恋する君は嘘の固まり

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第1話

 幼馴染み、と言うのは何かと面倒だ。

「あれ、対馬は?」

「知らないよ」

 そいつがいない時何かと僕に尋ねてくる人は数知れず、『あれ?』と思えば僕に同じ台詞でそいつの事を尋ねてくる。ああ、ああ面倒な質問を何度もされる。


 いちいちいちいち面倒なことこの上ない。

 あいつと仲が良いなら僕程度に話しかけるな。あいつが何をしようが何をしていようが関係なんてないだろうにわざわざ僕に当たり前のように聞いてくるなよ。あいつの彼氏かよ僕はそう思っても周りは大体僕に尋ねてくるのはきっと何時も僕が一緒にいるからなんて理由なんだろうが迷惑きわまりない声かけは何時だって僕に回ってくる。


 特別な存在であるのだろうあいつの動向に僕は勝手に鈴にされているだけ。

 基本的に興味があるのはあいつのことで僕と言う存在には興味なんて一ミリもない。そう言うのは大体分かる。『あいつはどこだ?』そんな質問はしてくるくせに僕自身とは話しをしようとしないのだから興味はあいつ。お前に聞くのは知ってそうで手っ取り早いからと言う感情が透けて見える。


 『あー、はいはい行き先を聞いていたら良かったね。残念でした知りません』


 本当ははっきりそう言いたいが学校と言う全体的に変化のない未熟な僕達がはっきりと言いたい不満なんかぶちまけるには淀んだ湖のような内のクラスではそう言うのは避けた方が利口であると分かっているのなら表面上は障りのないよそ行き顔の嘘で塗り固めた笑顔で知らないと人付き合いが言い顔で優しく言うのが無駄ないさかいのない方法だろう。


 とは言えだ。こうして座ってなにもせずにいたならまたもや同じ台詞を聞く羽目になる。

 ああ、あぁ。めんどくさいそう思いながら席から立ち上がり待避するためのやる気もない薄っぺらな嘘でこの場を移動しよう。そう決めて僕は『探してくるよ』何て言ってその場を去る事に成功した。


「悪いな頼むよ」

 はいはい、見つけたらな。なんてやる気なさげに手を振ってどこにいこうか静かなところが良いと思いながら教室を出て階段を下り廊下を人気の無さに喜びながら歩く事数分。


「なあ、キスしようぜ」

 なんて台詞が耳に届き。

「いいよ」

 なんて色気付いた聞きなれた声。最悪だ。そう感じてカップルの視線に入らないように身を隠す。マジかよと言う気持ちとああ、見つけちまった。と言う不快感を感じながら僕は二人の男女の逢瀬を盗み聞く事になった自分の不幸を呪った。


「なあ、今度デートしないか良い店見つけたんだ。いいだろ?」

「そうなんだ! 楽しみぃ」

「ああ、またじゃあまた今度連絡いれるよ」

 そんな会話の後にキスのリップ音が再度して別れの挨拶が聞こえてきた。

「またな」

「うん」


 ため息を吐くには僕には干渉していなくだからといって心労がないかと言われたらそうでもない風景にキスして満足そうに手を振るカップル男女の女の方に僕は声をかけた。


「何人目の彼氏だよあれ」

「三人目」

「一人目にお前がどこにいるか聞かれだぞ対馬彩子さんよ」

「おつとめごくろうさんでした」

「はあぁ」

 大きなため息を堪えきれずはいた。


「いい加減男遊びを止めろよな。俺はもうお前のラバーズとの衝突なんてしたくないんだよ。幼馴染みってだけで変に疑われるのもこりごりなんだよ」

「そうは言っても、ね性みたいなもんだからさ止められないんだよ」

「性根が腐ってんな逆に安心だよお前の人生」

「どやさ」

「うぜぇからやめろ」


 どんなもんだいと体中で表現されては口も疲れてきて働きたくないと抗議デモ。こいつともう話もしたくない。そう思えて俺はさっさと言いたくもない用事を口にする。


「一人目がなんか用事あり気だったぞ行ってこいよ」

「ほいほい了解。じゃ」

 そう言って何の気もなしに去っていく彩子。


「……あいつにとって俺もその他大勢の一人でしかなかった、かぁ」


 一枚の青春をあの悪女に潰された過去を思い出し俺はため息が出るのを恨んだ。

 軽く流して終わりにしたい。そんな過去に俺はいまだしがみついている自分に呆れを感じた。

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