第26話 この先の話
アリアが悩んでいるのを見てとって、カーシャは頭を下げて言った。
「……このような話になったのは、元はと言えば、僕が余計な質問をしたからです。申し訳ありません」
「そんな……カーシャ様が悪いわけでは、ないと思います。悪いのは、僕です」
苦しそうな顔で、けれどハッキリとした口調で、少女が言う。
「……悪いこと、なんて。誰も、していないと思います」
アリアは必死に考えて、なんとかそれだけ、言葉にできた。少女が、アリアの方に視線を向ける。言葉よりも雄弁な眼差しに、アリアは笑顔を返すことで応えた。
「それでは、僕はこれで。ルイーズさんも、そろそろ……」
カーシャに促された少女が立ち上がって、アリアに向かってお辞儀をした。アリアもお辞儀をして、入り口まで2人を見送りにいった。何事もなく見送って、扉を閉じた後。通路の角から、アリアの父が、歩いてきた。
「や、やあ、アリア。それで、どういう話になったのかな。もう、誰かを選んだりした、とか……」
明らかに、動揺している。気になって、ずっと出ていける時を見計らっていたのだろう。アリアは苦笑を浮かべて言った。
「まだ、どなたも選んでいませんわ、お父様」
父が明らかに安堵した様子を見せて、笑う。
「そうか……じゃ、じゃあ、私は仕事があるから、これで失礼するよ」
明らかに来たときとは違う、軽快な足取りで、父が去っていく。アリアは、その後ろ姿を見送って、自室に戻った。
「お疲れ様です、姫様」
自室では、ティーナがお茶を用意して、待っていてくれた。
「ありがとう」
お礼を言って、椅子に座る。お茶は、熱くもなく冷たくもない、丁度いい温度だった。一口飲んで、アリアはようやく、落ち着くことができた。ティーナは父と違って、何も聞かなかった。ただ穏やかな笑みを浮かべて、アリアの側で立っていてくれる。それが嬉しくて、けれど少しだけ、心配になって。
「……ティーナは、私が誰かを選んだら、その後はどうするの?」
つい、聞いてしまった。ティーナは穏やかな表情のまま、何でもないことのように言った。
「私は、どこであっても、姫様に着いていきますよ。姫様のご迷惑にならなければ、ですが」
「迷惑だなんて、そんなことはないわ。……私、とても嬉しいの。私が誰かを選んだら、その瞬間に全部が変わってしまうような気がして、それがとても怖かったから。だから、ティーナが側にいてくれるのなら、安心できるわ。これからも、よろしくね」
アリアの言葉を聞いて、ティーナが笑みを深める。
「ありがとうございます、姫様。私、頑張りますね」
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