しぶりに君達に会えば劣等感を感じさせてくる。」
「私のせいだ」
ここで馬鹿な私はようやく気づいた。
1人が辛いなんて分かってるのに…泣き崩れていたカズヤを1人にしてしまった。
「マナ、あなたのせいじゃない」
そう言ってくれたけど私が1人で王国に戻れば、3人は別にカズヤと離れる必要は元からなかった。
自立なんて…何を言っているんだ私は。
とっくにできていたはずなのに年齢だけで見てしまった。
その後カーシャも来た。
わけをミコトが話すと
「カズヤは大丈夫。回復したら一緒に謝ろう」
と言ってくれた。
2日後、カズヤが目を覚ました。
嬉しかった。生きてて良かった。祈りが届いて良かった。
そしていてもたってもいられなかった私達はドアのそばで聞き耳を立てていると、
「何をしているんですか君達?」
ギルドマスターに見つかった。
その後ようやくカズヤと喋ることができた。
そして自分は前世を知っていると言われた。
衝撃的すぎて何も言えなかった。でも知識が子供にしてはありすぎたりしていたので無理やり納得した。
そして本当の気持ちを教えてくれた。
「何で僕を置いていったの?普通に考えればあの家に僕を置いていこうと考えないよね…?」
胸が痛かった。でもそれ以上にカズヤは辛かったのだと思った。
私達はカズヤを大切に思っていると伝え抱きしめた。
涙でぐちゃぐちゃな顔を見せたくないと私の胸に顔を寄せる。
本当に愛おしく思えた。ずっとこの人といる。もう絶対悲しませたり、離したりしないと私はこころの中で誓った。
~~~~~~~~
「明日は早朝に起きてチェックしに行く?」
「何をですか?」
「もちろん、⚫⚫していないかだよ?」
「え!?」
私はこの人達をこれから支えていくと心に決めた。
これから起きる楽しい日常を誰かに壊されないように。
《2話分の量になってしまったので次回は明日書きます。》
追記:だいぶ省いた部分があるので内容が分かりづらい所があれば教えてください。加筆します
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