第30話 2次元エロvs3次元エロ

 トーナメント戦の山に登り詰めた俺達は花塚姉妹との対決に意欲を燃やす。


「よし、準決勝まで来たぞ! 実力で来た訳では無いのだけれど……」

「群城くん、運も実力と言うじゃないか一緒に頑張ろう」


 準決勝でも宇賀真さんに励まされ花塚姉妹との戦いに挑む。


「初めての場所にしては良く準決勝まで来れたわね。褒めてあげるわ」


 女王気分でお高く気取る妹の美里は、俺達を見下す様に話す。


「これから準決勝で私達と戦うけど大丈夫かしら? 特に蒼い86さんの方は運だけで勝ち上がった様だけど、ここからは技量もないと勝てないわよ」


 嫌みたらしく喋るその姿は、挑発以外の何もでもなかった。


「くっ、言いたい放題いいやがって。俺だって超〜本気出せばなんとかなるんだよ!」

「群城くんそれ、本気になっても勝てないって言ってるし、負け犬の遠吠えだから……」


 圧倒的な差がある花塚姉妹に、俺は強がる事しかできなかった。


『さあ〜ここから準決勝、誰が勝つ?』

『当然、花塚姉妹2人の対決で終わるだろ』

『いや、いや、あのS30フェアレディZは姉妹に劣らない技量が有りそうだからわからんぞ!』

『因みに、蒼いAE86は運だけで勝ち上がったカスだから除外なぁw』


「今、カスって書き込んだ視聴者、アカウント名とアイコン覚えたからなぁ〜!」

「群城くん、そんな事でめくじら立てないの、これから準決勝なんだから落ち着いて」


 宇賀真さんは俺をなだめ、落ち着かせ様としていた。


「おっと、そうだ! 花塚姉妹さん。例の案件は覚えているかな?」

「案件? 何かしら」

「姉さん、あの女の子キャラを貼ったボディを使うって話よ〜」

「痛車の話ね。別に使っても構わないわよ」

「そっか、じゃ〜使わせて貰うよ」


 花塚姉妹である瑞希との対決に宇賀真さんは痛車を持ち込み対戦しようとボディを車に取りに行ってしまう。


「たかがボディに女の子キャラ貼った位で、何が変わるのかしら? その位で潜在能力が上がるとは思えないのだけれど……」

「宇賀真さんの事だから、その潜在能力が上がると言う話はあり得るかもしれない」


 今し方、GTR使いの男が、モチベーションを上げる為に実車のGTRを操っている気持ちになったように。

 宇賀真さんもモチベーションを上げるタイプなのだと俺は思い込んでいた。


「すまない待たせたね。それじゃ〜始めようか」

「遅かったわね。それでは始め……いっ、いや〜〜〜〜〜!」


 くらっ、ドサッ!


 宇賀真さんの痛車ボディを見た瞬間、瑞希は気を失って、倒れてしまう。


「何、どうしたの! 姉さん?」


 姉である瑞希の叫び声が部屋に響いた時、妹の里美が驚き駆け付ける。


「こ、これはいったい……貴方達! 姉さんに何をしたの?」

「何って、別に何も……。 ただ痛車をスタートラインに置いただけだが?」


 宇賀真さんが置いた痛車を里美が見ると、そこには裸体を露わにしたVtuberで有名な、天界学園天使キャラがS130フェアレディZのボンネットに貼られていた。


「な、なんて事を……村上さん一回YouTube配信を止めて! 準決勝は一時中止よ!」


 今迄Live配信していた画像が途切れ、『しばらくお待ちください』の挿絵に変わりBGMが流れる。


『なんだ? なんだ?』

『いきなり挿し絵に変わったぞ? 何かあったのか?』

『何かのトラブルか?』


 視聴者は突然の配信中断にざわめき、何が起きたのだろうと不安ながらにスレッドにコメントが流れる。

 

「いきなりどうしたって言うんだ?」

「貴方達はわからないかもしれないけど、YouTubeで変に過激なセンシティブ物を配信すると収益が切られるの、それに姉さんはあのボディに貼られたVtuberファンなのよ! それを事もあろうか裸体にして見せるなんて……」


