第4話姉さん達…いなくなるの?

「まだちょっと分からない…」

「この実験は工程が長いからしょうがない。もう行かないとエクシア達に怒られるよ」

「うん、そうだね。また今度やろうね!」

そう言うと、少し顔を逸らされたような気がした。

気のせいか。

「じゃあ、それ運ぼう。今日は私も手伝う」

「ありがとう。マナ姉さん」

僕達は特大ポーションを物置に入れておく。

こっちの方が直ぐに運び出しやすいからだ。


それからいつも通り賑やかな夕食を食べる。

問題はここからだ。

「今日の添い寝担当はエクシア姉さんか…」

そう、毎晩交代交代で姉さん達に添い寝される。


「カズヤくん、それじゃあ寝よっか」

「うん」

いつも、エクシア姉さんは抱きしめて寝てくる。他の姉さん達も同じようにしてくるけど最初はドキドキしすぎて寝れなかった。

今はちょっと慣れたかな…?

大問題はここからだ。

「好き…」

本人はこれを寝言で言っている。

これを聞いて僕は寝ないといけない。

子守唄?と捉えれば何とか寝れている。


次の日、僕はエクシア姉さんとカーシャ姉さんで魔の森に入っていた。

「はぁー!」

「おー」

エクシア姉さんは強い。

僕と出会う前までは冒険者をしていたらしい。彼女はCランクと言っているが多分前世の知識で言うならSくらいだと思う。


だってドラゴン倒してるもん。


カーシャ姉さんは違う戦い方をする。

「いけ!フェンリル!」

「わおーーーん!」

空間魔法の派生、召喚魔法というもの。

召喚系はこの世界にもあるらしく、契約した魔物をいつでも召喚できるという優れた魔法だ。


これもこれで一方的な戦い方だけどね。


僕も負けてられないと雑魚を倒していく。

剣技も結構上手くなっている。エクシア姉さんに教えて貰ってるおかげだ。


「いや〜今日もいっぱい倒した〜」

「このドラゴンの素材は結構すると思う」

「ありがとう。エクシア姉さん。助かるよ」

「いつでも言ってね。私に出来ることは何でもするから」

何でもという言葉にドキッとしてしまう。


「あー今カズヤ、エッチなこと考えたでしょ?」

「ち、違うよ!?」

カーシャ姉さんにからかってくるのも今では定番だ。僕達はドラゴンの素材を売って帰路に着いた。


その日の夕食、

いつも通り賑やかな感じで終わるかと思いきや

「主様、お話があります」

真剣にミコト姉さんに言われる。他の姉さん達も深刻そうな顔持ちだ。


「どうしたの急に?ほら姉さん達もなんでそんなに…」


「明日、私達は出立いたします。」


理解が追いつかなかった。

「え?出立って、家を出てくってこと?どうして急に」

「前々から計画していたことです。私は主様に教えて貰ったことを生かして、自分で商会を作ろうと思います」


マナ姉さんは

「私は最先端技術が学べる最北の国の学園に招待されたからそこに行く」


カーシャ姉さんは

「私はもっと色んな強い魔物と契約する旅に出る」

と次々に言われる。


「エクシア姉さんは出ていかないよね…?」

と聞いたが返ってきた答えは

「私は冒険者稼業を再開することにした…」

「…!」


僕は勢いよく食堂から出た。

いつかは来ると思っていた。でももう少し後だと思ってた。だってそんな予兆なかったから。


僕はベッドで1人考えた。

そもそも最初に自由にしていいよと言ったのは僕だ。それで彼女達は僕と暮らしていただけ。

次のステップに進もうとしてるだけだ。

そこに僕はもういらないだけ。


「馬鹿だ…少し考えれば分かることを…」

もう今日はこのまま寝よう。

そして明日笑顔で送り出そうと決めた。


翌日、

最後の5人揃っての朝食なのに

「特大ポーションは念の為100個作っておきました。足りなくなったら手紙をください。作って送ります」

「うん、ありがとう」

こんな感じの事務連絡だけだ。


いよいよお別れの時が来た。

「みんな…行っちゃうんだね」

「主様、長い間ありがとうございました」

「そんな固くならなくていいよ。最後は笑顔で送り出すって決めたんだ」

そうすると少し彼女達が笑顔になった。


「姉さん達、長いようで短かったけど今までありがとう!これからも頑張ってね!応援してる!」

ダメだ、今は泣くな。こらえろ!

「うん、カズヤも元気でね」

「主様、必要なものは…」

「それ、さっき何回も言ってたよミコト」

「カズヤくんも頑張ってね!」


そう言って姉さん達は馬車に乗り込もうとする。

よし、これで終わりだ。元の日常に戻るだけ。うん、戻るだけ…


僕は無意識に最後に乗ろうとするエクシア姉さんの手を掴んでしまった。


「カズヤくん…?」

「行かないで…」

言うな。ダメだ抑えろ。

僕の両手を掴んでしゃがみこむ。

「カズヤくんどうし…」

「行かないでよ!」

馬車の中にいる姉さん達も含め、全員驚いている。


「やだよ…またひとりぼっちは嫌だよ…」

涙のせいで視界はぼやける。

「大丈夫。カズヤくんなら大丈夫」

「大丈夫じゃないよ!」

やめろ。困らせるな。

「僕、姉さん達がいないと寂しいよ…エクシア姉さん、冒険者なんて魔の森でもできるよ…?だからいてよ。忠誠を誓うとか言ってたじゃん!」

これ以上足でまといになるな。もう僕は必要ないから諦めろ。


そう、自分に言い聞かせても言葉が出る。

「今でも私たちは忠誠を誓ってる。これからもずっと」

「嘘つき、だったらここにいてよ。主の言うことだよ?」

僕は最低な人間だ。

みんな黙りこくってしまった。


「もういいよ。早く行って、嘘つきなエクシア姉さんなんて大嫌い…」

そう言うと

「ごめんなさい…またいつか」

馬車に乗って出発した。


僕は最低最悪な人間だ。感情に身を任せて姉さん達が傷つくことをお構い無しにあれこれ言って…こんなやつ必要ないに決まってるじゃん。


僕はそこから1日寝室に閉じこもった。


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