第5話 お茶会(中編)
空色のドレスに、金色のチェーンネックレスを着けて、馬車に乗る。
「大丈夫ですからね、姫様。私はずっと、お側に控えておりますから」
アリアの隣に座ったティーナが、元気づけるように言う。
「……ありがとう。頼りにしているわ」
アリアはそう言って、馬車に揺られて王宮へ向かった。
――――
王宮に着いて、馬車から降りる。初老の男性が、アリアたちを出迎えた。
「アリア公爵令嬢様と、お付きの方ですね。お待ちしておりました」
男性はそう言って、お茶会の会場へと2人を案内した。そこは、王宮の庭だった。強い日差しに照らされて、花々の数々が、今を盛りと咲いている。棒と布で人工的な日陰が作られており、そこに白い机があって、白い椅子が円形に配置されている。金で縁取られたティーカップが、机の上に、椅子と同じ数だけ用意されていた。
「アリア公爵令嬢様、お久しぶりです」
アリアが聞き覚えのある声に振り返ると、カーシャ皇子が穏やかな笑みを浮かべて、こちらを見ていた。
「まあ、カーシャちゃ……様、お久しぶりです」
前世の癖で、どうしても皇子が子供のように思えてしまう。アリアはちゃん付けしそうになった自分を辛うじて抑えて、言い直した。
「なんと読んでくださっても大丈夫ですよ。僕たちは、お友達でしょう?」
皇子は笑みをたたえた表情のまま、そう言った。なんて出来た子だろうかと、アリアは思わず、母親のような目線になってしまった。
「いいえ、きちんとお呼びしなくてはいけないわ。こんにちは、カーシャ皇子様。本日は、お招きいただき、本当にありがとうございます」
そう言って、アリアは頭を下げる。皇子は穏やかな声音で言った。
「こちらこそ、お越し下さり、ありがとうございます。ずっと立ち続けるのも疲れるでしょうし、どうぞ座ってください」
促されて、椅子に座る。そこでようやく気付いたけれど、アリアが座った場所は椅子の配置から考えても、間違いなく中心になる所だった。
(……このお席、間違ってないかしら)
そう思ったけれど、招かれた手前、カーシャに聞くこともできず。側に立ったティーナの方をこっそり見ると、彼女は当然だとばかりに堂々としていたので、そういうものなのだと思うことにした。
「他の方々が到着するまで、もう少し時間がありますね。先に、お茶をお出しします」
カーシャはそう言って、給仕を呼んだ。けれどアリアはどうしても気がとがめて、お客様が来る前に1人でお茶を飲むことは出来なかった。
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