 瑞希にとってこの天界学園天使Vtuberがとても好きだった、それは体型が似てる事もあるがリスナーに揶揄やゆされながらも、それにもめげず元気いっぱいに配信している姿がとても感銘し彼女自身もそうで有りたいと思っていたからだった。


「これ、準決勝どうするんだ?」

「無理に決まってるでしょ! そんな事よりその如何いかがわしいそのボディを仕舞って頂戴」

「如何しいとは失敬だなぁ、この二次元の芸術をわからないとは……そう思うだろう? 群城くん……んっ! 群城くん?」


 宇賀真さんは二次元芸術の素晴らしさを俺に振るが、俺はある事が気に入らないので宇賀真さんの元に行き、不満を吐き出す。


「宇賀真さん……見損ないましたよ……」

「ん! 群城くんまでなんだい彼女達の肩を持つのかい?」

「だってそうじゃありませんか……準決勝の大事なこんな時に、こんな時に……痛車のキャラの子が、つるぺたペッタンコキャラなんって、あんまりだ!」


 半泣きしながら俺は天界学園天使キャラの胸の無さに嘆き、落胆していた。


「君はそっちの方で不満を抱いていたのかい……仕方がない、こんな事もあろうかと、人形用のコレを用意していたんだ、今ここで使うしかあるまい……」


 宇賀真さんは人形用の絆創膏を取り出し、あらわな部分に絆創膏を貼り付ける。


「これでヨシ! どうだろか?」


 宇賀真さんが貼った絆創膏は、女の子天使の胸のピンク部分と、下半身の秘部に貼られ、よりいっそう卑猥ひわいさが増していった。


「ブホッ……!」


 ドサッ!


 刺激が強すぎた俺はいきなり大量の鼻血を吹き出し、倒れてしまう。


「あれ? 群城くん……なんだい、こんな事で倒れるなんって、まだまだ青いなぁ〜」

「貴方、仲間まで棄権にさせるつもり?」

「そんなつもりはなかったんだが……群城くん! 大丈夫かい?」

「宇賀真さん……俺、出血多量でちょっとダメです……少し休みます……」


 刺激が強すぎたのか女体耐性が無い俺は、二次元キャラでも耐えられず鼻血が止まらないでいた。


「これ、どうしたらいいんだ?」

「どうしたもこうしたも無いわよ、貴方のせいでメチャクチャだわ! 取り敢えずあの如何わしい物をしまって頂戴!」

「如何わしいって……ひどいなぁ〜この二次元芸術がなんでわからないんだ

〜?」


 宇賀真さんはブツブツ言いながら裸体の貼られた痛車を回収してピットバックに仕舞う。


「仕舞ったけど、この後どうするのかな?」

「仕方ないわね、鼻血を出した彼には休んで貰って、彼の代わりに貴方が私と勝負するって言うのはどうかしら?」

「お互い不戦勝って事かい? わかった、だが前のS30フェアレディZだと不利だし他のボディが無いと困る。もう1枚別の痛車ボディがあるのだが、それを使っていいか?」

「いいけど、今度も裸体じゃないでしょうね?」

「いや、ちゃんと服は着けてるから心配はいらない。今見せるからYouTubeで放送できるか確認してくれ」


 ガサゴソと別のピットバックから痛車を取り出し、美里に見せる。


「これならいいかなぁ?」


 美里に見せたのはS130フェアレディZの痛車ボディで、これまた有名なVtuberの地雷系セクシー衣装ながら、白と黒の頬被り、チエックのミニスカートを履き、胸元が大きく開いたシャチシャチ娘キャラなのだが、それがセクシーポーズで貼らていた。


