第6話裏を返せば
「おらぁ!」
「うわーすごい」
魔の森よりは弱そうなヤツらばっかで僕でも難なく倒せそうだけど、最初は実力を隠した方が何かと楽なのが異世界転生あるあるだ。
僕は先輩冒険者の後ろで順調に採取していく。
「おい、大丈夫か?少し休憩するか」
「はい!」
優しい先輩だ。久しぶりに誰かに優しくされて単純に嬉しい。
しばらく採取し続けていると、
「くそ!こんな低階層で囲まれた!」
「計画が崩れるぞ!」
計画…?あ、僕の手伝いが出来なくなるってことか!
「ストーンインパクト」
僕は多重詠唱してブラッドウルフ5体をまとめてやっつける。
「大丈夫ですか?」
「お、おう。助かった」
それからしばらく進むと
「うわぁー深いですね」
「最近出来た大穴だ。前にボスを倒した時に使った魔法が下の層にも上の層までもぶち抜いたんだと。まぁSランク冒険者様のやることだから、詳しくは知らねぇけど」
へぇーと相槌を打つ。
SランクでこれならZランクはものすごくすごいのだろう。1人で国家とやりあえるって言ってたからね。1回会ってみたいなー。
そろそろ外は日が沈む頃だろう。もう引き返さないとまずい。
「依頼の個数を採取できたので、そろそろ…」
「いや、お前とはここでおさらばだ」
「え…?」
急に思い切り肩を押された。
僕は大穴に落ちていく。
その時3人は僕を見て嘲笑っていた。
また…か。
僕は深い所まで落ちていく。Sランクの人は下の層にも穴を開けたらしいので深淵層まで行ってるかもしれない。
最後は少し抗ってもいいよね。
僕は
「アイスウォール」
着地する瞬間に斜めのアイスウォールを立てた。滑り台みたいにして少しでも威力を吸収させようとしたが
パリンッ!
氷が一部砕けて右肩が岩にぶつかる。
そのまま僕は地面に転げ落ちる。
幸い、少しは威力が吸収できたみたいで、即死にはならなかった。
けど、所々服が破れそこから血が流れている。体も思うように動けない。
「くそ…僕が何をしたんだよ…」
目眩かそれとも涙だからか視界が歪んで見える。
でももうそれも関係ない。僕はここで野垂れ死にするだろうから。
今思えば前世の方が楽しかった。異世界転生というワードにあれこれ期待を持ってしまった。現実はテンプレのようにはいかなかった。
姉さん達にも見捨てられ、家からも追放、
ここから冒険者で…っていう時に落とされる。
「はは、僕の転生ライフ全然上手くいってないや」
逆に笑えてくる。
でも、家のヤツらも冒険者のヤツらも絶対許せないけど…
「姉さん達だけは憎めないよ…」
あの2年間一緒に暮らしていた時が1番楽しかった。
だから、僕はあの時その楽しさを捨てたくなくて姉さん達にエクシア姉さんに…酷いことを言ってしまった。
「悪いことをしたからこうなっても仕方ないか」
じいちゃんの言うことを裏返っせば、悪いことをしたらその分悪いことが返ってくるっていうことだから。
「最後に謝りたかったな…」
そんなことを呟いていると、
「ガルル…」
ケロベロスみたいな魔物がうっすらと見えた。
「もう終わりか…」
僕は目を瞑る。
最後は痛くないようにあの世に行きたい。
でも多分あいつはそうしてくれないだろう。
気配で向かってくるのが分かる。
「わおん!」
勢いよく飛んだと思った時、
何かが空気中で切れる音がした。
糸が切れるような。
僕の命の糸みたいなのが切れたのかと思ったが、違った。
ふと、目を開けると長い銀髪を1つに結んだ、忘れることのない女性が立っていた。
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