第7話 友人

お茶会が終わって、机の上に残った食器を片付けようと手を伸ばしたアリアに、エリーゼが話しかけてきた。


「アリア公爵令嬢様、今度は私の家で催されるお茶会に来てくださいませんこと?」


「……え、ええ。もちろんですわ」


急な誘いに驚いて、少し戸惑いつつも。エリーゼが笑顔だったので、アリアも笑顔で言葉を返した。


「ありがとうございます!」


エリーゼがアリアの手を取って、嬉しそうにその場で跳ねる。そこに、カーシャが割りこんで来た。


「エリーゼ男爵令嬢。あまり、騒ぎすぎぬようにな。彼女が、困ってしまっているだろう」


「まあ。第5皇子様は、ただのお友達にまで嫉妬なさるのかしら?」


エリーゼはわざと、「お友達」の所だけを強調するように言った。カーシャはエリーゼのことを気にも止めずに、アリアに向かって笑いかけた。


「アリア公爵令嬢様も、嫌なら嫌とハッキリと言っていいのですよ」


2人とも、目が笑っていない。アリアはそっと微笑んで、口を開いた。


「嫌だなんて、思うわけがないわ。お茶会は、とても楽しいことですし……。今日も、綺麗なお花を見ながら美味しいお茶とお菓子を楽しむことができて、幸せな時間を過ごせましたもの。きっと、エリーゼ男爵令嬢様のお家で催されるものも、楽しいものになると思いますわ」


アリアの言葉を耳にするにつれ、エリーゼの表情が段々と明るくなっていく。カーシャも柔らかな笑みを浮かべて、頷いた。


「ありがとうございます。そう言っていただければ、主催者としても嬉しい限りですね」


ホッとしたのもつかの間、すぐに他の子供たちが集まってきた。


「素敵なお話ね! ねえ、エリーゼ男爵令嬢様。そのお茶会、私も是非、出席したいわ」


「そうですね。ご招待をいただけるのであれば、僕も是非」


複数の子供から矢継ぎ早に招待を求められたエリーゼは、ニッコリと笑って言葉を返した。


「それは私ではなく、アリア公爵令嬢様に仰ってくださいな」


主催者ではないのに、許可を出してもいいのだろうかと。少し迷ったアリアだったが、周囲の視線が集まったことで、遠慮しながら口を開いた。


「私は、素敵なお話だと思いますけれど……」


周囲の子供たちが全員、喜びの声を上げた。主催者であるはずのエリーゼも、その光景が当然のことであるかのように振る舞っていた。何より、その場にいた給仕もお付きの人々も全員―ティーナまで―子供たちと同じような反応だったことに、アリアは驚きを隠せなかった。

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