「ま、まぁ〜このキャラなら配信してる服装のまんまだしいいわ、それじゃ〜再会しましょ。村上さん? 視聴者さんに事情を説明するからYouTubeを再開して頂戴」

「わかりました」


 数十分、挿し絵に代わっていたYouTubeのLive配信が始まり、美里が中断の説明を始める。


「皆様、機材トラブルにより配信を一時中断した事をお詫び申し上げます。そして中断中にアクシデントがありまして、FD3SのRX-7の選手と蒼いAE86トレノの選手が体調不良により棄権となりました。よって双方の対戦相手が不戦勝により勝ち上がりとなります。ですのでこのまま不戦勝で勝ち上がった2名が決勝となりますのでよろしくお願いします」


『なんだって!』

『花塚姉のFD3Sの走りを期待してたのに……』

『姉ちゃん、体調不良って……もしや女の子の日になったのか⁉︎』

『おい、↑のやつ、女の子の日は辞めろw』


 思い、思いのコメントが考察しながら流れ決勝への盛り上がりに繋がる。


「それでは決勝を始める前に2台のRCボディ紹介です。司会は花塚姉妹から変わりまして村上が担当させて頂きます。まずはもう、お分かりだと思いますが〜花塚姉妹の妹、里美さんのFC3S、RX-7〜!」


『出た! 花塚妹のFC3S』

『車のボディじゃ無くて本人のボディ身体を見せろw』

『おまわりさ〜ん! ↑の人が変態で〜すw』

『もしもし、ポリスメ〜ン? 通報しました草』


 花塚しまいである妹の里美が紹介されると、スレッドの流れは勢いよく流れ、目で追う事は出来ない。


「続きまして〜痛車のS130を使うフェアレディZ使い〜! 尚、元はS30フェアレディZを使っておりましたが、諸事情の為に変更しております。通常はボディチェンジは認められていませんが、トーナメント戦前に花塚姉妹から変更承認を頂いておりますのでセーフと致します」


『なんだって?』

『おっ、このシャチシャチ娘Vtuber、俺好きなんよ』

『なんだこのエロいシャチシャチ娘は!』

『この胸の谷間強調がすげ〜、クオリティーたけ〜』


 宇賀真さんの痛車芸術は高く、S130に貼られたシャチシャチ娘のセクシーポーズは男の触手に刺さる程で、誰が見ても見惚れてしまう物だった。


「ではスタートを……あれ?」


 何故かスタートを開始する前に宇賀真さんの方に90%の評価が入ってた。


「これど言うこと? 判定は走り終わってからじゃないの?」

「里見さん、これは決勝と言う事で前評価も入れてます」

「見たか、花塚妹。これが痛車の実力よ!」


 配信を視聴している9割がVtuberを知っていて、このシャチシャチ娘を推している人達が多く、宇賀真さんに投票が入ってしまっていた。


「これ、卑怯よ!」

「そんな事言っても視聴者が決めてる事だからどうにもならんよ」

「くっ! それならさん、私にドローンを飛ばして下から撮って頂戴!」

「そんな事していいんですか?」

「早く!」


 ドローンは里美の所に向かい、下から舐めるように胸元まで上がりまた下がって行く。


『なんだこれ! この立体的なエロ、もしや……』

『花塚妹の身体?』

『やべ〜エロい〜あっ、ちょっと白いのが見えたw』

『俺、ちょっと抜いてくるわ〜w』


 モデルの様な身体つきをした里美は、顔はNGながらドローンを近づかせセクシー女優の様に脚を組み直したりして体を映して行く。


『うお〜たまらね〜』

『これなんの配信だったけ? ライブチャット⁉︎』

『何? 要望を送るとそこを見せてくれるのか⁉︎』


 宇賀真さんの痛車に対し里美の体を映し視聴者の注意を引かせたる。


「おい、それ卑怯だろ!」

「エロにはエロよ! どう? これで勝負はわからなくなったわよ!」


 視聴者の前評価を見てみると、ほぼ50%50%のイーブンに戻っていた。


「さぁ〜これで心気なく出来るわね。勝負よ!」


 FC3S・RX-7とシャチシャチ娘痛車のS130フェアレディZがスタートラインに付きGoサインが出るのを待つ……。


「それでは始めます。準備ok?」


第31話へ続く……

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ドリフティングG 天夢佗人 @blue-promaxis

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