第28話前世のこと

「え…」

正直言葉が出なかった。姉さん達が全員揃って見るのは久しぶりだった。

「涙が出てるよ。」

「え?」

カールさんに言われて気づいた。


「ほら、君の姉さん達の前で泣いてたらダメだよ。じゃあ私は勢いよく開けて壊れたドアを修理してくるね」

と一瞬で去っていった。


「姉さん達、久しぶり」

「久しぶりだね。カズヤ」

「お久しぶりです。カズヤ」

カーシャ姉さんは昔と雰囲気は変わらないけどマナ姉さんは立ち振る舞いからして昔と全然違う。研究者みたいな格好ではなくお嬢様みたいな服装だった。


「とりあえずそこに椅子があるから座ってよ」

ベッドの横に4つの椅子が並べられているのに気づいた。

カールさんは最初からこうなることを知っていたのかもしれない。


4人が座ったところで僕は口を開けた。

「どこから聞いていたの?」と。


「ドア越しだったからあまり聞こえなかったんじゃ」

「そっか。じゃあ改めて僕のことを話すよ。けどその前に…


何で2年前僕をあの家に置いていったの?」

「…!」


先に姉さん達の考えを知りたい。

「それは…」

エクシア姉さんが言いかけたところでマナ姉さんが

「それは私のせいです。私が、私達のせいでカズヤの成長を止めてしまってるのではないかって」

僕は少し拍子抜けした。でもよくよく考えたらそれは少し感じた。

対して戦闘に参加しなくても獲物はエクシア姉さんとカーシャ姉さんが倒してくれていた。


マナ姉さんに教えて貰ったことをそのまま実験に生かすなんてこともあった。


そう考えるとマナ姉さんの考えは正しかったのかもしれない。

「それに、私とカーシャはそれぞれ国に

一時的に戻るよう手紙が来ていたので」

「そうなんだ。じゃああの時に言っていたことは嘘ってこと?」

最北の国で最先端の技術を学ぶことも様々な魔物をティムすることも。


「それは…申し訳ありません」

「別に大丈夫だよ。そう言わないと僕が引き止めると思ったんでしょ?」

「はい」

事実、帰って欲しくないとあの頃の僕は言っていたと思う。

それくらい姉さん達が好きだったから。


「じゃあ僕の番だね。姉さん達に本当の僕について話すよ」

「本当の僕?どういう意味?」

カーシャ姉さんに聞かれる。


「実は僕、前世を知っているんだ」

4人はびっくりしていた。


それから僕はカールさんに話したことをそのまま話した。


「そうなんだ…」

「カズヤが頭がいい理由は本を読んでいたからではなかったのですね」

「うん。大半は前世の知識を使ってるよ」

「計算も早かった理由が分かった気がする」

とミコト姉さんは少し理解してくれた。


まだ僕の本当の気持ちまでは言っていない。

これを言ったら姉さん達とお別れになるかもしれない。

嫌だ…。でも言わないとこの先もやもやを抱えたまま生きていくことになる。


それはカールさんは良くないと言った。

だからここできちんと話すべき。だけど…


僕は中々次の一言を口にできずにいると

「カズヤくん、どうしたの?」

と心配したようにエクシア姉さんが聞いてくる。


「え?いや別に何も」

「何もないような感じじゃないよ?前世のことは聞いたけど、カズヤくんの気持ちは聞けてない。私達はカズヤくんのどんな言葉でも受け止める覚悟を持って今日来てるから、


本当の気持ち教えてくれないかな?」

僕はその言葉を聞いた後、また涙が出てきてしまった。


「僕…僕…」

本当に泣き虫すぎる。

「よしよし。大丈夫じゃよ」

「ちゃんと聞いてやるから」

「姉さん達はカズヤの味方ですよ」


僕はその言葉を聞いてもっと言いたくなくなった。

また離れていってしまいそうで、また姉さん達を言葉で傷つけてしまいそうで。



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